勉強法

更新 2026-09-12 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

数学の勉強法 ── 研究で確かめられている4つのやり方

このページは「こうすると成績が上がるらしい」という話ではなく、実験で比べられた結果が論文として出ているやり方だけを集めています。それぞれ「何人を対象に・何を測って・どれくらい差が出たか」まで書きます。数字が出せないものは出せないと書きます。

結論の表

やり方ひとことで数学ではこうする証拠の強さ
① 混ぜて解く(交互練習)同じ型ばかり続けて解かず、違う型を混ぜる単元末の問題を「今日習った型だけ」でなく、前の単元も混ぜて解く強い(中学生の教室で確かめられている)
② 間をあけて戻る(分散練習)1日でまとめてやらず、日をあけて同じ内容に戻る解いた単元に1週間後・1か月後にもう一度戻る強い(数百の実験のまとめがある)
③ 見返すより解く(練習テスト)解説を読み返すより、閉じて自分で解く解説ページを読んだら閉じて小テストを解く。読み直しは解けなかった所だけ強い
④ 解答例をまず読む(例題学習)初めての型は、いきなり解かず解答例を先に読む新しい単元の最初は「解き方を見る→似た問題を解く」の順で条件つき(同じ型の問題に限る)

順番に説明します。


① 混ぜて解く(交互練習)

何をするか

数学の問題集は「今日の単元の問題が12問並ぶ」形がふつうです。この形だと、問題を読む前から解き方がわかっています(今日習ったやり方を使うに決まっているから)。ところがテスト本番では、どの型の問題かを自分で見分けなければなりません。

交互練習は、今日の型と前の単元の型を混ぜて並べるやり方です。「どの解き方を使うか」を毎回自分で選ぶ練習になります。

どんな研究があるか

Rohrer, Dedrick & Stershic(2015) ── 中学1年生(アメリカの7年生)126人。3か月間、同じ練習問題を「混ぜた順」と「型ごとにまとめた順」で解かせ、最後に予告なしのテスト。混ぜて解いた生徒のほうが、1日後のテストでも30日後のテストでも高得点でした。差の大きさは1日後で d = 0.42、30日後で d = 0.79(d は「差の大きさ」の指標で、0.2 が小、0.5 が中、0.8 が大の目安)。時間がたつほど差が開いたのがポイントです。

Rohrer, Dedrick, Hartwig & Cheung(2020) ── 7年生の数学クラス54クラスを対象にした、事前登録つきのランダム化比較試験(あらかじめ何を測るか登録してから行う、信頼度の高い実験のやり方)。4か月間、混ぜた宿題と型ごとの宿題を割り当て、1か月後に予告なしのテスト。混ぜた群 61%、型ごとの群 38%(d = 0.83)。先生は特別な研修なしで実施でき、結果を知る前のアンケートで先生たち自身がこのやり方を支持していました。

Rohrer & Taylor(2007) ── 大学生。型ごとに解いた群と混ぜて解いた群を1週間後にテスト。混ぜた群が大きく上回りました(要旨には具体的な%が示されていないので数字は書きません)。

数学での具体例

注意点


② 間をあけて戻る(分散練習)

何をするか

1回で10問まとめて解くより、日をあけて数問ずつのほうが長く残る、という現象です。「間隔効果」とも呼ばれ、心理学ではもっとも繰り返し確かめられている現象の一つです。

どんな研究があるか

Cepeda, Pashler, Vul, Wixted & Rohrer(2006) ── 184本の論文・317の実験・839件の比較をまとめたメタ分析(過去の実験結果を統計的に合算する研究)。まとめてやるより間をあけるほうが記憶が残ること、そして**「どれくらい間をあけるのが最適か」は、テストまでの期間が長いほど長くなる**ことを示しました。1週間後のテストなら数日あけ、数か月先の入試なら数週間あける、というイメージです。

Rohrer & Taylor(2007)の実験1 ── 大学生。同じ問題数を1回にまとめて解く群と、複数回に分けて解く群。1週間後のテストで分けた群が大きく上回りました。

数学での具体例

注意点


③ 見返すより解く(練習テスト)

何をするか

解説を読み返す・ノートを見返すより、閉じて自分で思い出す・解くほうが残ります。「テスト効果」「検索練習」と呼ばれます。

どんな研究があるか

Roediger & Karpicke(2006) ── 大学生に文章教材を学ばせ、「くり返し読み直す」群と「読んだあと思い出すテストを受ける(答え合わせなし)」群に分けました。5分後のテストでは読み直し群が上でしたが、2日後・1週間後ではテスト群が読み直し群を大きく上回りました。しかも、読み直し群は「覚えている自信」だけは高くなっていました。読み直しは「わかった気」を作り、テストは「本当に残るもの」を作る、というのがこの研究の要点です。

Dunlosky ら(2013) ── 10種類の勉強法を、年齢・教材・テストの種類をまたいでどれだけ通用するかで評価した総説(58ページの大きなまとめ)。練習テストと分散練習の2つだけが「有用性:高」、交互練習・自己説明・精緻的質問が「中」、そして要約・マーカーで線を引く・再読などは「低」でした。マーカーと再読は多くの生徒がやっている方法なのに、成績を安定して押し上げる証拠がない、と明記されています。

数学での具体例

注意点


④ 解答例をまず読む(例題学習)

何をするか

初めての型の問題を、いきなり自力で解こうとすると、頭の中で「あれこれ試す」ことに力を使い、肝心の解き方が残りません。最初は解答例(解き方が全部書いてあるもの)を読み、そのあと似た問題を解くほうが、速く、間違いも少なく身につく、という研究です。

どんな研究があるか

Sweller & Cooper(1985) ── 代数(文字式・方程式)の学習。中学3年生・高校2年生相当・大学生を対象に5つの実験。解答例を読んでから解く群は、自力で解く群より学習にかかる時間が短く、その後の類題も速く・誤りが少なく解けました。ただしこの効果は「同じ構造の問題」に限られ、構造が違う問題には広がらなかった、とはっきり書かれています。

数学での具体例

注意点


よく聞くけれど証拠が弱いもの

「自分は視覚型だから図で覚える」(学習スタイル)

Pashler, McDaniel, Rohrer & Bjork(2008) ── 「視覚型・聴覚型」のように学習スタイルを診断し、それに合わせて教えると成績が上がる、という考え方を検証した総説。人に「好みの学び方」があるのは確かでも、好みに合わせて教えたほうが実際に成績が上がるという証拠は「ほとんど見つからなかった」(virtually no evidence)。きちんとした方法で検証した少数の研究のいくつかは、むしろこの考えと反対の結果でした。著者らは「あらゆる学習スタイル説が否定されたとは言えない(検証自体が少ない)」とも書いていますが、少なくとも「自分は○○型だから」を理由に勉強法を選ぶ根拠はいまのところありません。

数学に当てはめると:図で理解しやすい単元(関数・図形)は誰にとっても図が有利で、計算ルールは誰にとっても手を動かすのが有利です。単元に合わせて選ぶのであって、自分のタイプに合わせるのではありません。

マーカー・再読・要約

Dunlosky ら(2013)で「有用性:低」だった方法です。やってはいけないわけではありませんが、これだけで勉強した気になるのが危険です。マーカーを引いた箇所を、あとで閉じて思い出せるか(③)で確かめてください。


4つをつなげた1週間の型(例)

やること根拠
1日目新しい単元の解説を読む。例を解答例として読む → 小テスト(基礎)④ → ③
2日目前日の単元の小テスト(標準)+前の単元の問題を数問混ぜる③ ①
4日目2つ前の単元に戻って小テスト
7日目今週の単元をすべて混ぜて解く① ② ③

日数は目安で、大事なのは「読んだら解く」「日をあけて戻る」「混ぜる」の3つが入っていることです。


この記事の立場

参考文献

  1. Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. https://doi.org/10.1007/s11251-007-9015-8
  2. Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107, 900–908. https://doi.org/10.1037/edu0000001
  3. Rohrer, D., Dedrick, R. F., Hartwig, M. K., & Cheung, C.-N. (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology, 112, 40–52. https://doi.org/10.1037/edu0000367
  4. Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning. Psychological Science, 17, 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  5. Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132, 354–380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
  6. Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
  7. Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9, 105–119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x
  8. Sweller, J., & Cooper, G. A. (1985). The use of worked examples as a substitute for problem solving in learning algebra. Cognition and Instruction, 2, 59–89. https://doi.org/10.1207/s1532690xci0201_3