勉強法
理科の勉強法 ── 研究で確かめられている4つのやり方
このページも数学・英語と同じ立場です。「こうすると理科ができるらしい」ではなく、実験で比べられた結果が論文として出ているやり方だけを集め、「何人を対象に・何を測って・どれくらい差が出たか」まで書きます。数字が要旨に無いものは書きません。
理科は「暗記が半分、計算が半分」と言われますが、研究で見るとどちらも同じやり方が通用します。用語も計算も、読み返すより思い出す・まとめるより説明する・間をあけて戻るが残ります。しかも、理科の研究には中学生の教室で行われた実験がそろっているのが強みです。
結論の表
| やり方 | ひとことで | 理科ではこうする | 証拠の強さ |
|---|---|---|---|
| ① 小テストで思い出す | 授業のあと・単元の前に短いテストを受ける | 解説を読んだら閉じて小テスト。まちがえた問題は日をあけてもう一度 | 強い(中学の教室実験で +13〜25%) |
| ② まとめノートより「思い出して書く」 | 図をきれいにまとめる時間を、白紙に思い出して書く時間に | 単元の解説を閉じて、白紙に用語・式・実験の流れを書き出す | 強い(理科の文章で実験) |
| ③ 自分に説明する | 「なぜそうなる?」を自分の言葉で言う | 実験の結果の理由、公式がそうなる理由を一文で言う | 中〜強(中2相当の血液循環の文章で実験) |
| ④ 聞くだけより手を動かす | 授業を聞くだけより、解く・書く・話す | 動画や授業のあと必ず問題を解く。読んだ実験は手順を自分で言う | 強い(225研究のメタ分析・大学) |
証拠の強さは「中学生・高校生に近い対象で、追跡テストがあり、複数の研究で同じ方向の結果が出ているか」で判定しています。
① 小テストで思い出す(練習テスト)
何をするか
理科の単元を学んだら、まとめを読み返すのではなく小テストを受ける。まちがえたら答えを確認し、数日あけてもう一度。点数はつけなくてよい(低リスクのテスト)。
どんな研究があるか
- McDaniel, Agarwal, Huelser, McDermott & Roediger(2011):アメリカの中学 2 年(8 年生)の理科の授業で行われた実験。授業内容のうち一部だけを選択式の小テスト(答えの確認つき)に出し、残りは出さずに、単元末テストの成績を比べました。小テストに出した内容は、出さなかった内容より単元末テストで 13〜25% 高い正答率でした。さらに、小テストを「授業の前」「授業の直後」「単元テスト前の復習」のどこに置くかを比べると、復習として行った小テストの効果が最も大きく、その効果は学期末・学年末の累積テストまで残りました。
- Roediger, Agarwal, McDaniel & McDermott(2011):中学 1 年(6 年生)の社会科で同じ設計を行った研究(→ 社会の勉強法)。教科がちがっても同じ結果です。
- Butler(2010):文章を学んだあと「くり返し読む」か「くり返しテスト」かを比べ、1 週間後に同じ問題・同じ分野の新しい推論問題・ちがう分野の推論問題で測定。くり返しテストのほうが、暗記だけでなく応用(転移)でも上でした。「テストで覚えた知識は応用できない」という心配への反証です。
理科での具体例
- このサイトの各単元は「解説 → 小テスト」の順になっています。解説を閉じてから小テストを始める
- まちがえた問題は、その場で解説に戻って確認したあと、3 日後・1 週間後にもう一度(数を変えて出るので同じ型の別問題になります)
- 定期テスト前は、ノートを読み返す代わりに単元一覧から小テストを通しで受ける。McDaniel らの研究で最も効果が大きかったのは「テスト前の復習としての小テスト」です
- 計算単元(密度・オーム・質量比・湿度・速さ・仕事)は、公式を「見る」のではなく白紙に書いてから問題を解く
注意点
- 小テストは答えの確認(フィードバック)つきで行う。研究では必ず正解が示されています
- 選択式でも効果はあります(研究は選択式)。ただし英語の勉強法で引いた Rowland(2014) のメタ分析では、自分で書く(再生)テストのほうが効果が大きいので、選択式で正解したあと用語を書いてみる
② まとめノートより「思い出して書く」
何をするか
単元が終わったら、教科書や解説を閉じて白紙に、覚えている用語・式・実験の流れ・図を書き出す。書けなかったところだけ解説で確認する。きれいなまとめノートを作る時間をこれに置きかえる。
どんな研究があるか
- Karpicke & Blunt(2011):理科教育で使われるのと同じ種類の科学の文章を学習させ、「くり返し読む」「概念図(コンセプトマップ)を作りながら学ぶ」「思い出して書く(想起練習)」を比べました。1 週間後のテストでは、思い出して書いた群が、概念図を作った群より高い成績でした。その差は、理解や推論を問う問題でも、最終テスト自体が概念図を描く課題でも保たれました。「まとめを作る」ほうが深く学べそうに見えますが、思い出す練習のほうが上だったということです(Science 誌)。
- Nesbit & Adesope(2006):概念図そのものの効果のメタ分析(55 研究・5,818 人・小 4〜大学・理科を含む)。概念図を使う学習は「使わない学習」より記憶が伸びるが、効果の大きさは使い方によって小〜大でばらつきました。つまり概念図はむだではないが、「読むだけ」よりは良い・「思い出す練習」には及ばない、という位置です。
理科での具体例
- 「血液の循環」を学んだら、白紙に心臓の 4 つの部屋と血管の名前、血液の流れる順を書く。書けたら解説と照らし合わせる
- 実験(例:酸化銅と炭素)は手順・起こること・確認方法・注意点を 4 行で思い出して書く
- 図をまとめるなら「見ながら写す」のではなく、一度見て閉じて描く。描けなかった部分が弱点
注意点
- 白紙に書くとほとんど書けないのが普通です。書けなかった経験そのものが次に残ります
- 概念図やまとめノートが好きなら、作ったあとにそれを閉じて思い出す時間を足す。作ること自体はむだではない(Nesbit & Adesope)
③ 自分に説明する(自己説明)
何をするか
解説を読みながら、一文ごとに「これはなぜ?」「前の文とどうつながる?」を自分の言葉で言う(書く)。答えが出なくてもよい。
どんな研究があるか
- Chi, de Leeuw, Chiu & LaVancher(1994):中学 2 年(8 年生)に人の血液循環の文章を読ませた実験。14 人は「一行読むごとに自分に説明する」ように求められ、10 人は同じ文章を二度読むだけ。読む前と後のテストを比べると、説明を求められた群のほうが伸びが大きく、とくに説明を多く出した生徒(high explainers)は、複雑な問いに答える力や、書かれていないしくみを推論する力が高かった。訓練なしに「説明して」と頼んだだけでこの差が出ています。
- 数学の勉強法で引いた Dunlosky ほか(2013) も、自己説明を「有用性・中」(練習テスト・分散練習の次)と評価しています。
理科での具体例
- 「水に食塩を溶かすと、下のほうが濃くなる?」→「ならない。溶質の粒子が全体に広がるから」のように、理由を一文で
- 公式は「なぜその割り算か」を言う:「圧力=力÷面積。同じ力でも面積が小さいと一点に集まるから」
- 実験結果の予想を先に言ってから解説を読む。予想と違ったところが記憶に残る
注意点
- 説明が正しいかは解説で確かめる。自己説明は考える習慣をつけるもので、正解を保証するものではない
- 時間がかかるので、全部にやらなくてよい。「なぜ?」と思ったところだけで十分
④ 聞くだけより手を動かす(能動学習)
何をするか
授業・動画・解説を受け取るだけで終わらせない。直後に問題を解く・図を描く・人に説明する。
どんな研究があるか
- Freeman ほか(2014):理科・数学・工学の大学授業 225 研究のメタ分析。講義だけの授業と、学生が解く・話す・考える活動を含む授業(アクティブラーニング)を比べると、試験の成績は平均 0.47 標準偏差(約 6%)上がり、講義だけの授業の学生は落第する確率が 1.5 倍でした。効果は理科・数学・工学のどの分野でも、クラスの大きさにかかわらず見られ、小さいクラス(50 人以下)で最大でした。
- 大学の研究ですが、「聞いて終わり」と「手を動かす」の差は中学でも同じ方向と考えられます。数字は大学のものとして読んでください。
理科での具体例
- 授業を聞いたら、その日のうちに教科書の問題か、このサイトの小テストを 10 分
- 実験は見学で終わらせず、手順を自分で言えるまで。動画で見た実験も「何を確かめる実験で、何が起きたら成功か」を言う
- 友達と「問題を出し合う」は①と④の両方になる
注意点
- 「手を動かす」=「きれいなノート作り」ではない(②参照)。考えて答えを出す活動であること
まとめ:理科の 1 週間の回し方(例)
| 日 | やること |
|---|---|
| 授業の日 | 解説を読む → 閉じて小テスト(基礎)→ まちがえた問題の解説を確認 |
| 3 日後 | 同じ単元の小テスト(標準)。白紙に用語・式を書き出す(②) |
| 1 週間後 | 前週の単元をまとめて小テスト。理由が言えない用語に「なぜ?」(③) |
| 定期テスト前 | ノートを読む代わりに、範囲の小テストを通しで受ける(①で最も効果が大きかったやり方) |
参考文献(DOI は確認ずみ・2026-09-12)
- McDaniel, M. A., Agarwal, P. K., Huelser, B. J., McDermott, K. B., & Roediger, H. L. (2011). Test-enhanced learning in a middle school science classroom: The effects of quiz frequency and placement. Journal of Educational Psychology, 103(2), 399–414. https://doi.org/10.1037/a0021782
- Roediger, H. L., Agarwal, P. K., McDaniel, M. A., & McDermott, K. B. (2011). Test-enhanced learning in the classroom: Long-term improvements from quizzing. Journal of Experimental Psychology: Applied, 17(4), 382–395. https://doi.org/10.1037/a0026252
- Butler, A. C. (2010). Repeated testing produces superior transfer of learning relative to repeated studying. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36(5), 1118–1133. https://doi.org/10.1037/a0019902
- Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Retrieval practice produces more learning than elaborative studying with concept mapping. Science, 331(6018), 772–775. https://doi.org/10.1126/science.1199327
- Nesbit, J. C., & Adesope, O. O. (2006). Learning with concept and knowledge maps: A meta-analysis. Review of Educational Research, 76(3), 413–448. https://doi.org/10.3102/00346543076003413
- Chi, M. T. H., de Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477. https://doi.org/10.1207/s15516709cog1803_3
- Freeman, S., Eddy, S. L., McDonough, M., Smith, M. K., Okoroafor, N., Jordt, H., & Wenderoth, M. P. (2014). Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(23), 8410–8415. https://doi.org/10.1073/pnas.1319030111
- (数学・英語の勉強法から再引用)Dunlosky et al. (2013) https://doi.org/10.1177/1529100612453266 / Rowland (2014) https://doi.org/10.1037/a0037559 / Cepeda et al. (2006) https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
確認方法:CrossRef API で書誌を、OpenAlex API で要旨を取得し、本文に書いた数字は要旨に書かれているものだけを使いました。生データは docs/参考文献_生データ_理社国_2026-09-12.txt。