勉強法
英語の勉強法 ── 研究で確かめられている5つのやり方
このページも数学の勉強法と同じ立場です。「こうすると英語ができるようになるらしい」という話ではなく、実験で比べられた結果が論文として出ているやり方だけを集め、「何人を対象に・何を測って・どれくらい差が出たか」まで書きます。数字が出せないものは出せないと書きます。
英語は、数学とちがって覚えるものの量(単語・熟語・文法の形)が多い教科です。そのため研究も「単語をどう覚えると残るか」に集まっています。ここではそれを中心に、読解と文法にも触れます。
結論の表
| やり方 | ひとことで | 英語ではこうする | 証拠の強さ |
|---|---|---|---|
| ① 見るより思い出す | 単語は「眺める」のではなく「隠して言う・書く」 | 単語カードは日本語を見て英語を言う/書く。覚えた語もテストは続ける | 強い(実験+メタ分析) |
| ② 間をあけて戻る | 1日で10回より、数日に分けて10回 | 同じ単語帳を「1日目・3日目・7日目・14日目」に回す | 強い(実験+メタ分析) |
| ③ 文の中で何度も出会う | 単語は文脈で10回会うと定着しやすい | 単語帳の例文を読む+やさしい英文をたくさん読む | 中〜強 |
| ④ やさしい英文を多く読む(多読) | 辞書なしで読める本をたくさん | 中学レベルの英語の読み物・教科書の本文を音声つきで | 中(メタ分析あり) |
| ⑤ 文法は「型」で書いて使う | 文法は説明を読むより、型で文を作る | 1つの形で3〜5文を自分で作る→添削→書きかえ問題 | 中(数学の「例題学習」「練習テスト」の知見を流用) |
証拠の強さは「中学生・高校生に近い対象で、追跡テストがあり、複数の研究で同じ方向の結果が出ているか」で判定しています。
① 見るより思い出す(練習テスト・想起練習)
何をするか
単語帳を「読む」のをやめて、日本語を見て英語を言う(書く)、英語を見て日本語を言うをくり返す。正解できた単語も、テストから外さない。
どんな研究があるか
- Karpicke & Roediger(2008):大学生に外国語(スワヒリ語)の単語を学習させ、いちど正解できた単語を「その後も繰り返し学習する」「繰り返しテストする」「どちらもやめる」の条件に分けました。1週間後の再生テストでは、繰り返し学習(眺める)は効果がなく、繰り返しテスト(思い出す)は大きな効果がありました。さらに、学生自身の「どれくらい覚えていると思うか」の予想は、実際の成績とほぼ関係がなかった。つまり「覚えた気がする」は当てにならない。
- Rowland(2014):テスト効果の研究をまとめたメタ分析。思い出して書く(再生)テストのほうが、選択肢から選ぶ(再認)テストより効果が大きいという結果。
- Elgort(2011):単語カード型の「意図的な暗記」が、浅い知識にしかならないかを調べた研究。48語を意図的に学習させたあと、心理学の反応時間実験(プライミング)で調べると、暗記した語でも形と意味の処理が自動化していた。「カードで覚えた単語は使えない」という通説への反証です。
英語での具体例
- 単語カード・単語帳アプリは、必ず答えを隠して使う。「見る→めくる」ではなく「思い出す→めくる」
- 正解した単語を「覚えた」箱に入れて終わりにしない。間隔をあけてまた出す(②へ)
- 選択肢問題(4択)より、自分で書く練習のほうが残る。小テストで選択肢形式を使ったあとは、日本語だけ見て英語を書いてみる
- 英文法の例文も同じ。日本語訳を見て英文を書く(和文英訳)が最強の復習
注意点
- 思い出す練習は最初は正答率が低く、つらい。それが正常です。Karpicke & Roediger の学生も「繰り返し学習」のほうが覚えた気がしていた
- 発音がわからない単語は、先に音声を聞く。音を知らない単語は思い出しにくい
② 間をあけて戻る(分散練習)
何をするか
同じ単語を1日で何回も見るのではなく、日をあけて見直す。間隔は「1日後→3日後→1週間後→2週間後」のように広げていくのが目安。
どんな研究があるか
- Nakata(2015):日本の大学生128人に英単語20語を学習させ、「詰め込み」「短い間隔」「中くらい」「長い間隔」×「等間隔」「間隔を広げる」を比べた研究。間隔をあける効果は大きな効果量で確認され、「間隔を広げていく方式」は等間隔より限定的だが統計的に有意に上でした。著者自身が「間隔を入れること自体のほうが、広げ方より効果が大きい」とまとめています。
- Nakata & Webb(2016):20語をまとめて回すか、4語・10語に分けて回すかを比べた研究。間隔をそろえると分け方の差はほぼなく、間隔のほうが効果が大きい。「1日◯語ずつ」の区切り方より、「いつ戻るか」のほうが大事ということです。
- 数学の勉強法で引いた Cepeda ほか(2006) のメタ分析(184論文)も同じ結論で、「テストまでの期間が長いほど、最適な間隔も長くなる」。
英語での具体例
- 単語帳を「1周目は1日50語・次の日に前日分を復習・1週間後に1週間分・1か月後に全部」と回す。1周目の完成度は低くてよい
- 単語帳アプリの「間隔反復」機能はこの研究に基づく。使う場合は、忘れていた単語を正直に「忘れた」と押す
- 文法も同じ。「不定詞」を学んだ週に不定詞だけやるのではなく、翌週・翌月の小テストにも混ぜる(数学の「混ぜて解く」と同じ)
注意点
- 「詰め込み」が無意味なわけではない。テスト前日の詰め込みは翌日には残る。残らないのは1週間後。入試は数か月先なので、間隔が必要
- 間隔をあけると「忘れている」感じがして不安になる。忘れかけたところで思い出すのが一番残るので、それでよい
③ 文の中で何度も出会う
何をするか
単語を単語帳だけで覚えるのではなく、例文・英文の中で繰り返し出会う。目安は10回。
どんな研究があるか
- Webb(2007):日本人学習者121人に、文脈の中で単語に「1回・3回・7回・10回」出会わせ、つづり・意味・文法的な使い方など10種類のテストで知識を測った研究。出会う回数が増えるごとに、知識のどれかが伸びた。10回出会うと相当の学習が起きるが、単語を完全に使えるようになるには10回より多く必要、という結果です。
- Webb & Chang(2015):台湾の英語学習者61人に、多読用のやさしい本10冊を音声を聞きながら読ませた研究。100語の目標語について、読む前→読んだ後→3か月後で調べると、相対的な伸びは読んだ直後 44.06%、3か月後 36.66%。一方で「出現頻度が高い語ほど覚える」という関係は有意ではなかった。つまり、回数は要因の一つであって、全部ではない。
英語での具体例
- 単語帳は例文つきのものを選び、例文も読む。日本語だけ見て例文を英語で言えれば完成
- 教科書の本文は、同じ文を何回も読む(音読・シャドーイング)。教科書は、習った単語が繰り返し出てくるように作られている
- 知らない単語に長文で出会ったら、前後から意味を推測してから辞書を引く。それ自体が1回の「出会い」になる
注意点
- 「10回出会えば覚える」という保証ではない。Webb & Chang では頻度と伸びの関係は有意でなかった。単語帳(①②)と文脈(③)の両方が必要と考える
- 難しすぎる英文では「出会い」にならない。知らない単語が多すぎると意味がとれない(④へ)
④ やさしい英文を多く読む(多読)
何をするか
辞書を引かずに読めるレベルの英文を、たくさん読む。わからない単語は飛ばし、話の流れを追う。
どんな研究があるか
- Nakanishi(2015):多読の効果を調べた34研究(3,942人)のメタ分析。多読をした群としなかった群の比較で d=0.46(中程度)、多読の前後比較で d=0.71。著者は「多読は読む力を伸ばし、カリキュラムの一部にすべき」と結論しています。
- Nation(2006):英文の98%の単語がわかれば補助なしで読めるという前提で計算すると、書き言葉なら 8,000〜9,000語族、話し言葉なら 6,000〜7,000語族が必要、という研究。高校入試の語彙は約1,200〜1,800語(学習指導要領の範囲)なので、入試の長文は「知っている単語の割合」が高くなるよう作られている。逆に、一般向けの英文をいきなり読むと知らない単語だらけになるのは当然で、やさしい本から始める理由がここにあります。
英語での具体例
- 中学生なら、中学の教科書の本文が最良の多読教材。1・2年の教科書を読み返す
- 「Graded Readers(段階別読み物)」の一番やさしいレベルから。1ページに知らない単語が1〜2語以下が目安
- 音声を聞きながら読む(Webb & Chang の方法)。音と文字が結びつき、発音も覚える
- 1日10分でよい。量がものを言う
注意点
- 多読は効果が出るのに時間がかかる(Nakanishi の研究は数か月〜1年のものが多い)。入試直前に始めるやり方ではなく、中1・中2から続けるもの
- d=0.46 は「中程度」。多読だけで入試英語が完成するわけではなく、①②の単語学習と組み合わせる
⑤ 文法は「型」で書いて使う
何をするか
文法の説明を読んで「わかった」で終わらせず、その形で自分の文を3〜5個作る。間違いを直してもらい、次の日に書きかえ問題を解く。
どんな研究があるか
英語の文法学習そのものを中高生で比べた大規模な研究は、この記事の基準(DOI 確認・数字あり)で見つけられたものが限られています。そのため、ここは数学の勉強法で引いた一般的な学習研究を流用しています。
- Sweller & Cooper(1985):解答例(worked example)をまず読んでから類題を解くと、自力で解くより速く正確になる。ただし同じ構造の問題に限る。英文法では「例文(型)をまず覚え、同じ型で文を作る」に当たります
- Roediger & Karpicke(2006)・Rowland(2014):読み返すより、思い出して書くほうが残る。英文法では「説明を読み返す」より「日本語→英語の書きかえをする」に当たります
- Dunlosky ほか(2013):10種類の勉強法の評価で、「練習テスト」「分散練習」が最上位、「再読」「マーカー」は最下位。文法書を何度も読み返してマーカーを引くやり方は、この評価で下位です
英語での具体例
- 解説ページを読んだら、「まずここだけ」の例文を日本語だけ見て英語で書く
- 同じ型で、自分のことを3文書く(I want to 〜. / My mother told me to 〜. …)
- 翌日、小テスト(このサイトの各単元)を解く。間違えた型は解説に戻る
- 並べかえ問題は、動詞→主語→かたまりの順で組む(e3-09 英作文の型)
注意点
- 文法用語(不定詞・関係代名詞)を覚えることと、その形が使えることは別。用語は覚えなくても、形が書ければよい
- 「英文法は不要、多読だけでよい」という意見もありますが、入試の並べかえ・英作文は形の知識を直接問うので、両方やる
よく聞くけれど証拠が弱いもの
「単語は書いて覚える(何十回も書く)」
同じ単語を何十回も書き写すのは、①の「思い出す」が含まれていない(見ながら書いている)ため、練習テストの効果が出にくい。書くなら、隠して思い出してから書く。
「単語は文脈で覚えるべきで、単語帳は浅い知識にしかならない」
Elgort(2011)は、単語カード型の意図的学習でも形と意味の処理が自動化することを示しました。単語帳が「浅い」とは言えません。一方、Webb(2007)は文脈で10回以上出会うことの価値も示しています。どちらか、ではなく両方。
「自分は耳で覚えるタイプだから聞くだけ」
数学の勉強法でも引いた Pashler ほか(2008)は、学習スタイルに合わせた指導が有利という証拠は「ほとんどない」としています。英語では、音と文字の両方で出会うほうが結びつきが強くなる(Webb & Chang の方法も読みながら聞く)。
5つをつなげた1週間の型(例)
中3・高校受験向け。1日30〜40分。
| 曜日 | やること |
|---|---|
| 月 | 単語帳 新規50語:日本語→英語で隠してテスト(①)。わからない語に印 |
| 火 | 月曜の50語を再テスト(②)+文法1単元の解説→例文を和文英訳(⑤) |
| 水 | 単語帳 新規50語+火曜の文法の小テスト(⑤) |
| 木 | 水曜の50語を再テスト+教科書本文を音声つきで2回読む(③④) |
| 金 | 月・水の100語を再テスト(②)+長文1題(設問先読み・e3-08) |
| 土 | 今週の文法の書きかえ・並べかえ10問(①⑤)+やさしい英文を10分(④) |
| 日 | 休み、または先週・先々週の単語をまとめて再テスト(②) |
ポイントは、単語は必ず隠してテストし、同じ語に日をあけて3回以上戻ること。文法は読むより書く。長文はやさしいものを量で。
この記事の立場
- 引いた論文はすべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています(
参考文献ログ)。要旨に数字がないものは数字を書いていません - 中高生そのものを対象にした研究は多くなく、大学生(日本・台湾)の研究が中心です。中学生に同じ大きさの効果が出るかは、論文から断定できません
- 「この方法で合格できる」とは書きません。書けるのは「この条件で比べたら、この差が出た」までです
- 書いている人は研究者でも教員でもありません。資料を読んで整理している社会人です
参考文献
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. https://doi.org/10.1126/science.1152408
- Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432–1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
- Elgort, I. (2011). Deliberate learning and vocabulary acquisition in a second language. Language Learning, 61(2), 367–413. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00613.x
- Nakata, T. (2015). Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning? Studies in Second Language Acquisition, 37(4), 677–711. https://doi.org/10.1017/S0272263114000825
- Nakata, T., & Webb, S. (2016). Does studying vocabulary in smaller sets increase learning? The effects of part and whole learning on second language vocabulary acquisition. Studies in Second Language Acquisition, 38(3), 523–552. https://doi.org/10.1017/S0272263115000236
- Webb, S. (2007). The effects of repetition on vocabulary knowledge. Applied Linguistics, 28(1), 46–65. https://doi.org/10.1093/applin/aml048
- Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015). Second language vocabulary learning through extensive reading with audio support: How do frequency and distribution of occurrence affect learning? Language Teaching Research, 19(6), 667–686. https://doi.org/10.1177/1362168814559800
- Nakanishi, T. (2015). A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. https://doi.org/10.1002/tesq.157
- Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Sweller, J., & Cooper, G. A. (1985). The use of worked examples as a substitute for problem solving in learning algebra. Cognition and Instruction, 2(1), 59–89. https://doi.org/10.1207/s1532690xci0201_3
- Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x