高1 / 歴史総合 / ht-03
列強の進出とアジア(アヘン戦争・インド大反乱・開国)
この単元でできるようになること
- アジア三角貿易(英・印・清)からアヘン戦争(1840〜42)・南京条約、アロー戦争、太平天国へという清の動揺を説明できる
- 不平等条約の 3 要素(領事裁判権・協定関税(関税自主権の欠如)・片務的最恵国待遇)を説明できる
- インド大反乱(1857)→ ムガル帝国滅亡・イギリスの直接統治、東南アジアの植民地化を説明できる
- 日本の開国(ペリー・日米和親条約・日米修好通商条約)を、アヘン戦争の情報と幕府の対応から説明できる
- 開国が日本にもたらした経済・政治の変化(物価上昇・尊王攘夷・幕府の権威低下)を説明し、明治維新(ht-04)へつなげられる
入試での位置づけ
「アヘン戦争の情報が日本の開国にどう影響したか」(天保の薪水給与令・幕府の慎重な対応)、「南京条約と日米修好通商条約の共通点(不平等条約)」、「インド大反乱と太平天国の比較」のように、日本と世界を結びつけて因果を問うのが歴史総合らしい出題。条約の内容は正確に。
1. 清の動揺 ── アヘン戦争から太平天国へ
まずここだけ
アジア三角貿易:イギリスは清から茶を買って銀が流出 → インド産アヘンを清に密輸、インドには綿布を売る → 清から銀が流出し、アヘン中毒が広がる → 清(林則徐)がアヘンを没収・廃棄(1839)。
| 年 | 出来事 | 内容 |
|---|---|---|
| 1840〜42 | アヘン戦争 | イギリスが清を破る。南京条約(1842):香港の割譲、上海・広州など 5 港開港、公行の廃止、賠償金。翌年の追加条約で領事裁判権・協定関税・片務的最恵国待遇 → 不平等条約の原型 |
| 1851〜64 | 太平天国の乱 | 洪秀全(キリスト教の影響、「滅満興漢」)、南京を都に。男女平等・土地均分を掲げる。郷勇(曽国藩・李鴻章)と外国の支援で鎮圧 |
| 1856〜60 | アロー戦争(第 2 次アヘン戦争) | 英仏が清を攻撃。北京条約(1860):天津など 11 港開港、キリスト教布教の自由、外国公使の北京駐在、九竜半島の一部割譲。ロシアは仲介の見返りに沿海州を獲得 → ウラジオストク建設(日本への南下の拠点) |
| 1860 年代〜 | 洋務運動 | 李鴻章ら「中体西用」(政治体制はそのまま、軍事・技術だけ西洋化)→ 日清戦争の敗北で限界が露呈(ht-05) |
不平等条約の 3 要素(日本の条約にも共通):
- 領事裁判権(治外法権):外国人の犯罪を相手国の領事が裁く
- 関税自主権の欠如(協定関税):関税率を自分で決められない
- 片務的最恵国待遇:他国に与えた有利な条件が自動的に相手にも適用される(相手は日本・清に与えない)
2. インドと東南アジア
ここまでできれば十分
- インド:東インド会社が支配を拡大(マイソール・マラーター・シク戦争)。イギリスの機械製綿布でインドの綿工業が壊滅、重税 → 1857 インド大反乱(シパーヒーの反乱):東インド会社のインド人傭兵(シパーヒー)の反乱が各地に拡大 → 鎮圧、ムガル帝国滅亡(1858)、東インド会社解散、イギリスの直接統治。1877 インド帝国(ヴィクトリア女王が皇帝)。分割統治(ヒンドゥーとイスラームを対立させる)。1885 インド国民会議(当初は親英)
- 東南アジア:オランダ = ジャワ(強制栽培制度:コーヒー・砂糖)→ オランダ領東インド(インドネシア)。イギリス = 海峡植民地(ペナン・マラッカ・シンガポール 1819)・マレー半島(ゴム・錫)・ビルマ。フランス = ベトナム・カンボジア・ラオス → フランス領インドシナ(1887)。スペイン = フィリピン(→ 1898 アメリカへ)。タイだけが独立を保つ(英仏の緩衝地帯、チュラロンコン王の近代化)
- 西アジア:オスマン帝国のタンジマート(近代化改革 1839〜)、エジプトのムハンマド=アリー、スエズ運河(1869 開通、1875 イギリスが株を買収)、イラン(カージャール朝)にロシア・イギリスが進出
3. 日本の開国
まずここだけ
背景:
- 18 世紀末からロシア船(ラクスマン 1792、レザノフ 1804)、フェートン号事件(1808 イギリス船が長崎に侵入)→ 異国船打払令(1825)→ モリソン号事件(1837)
- アヘン戦争の情報(オランダ風説書・清からの情報)に幕府は衝撃 → 1842 天保の薪水給与令(打払いをやめ、燃料・水を与えて穏便に帰す)。海防の議論(佐久間象山・高島秋帆)
- アメリカの狙い:太平洋航路の中継地(対清貿易)、捕鯨船の補給。1846 ビッドル来航(拒否)
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1853 | ペリーが浦賀に来航(黒船 4 隻)、開国を要求。同年プチャーチン(露)が長崎へ |
| 1854 | 日米和親条約:下田・箱館の開港、薪水・食料の供給、漂流民の保護、片務的最恵国待遇。貿易はなし。英・露・蘭とも同様の条約(日露和親条約で択捉・得撫の間に国境、樺太は雑居) |
| 1856 | ハリスが下田に着任、通商を要求 |
| 1858 | 日米修好通商条約:老中堀田正睦が朝廷の勅許を得られず、大老井伊直弼が無勅許で調印。神奈川(横浜)・長崎・新潟・兵庫(神戸)の開港+箱館(下田は閉鎖)、自由貿易、領事裁判権、協定関税(関税自主権なし)。蘭・露・英・仏とも(安政の五か国条約) |
| 1859 | 横浜・長崎・箱館で貿易開始 |
ハリスは「アヘン戦争のようにならないため、武力を使わないアメリカと先に結べ」と説いた。
4. 開国の影響
ここまでできれば十分
- 貿易:輸出は生糸(約 8 割)・茶、輸入は毛織物・綿織物・武器。相手はイギリスが最大、港は横浜が中心。輸出超過で国内の品不足と物価上昇、五品江戸廻送令(1860:生糸など 5 品は江戸を経由させる)は効果薄
- 金銀比価の違い(日本 1:5、外国 1:15)→ 外国人が銀を持ちこんで金を買い、金貨が大量流出 → 幕府は万延小判(金の量を減らす)に改鋳 → さらに物価上昇
- 安い機械製綿織物の流入で国内の綿織物業が打撃(ただし生糸は輸出で発展:製糸業の基礎)
- 政治:無勅許調印への反発 → 尊王攘夷運動(天皇を尊び外国を打ち払う)、安政の大獄(1858〜59 井伊直弼が反対派を処罰:吉田松陰・橋本左内ら)→ 桜田門外の変(1860 井伊暗殺)→ 幕府の権威低下、公武合体(和宮降嫁)、生麦事件(1862)・薩英戦争(1863)、四国艦隊下関砲撃事件(1864 長州)→ 薩摩・長州は攘夷の不可能を知り開国・倒幕へ転換(ht-04)
- コレラの流行(1858)、外国人殺傷事件、横浜の居留地と異文化接触(写真・新聞・洋服)
5. 年表
| 年 | 世界 | 日本 |
|---|---|---|
| 1825 | 異国船打払令 | |
| 1839 | 林則徐のアヘン没収、タンジマート開始 | |
| 1840〜42 | アヘン戦争 → 南京条約 | 1842 天保の薪水給与令 |
| 1851 | 太平天国の乱(〜64) | |
| 1853 | クリミア戦争(〜56) | ペリー来航 |
| 1854 | 日米和親条約 | |
| 1856〜60 | アロー戦争 → 北京条約 | |
| 1857 | インド大反乱(→ 58 ムガル滅亡) | |
| 1858 | 日米修好通商条約、安政の大獄 | |
| 1860 | ロシアが沿海州獲得(ウラジオストク) | 桜田門外の変、五品江戸廻送令 |
| 1861 | アメリカ南北戦争(〜65) | |
| 1863 | 薩英戦争 | |
| 1864 | 四国艦隊下関砲撃事件 | |
| 1869 | スエズ運河開通 |
6. よくある間違い
- 南京条約で割譲されたのを「上海」とする(香港。上海は開港地)
- アロー戦争をイギリス単独とする(英仏連合)
- 太平天国を「清の改革運動」とする(清に対する反乱。鎮圧側の改革が洋務運動)
- インド大反乱後に東インド会社が「支配を強めた」とする(解散し、本国の直接統治へ)
- 日米和親条約で貿易が始まったとする(貿易は 1858 年の修好通商条約から)
- 和親条約の開港地に横浜を入れる(下田・箱館。横浜は修好通商条約)
- 修好通商条約を「天皇の許可を得て」とする(無勅許)
- 幕末の最大の貿易相手をアメリカとする(イギリス。アメリカは南北戦争で後退)
- 金が流出した理由を「金が安く売られた」と逆にする(日本では金が外国より安かった=銀に対して)
7. 自己チェック
- アジア三角貿易の 3 辺(茶・アヘン・綿布)を言えるか
- アヘン戦争 → 南京条約(香港・5 港)→ アロー戦争 → 北京条約の内容を言えるか
- 不平等条約の 3 要素を言えるか
- インド大反乱の結果(ムガル滅亡・会社解散・直接統治)と東南アジアの植民地の宗主国を言えるか
- ペリー → 和親条約(下田・箱館)→ 修好通商条約(4 港・無勅許・領事裁判権・協定関税)を年つきで言えるか
- 開国の経済的影響(生糸・物価・金流出)と政治的影響(尊攘・大獄・桜田門外)を言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(ht-03)
関連する単元
- 前提:ht-01 18 世紀のアジア、h-07 江戸時代中期〜幕末(中学)
- 次に進む:ht-04 明治維新と立憲国家、ht-05 帝国主義と日清・日露戦争
- ここで使う考え方が出てくる:kk-09 国際政治(条約・主権)、gt-07 国家と領域
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「歴史総合」B (2) 結び付く世界と日本の開国
- 日米和親条約(1854)・日米修好通商条約(1858)の条文(国立公文書館デジタルアーカイブ)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/social/ht-03/ / 更新 2026-09-13