高1 / 歴史総合 / ht-02
市民革命と国民国家(アメリカ独立・フランス革命・ウィーン体制)
この単元でできるようになること
- アメリカ独立革命の原因(課税・「代表なくして課税なし」)と結果(独立宣言・合衆国憲法:連邦制・三権分立)を説明できる
- フランス革命の流れ(三部会 → 国民議会 → 人権宣言 → 共和政 → 恐怖政治 → ナポレオン)と、の誕生を説明できる
- ナポレオンの支配が国民意識(ナショナリズム)を広げ、ウィーン体制のもとで自由主義・国民主義の運動が続いたことを説明できる
- ラテンアメリカの独立、イタリア・ドイツの統一、アメリカ南北戦争を「国民国家の形成」として理解できる
- 国民国家とは何か(主権・国民・憲法・国語・国民軍・学校)を説明し、明治日本(ht-04)とつなげられる
入試での位置づけ
歴史総合の「近代化」の中心。「独立宣言・人権宣言の資料を読み、啓蒙思想との関係を選ぶ」「フランス革命の出来事の順序」「ウィーン体制と 1848 年革命」「国民国家の要素」が問われます。中学 h-12 の知識に、因果と国民国家という概念を加えます。
1. アメリカ独立革命(1775〜83)
まずここだけ
- 背景:七年戦争の戦費で財政難のイギリスが、13 植民地に印紙法(1765)・茶法(1773)で課税 → 「代表なくして課税なし」(本国議会に議員を送っていないのに課税は不当)→ ボストン茶会事件(1773)
- 1775 独立戦争開始(レキシントン)、総司令官ワシントン。1776 トマス=ペイン『コモン=センス』、7 月 4 日 独立宣言(ジェファソン起草:ロックの社会契約説にもとづき、生命・自由・幸福の追求の権利、人民の抵抗権)
- フランス(ラ=ファイエット)・スペインが植民地側で参戦 → 1783 パリ条約で独立承認、ミシシッピ以東を獲得
- 1787 合衆国憲法:人民主権・連邦制・三権分立(モンテスキュー)、世界最初の近代的成文憲法。1789 ワシントンが初代大統領
- 限界:奴隷制は残る、先住民の排除、女性に参政権なし → 南北戦争へ
2. フランス革命(1789〜99)
まずここだけ
背景:旧体制(アンシャン=レジーム):第一身分(聖職者)・第二身分(貴族)は免税、第三身分(平民、人口の 98%)が税を負担。財政難(アメリカ独立戦争の援助・宮廷の浪費)、啓蒙思想、凶作とパンの値上がり。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1789.5 | ルイ 16 世が三部会を召集(課税のため)→ 第三身分が国民議会を結成(球戯場の誓い) |
| 1789.7.14 | バスティーユ牢獄襲撃(革命の始まり) |
| 1789.8 | 封建的特権の廃止、人権宣言(ラ=ファイエットら起草:自由・平等・人民主権・所有権の不可侵・抵抗権) |
| 1791 | 1791 年憲法(立憲君主政・制限選挙) |
| 1792 | 対外戦争(オーストリア・プロイセン)、8 月 王権停止、9 月 第一共和政(国民公会)。「ラ=マルセイエーズ」、義勇兵(国民が国を守る) |
| 1793 | ルイ 16 世処刑、ジャコバン派(ロベスピエール)の恐怖政治、徴兵制、1793 年憲法(男子普通選挙。未施行)、封建地代の無償廃止、メートル法・革命暦 |
| 1794 | テルミドールの反動(ロベスピエール処刑) |
| 1795 | 総裁政府 |
| 1799 | ナポレオンのブリュメール 18 日のクーデタ → 統領政府(革命の終わり) |
革命の意義:身分制の廃止、国民主権、法の下の平等、私的所有権 → 市民社会の成立。「国民(ナシオン)」という意識 = 国王の臣民から主権をもつ国民へ。国旗(三色旗)・国歌・徴兵制・国民軍。 限界:女性に参政権なし(オランプ=ド=グージュ『女性の権利宣言』)、植民地の奴隷(ハイチ革命 1791〜1804:最初の黒人共和国)。
3. ナポレオンとウィーン体制
まずここだけ
- ナポレオン:1804 ナポレオン法典(民法典)(法の前の平等・所有権・契約の自由 → 各国の民法の手本、日本にも影響)、皇帝即位(第一帝政)。1805 トラファルガーで英に敗北、アウステルリッツで勝利、1806 大陸封鎖令、神聖ローマ帝国消滅。1812 ロシア遠征失敗、1814 退位、1815 ワーテルローで敗北 → セントヘレナ
- 意義:革命の理念(平等・法典)をヨーロッパに広げる + 支配された国で反発 → ナショナリズム(国民意識)が芽生える(スペイン・ドイツ・ロシア)
- ウィーン会議(1814〜15、メッテルニヒ):正統主義(革命前の王政に戻す)と勢力均衡。ウィーン体制 = 自由主義・国民主義を抑える保守体制(神聖同盟・四国同盟)
- 体制への抵抗:ドイツのブルシェンシャフト、イタリアのカルボナリ、ギリシア独立(1829)、ラテンアメリカ諸国の独立(1810〜20 年代:シモン=ボリバル、サン=マルティン。アメリカのモンロー宣言(1823:米欧相互不干渉)で後押し)
- 七月革命(1830 フランス、ルイ=フィリップの立憲王政。ベルギー独立)→ 二月革命(1848 フランス、第二共和政・男子普通選挙 → ルイ=ナポレオン)→ 1848 年革命(諸国民の春):ウィーン・ベルリン・イタリア・ハンガリーで蜂起、メッテルニヒ失脚 → ウィーン体制崩壊。同年『共産党宣言』
- イギリス:選挙法改正(1832 第 1 回:産業資本家に選挙権)、チャーティスト運動(労働者の普通選挙要求)、ヴィクトリア女王時代(1837〜1901)の繁栄、1851 ロンドン万博
4. 国民国家の形成(19 世紀後半)
ここまでできれば十分
| 国 | 出来事 |
|---|---|
| イタリア統一 | サルデーニャ王国のカヴール(首相)、ガリバルディ(千人隊で南イタリアを征服し献上)→ 1861 イタリア王国(ヴィットーリオ=エマヌエーレ 2 世)、1870 ローマ併合 |
| ドイツ統一 | プロイセンのビスマルク(「鉄血政策」):デンマーク戦争 → 普墺戦争(1866)→ 普仏戦争(1870〜71)でフランスを破り、1871 ドイツ帝国(ヴィルヘルム 1 世)。アルザス・ロレーヌ獲得。君主権の強い憲法(→ 明治憲法の手本)、社会保険(世界初)と社会主義者鎮圧法 |
| フランス | 第二帝政(ナポレオン 3 世 1852〜70)→ 普仏戦争で敗北 → パリ=コミューン(1871)→ 第三共和政 |
| アメリカ | 西部開拓(フロンティア・先住民の強制移住・ゴールドラッシュ 1848)、南北戦争(1861〜65):北部(工業・保護貿易・奴隷制反対)vs 南部(綿花プランテーション・自由貿易・奴隷制)、リンカンの奴隷解放宣言(1863)・ゲティスバーグ演説「人民の、人民による、人民のための政治」、北部勝利 → 国民国家として再統一、大陸横断鉄道(1869)、工業化(19 世紀末に世界 1 位) |
| ロシア | クリミア戦争敗北(1853〜56)→ アレクサンドル 2 世の農奴解放令(1861)。南下政策(→ 日本と対立) |
| オーストリア | 1867 オーストリア=ハンガリー帝国(多民族国家のまま) |
国民国家(ネーション=ステート)の要素:
- 主権(外に対して独立、内に最高権力)と憲法・議会
- 国民:身分ではなく平等な「国民」。国語(標準語)・学校教育・国旗・国歌・国民的祝日で一体感をつくる
- 国民軍(徴兵制)・統一した通貨・度量衡・鉄道・電信・新聞
- 裏側:少数民族の同化・排除、植民地の人々は「国民」に含めない → ナショナリズムが帝国主義(ht-05)と結びつく
→ 明治日本は、これをモデルに国民国家をつくる(ht-04)。
5. 年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1773 | ボストン茶会事件 |
| 1776 | アメリカ独立宣言 |
| 1783 | パリ条約(独立承認) |
| 1787 | 合衆国憲法 |
| 1789 | フランス革命開始(7.14)・人権宣言(8.26) |
| 1792 | 第一共和政 |
| 1793 | ルイ 16 世処刑・恐怖政治 |
| 1799 | ナポレオンのクーデタ |
| 1804 | ナポレオン法典・皇帝即位、ハイチ独立 |
| 1814〜15 | ウィーン会議、ワーテルロー |
| 1823 | モンロー宣言 |
| 1830 | 七月革命 |
| 1832 | イギリス第 1 回選挙法改正 |
| 1848 | 二月革命・1848 年革命・『共産党宣言』 |
| 1861 | イタリア王国成立、ロシア農奴解放令、南北戦争開始 |
| 1863 | 奴隷解放宣言 |
| 1871 | ドイツ帝国成立、パリ=コミューン |
6. よくある間違い
- 独立宣言と合衆国憲法を同じ年とする(1776 と 1787)
- 人権宣言をフランス革命の「最後」に出たとする(1789 年 8 月、始まりの直後)
- 第一共和政の成立を 1789 年とする(1792 年。1789〜92 は立憲君主政への移行期)
- ナポレオン法典を「革命をすべて否定した」とする(平等・所有権は守り、各国の民法の手本に)
- ウィーン体制を自由主義的とする(保守・反動。正統主義)
- 1848 年革命でウィーン体制が「強化」されたとする(崩壊)
- ドイツ統一の中心をオーストリアとする(プロイセン)
- 南北戦争の争点を奴隷制「だけ」とする(保護貿易 vs 自由貿易、連邦 vs 州権も)
- 国民国家を「良いことだけ」とする(少数者の排除・植民地支配の裏面)
7. 自己チェック
- アメリカ独立の原因(課税・代表なくして課税なし)と独立宣言・憲法の内容を言えるか
- フランス革命の流れ(三部会 → 国民議会 → 人権宣言 → 共和政 → 恐怖政治 → ナポレオン)を年つきで言えるか
- ナポレオンの功績(法典)と影響(ナショナリズム)を言えるか
- ウィーン体制(正統主義・メッテルニヒ)と 1830・1848 年の革命を言えるか
- イタリア・ドイツ統一の人物と年、南北戦争の争点を言えるか
- 国民国家の 4 つの要素と裏側を言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(ht-02)
関連する単元
- 前提:ht-01 近代化への問い、h-12 世界史(中学)
- 次に進む:ht-03 列強の進出とアジア、ht-04 明治維新と立憲国家
- ここで使う考え方が出てくる:kk-02 民主政治の原理(社会契約説・人権宣言)、kk-01 先哲の思想
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「歴史総合」B (3) 国民国家と明治維新
- アメリカ独立宣言(1776)・フランス人権宣言(1789)の本文(国立国会図書館・各種史料集)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/social/ht-02/ / 更新 2026-09-13