高1 / 古文 / jg-04
助動詞②(き・けり・つ・ぬ・たり・り・べし・らむ・けむ・めり・なり・らし・たし)
この単元でできるようになること
- 連用形接続の助動詞(き・けり・つ・ぬ・たり・たし・けむ)と終止形接続(べし・らむ・めり・なり・らし・まじ)、連体形接続(なり・たり・ごとし)、りを接続で識別できる
- 過去の「き」(直接経験)と「けり」(伝聞・詠嘆)、完了の「つ・ぬ」(強意「てむ・なむ・つべし・ぬべし」)と「たり・り」(存続)を訳し分けられる
- べしの 6 つの意味(推量・意志・可能・当然・命令・適当)と「まじ」を文脈で決められる
- らむ・けむ(現在推量・過去推量)、めり(視覚推定)・なり(聴覚推定・伝聞)・らし(根拠ある推定)を訳せる
- 「なり」の 4 つの識別(断定・推定伝聞・動詞・形容動詞)、「ぬ」「ね」「に」「らむ」の識別ができる
入試での位置づけ
「なり」の識別(断定か伝聞推定か)」「ぬ・つ の強意(〜てしまう・きっと〜)」「べしの意味」「けりの詠嘆」は毎年のように選択肢に絡みます。接続(連用形 vs 終止形 vs 連体形)で候補を絞り、ラ変型には連体形がつく例外と撥音便無表記(あめり・ななり)を押さえるのが得点の近道です。
1. 過去 ── き・けり
まずここだけ
| 接続 | 活用 | 意味 | |
|---|---|---|---|
| き | 連用形(カ変・サ変には未然形にも:来し(こし)・せし) | 特殊型:(せ)・○・き・し・しか・○ | 直接体験の過去(〜た):自分が見聞きしたこと。日記・和歌 |
| けり | 連用形 | ラ変型:(けら)・○・けり・ける・けれ・○ | ①伝聞の過去(〜たそうだ・〜た):人から聞いた昔のこと。物語(「今は昔、〜ありけり」)②詠嘆(〜だなあ・〜だったのだなあ):和歌・会話文、今気づいたこと(「なりけり」「〜にけり」の形が多い) |
- 「し」(連体形)「しか」(已然形):「見し人」(見た人)、「見しかば」(見たので)。サ変の連用形「し」や副助詞「し」と区別(上が連用形なら過去の「き」)
- 「せば〜まし」の「せ」は「き」の未然形(反実仮想)
- 詠嘆の「けり」:「〜なりけり」「〜にけり」で気づき(「この道や行く人なしに秋の暮」…ではなく「月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして」の類)。会話・和歌の「けり」はまず詠嘆を疑う
2. 完了 ── つ・ぬ・たり・り
まずここだけ
| 接続 | 活用 | 意味 | |
|---|---|---|---|
| つ | 連用形 | 下二段型:て・て・つ・つる・つれ・てよ | ①完了(〜た・〜てしまった)②強意(きっと〜・確かに〜)③並列(〜たり〜たり:「泣きつ笑ひつ」) |
| ぬ | 連用形 | ナ変型:な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね | 同上。「つ」は意志的な動作(他動詞)、「ぬ」は自然に起こること(自動詞)につきやすい |
| たり | 連用形 | ラ変型:たら・たり・たり・たる・たれ・たれ | ①完了(〜た)②存続(〜ている・〜てある)。「てあり」から |
| り | サ変の未然形・四段の已然形(e 段)(「さ・み・し・い」:サ変未然・四段已然) | ラ変型:ら・り・り・る・れ・れ | ①存続(〜ている)②完了(〜た)。「あり」から。e 段+りで識別:「咲けり」(咲いている)、「せり」 |
強意(確述)の「つ・ぬ」:下に推量の助動詞がつくとき → 「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」「てまし」「なまし」「つらむ」「ぬらむ」 = きっと〜だろう・〜てしまうだろう。
「風も吹きぬべし」(きっと風も吹くだろう)、「今は言はじ」…「言ひてむ」(きっと言おう) 「なむ」の識別(4 つ):①連用形+なむ = 強意「ぬ」未然+推量「む」(散りなむ:きっと散るだろう)②未然形+なむ = 願望の終助詞(〜してほしい:花咲かなむ)③係助詞「なむ」(強調、結びは連体形:花なむ咲ける)④ナ変の未然形+む(死なむ) 「ぬ」「ね」の識別:jg-03(未然形+ → 打消、連用形+ → 完了)。 「に」の識別:完了「ぬ」の連用形(散りにけり)/断定「なり」の連用形(人にあらず・人にて)/格助詞・接続助詞/形容動詞の連用形(静かに)/副詞の一部(つひに)。
3. 推量 ── べし・まじ・らむ・けむ・めり・らし・なり
まずここだけ
接続:終止形(ただしラ変型(あり・なり・たり・けり・べかり など)には連体形:あるべし・なるめり)。
| 活用 | 意味 | 例 | |
|---|---|---|---|
| べし | 形容詞ク型(べく/べから・べく/べかり・べし・べき/べかる・べけれ・○) | ①推量(〜だろう・〜そうだ)②意志(〜しよう)③可能(〜できる)④当然・義務(〜はずだ・〜べきだ)⑤命令(〜せよ)⑥適当・勧誘(〜するのがよい)。「すいかとめて」(推・意・可・当・命・適) | 「む」の強い版。主語が一人称 → 意志、二人称 → 命令・適当、三人称 → 推量・当然。「え〜べからず」→ 可能 |
| まじ | 形容詞シク型 | 「べし」の打消:打消推量(〜ないだろう)・打消意志(〜まい)・不可能(〜できない)・打消当然(〜はずがない)・禁止(〜してはならない)・不適当 | 「べし」と対応 |
| らむ | 四段型(○・○・らむ・らむ・らめ・○) | ①現在推量(今ごろ〜ているだろう:目の前にないことの推量)②現在の原因推量(どうして〜のだろう:疑問語と)③婉曲・伝聞(〜とかいう) | 「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」(どうして花が散るのだろう) |
| けむ | 四段型 | ①過去推量(〜ただろう)②過去の原因推量(どうして〜たのだろう)③過去の伝聞・婉曲(〜たとかいう) | 「いかなる人なりけむ」 |
| めり | ラ変型 | ①推定(〜ようだ:目で見た根拠)②婉曲(〜ようだ) | 「あめり」「べかめり」(撥音便無表記) |
| なり(推定・伝聞) | ラ変型 | ①推定(〜ようだ・〜らしい:耳で聞いた根拠:音・声)②伝聞(〜そうだ・〜と聞く) | 「男もすなる日記」(男も書くと聞く日記)、「ななり」 |
| らし | 無変化(らし・らし・らし) | 推定(〜らしい:確かな根拠にもとづく) | 「春過ぎて夏来にけらし」(夏が来たらしい:衣を干しているから) |
「らむ」の識別:①終止形+らむ = 現在推量の助動詞(散るらむ)②未然形+らむ = 完了「り」の未然形+推量「む」(咲けらむ:咲いているだろう)③ラ変型連体形の「ら」+む(あらむ)④「〜からむ」(形容詞カリ活用未然+む)。
4. 断定・比況・希望 ── なり・たり・ごとし・たし
まずここだけ
| 接続 | 活用 | 意味 | |
|---|---|---|---|
| なり(断定) | 体言・連体形 | ラ変型:なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ | 断定(〜である)・存在(〜にある:「都なる人」= 都にいる人) |
| たり(断定) | 体言 | ラ変型:たら・たり/と・たり・たる・たれ・たれ | 断定(〜である)。漢文訓読調 |
| ごとし | 連体形・体言+の・が | 形容詞ク型 | 比況(〜のようだ)・例示 |
| たし | 連用形 | 形容詞ク型 | 希望(〜たい)。「まほし」と同じ |
「なり」の識別(最重要):
| 上の語 | 正体 | 例 |
|---|---|---|
| 体言・連体形+なり | 断定(〜である) | 人なり、行くなり(行くのである) |
| 終止形+なり(ラ変型は連体形) | 推定・伝聞(〜ようだ・〜そうだ) | 行くなり(行くようだ・行くそうだ)、あなり(撥音便無表記) |
| 「〜に」の形で用言に続く | 形容動詞の活用語尾(静かなり) | 語幹が状態を表す |
| 「〜と」「〜く」+なり | 動詞「成る」(四段) | 人となり、暗くなりぬ |
- 四段の終止形と連体形は同形(「行く」)なので、四段動詞+なり は文脈で断定か伝聞かを決める(「〜と聞く」なら伝聞)
- 「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」(土佐日記):前の「なる」は終止形「す」+なり → 伝聞、後の「なり」は連体形「する」+なり → 断定
5. 識別のまとめ表
まずここだけ
| 形 | 候補 | 決め手 |
|---|---|---|
| ぬ | 打消「ず」連体形/完了「ぬ」終止形 | 未然形+ → 打消、連用形+ → 完了 |
| ね | 打消「ず」已然形/完了「ぬ」命令形 | 同上 |
| なり | 断定/伝聞推定/形容動詞/動詞 | 体言・連体形+ → 断定、終止形+ → 伝聞推定 |
| なむ | 強意+推量/願望終助詞/係助詞/ナ変未然+む | 連用形+ → 強意、未然形+ → 願望、文中で結びを取る → 係助詞 |
| らむ | 現在推量/完了「り」+む/ら+む | 終止形(u 段)+ → 現在推量、e 段+ → り+む |
| に | 完了「ぬ」連用形/断定「なり」連用形/格助詞/接続助詞/形容動詞語尾 | 連用形+に+き・けり・たり → 完了、体言・連体形+に+あり・て → 断定 |
| る・れ | 受身など「る」/完了「り」/四段已然・命令の活用語尾 | a 段+る → 受身等、e 段+り・る・れ → 完了「り」 |
| し | 過去「き」連体形/サ変連用形/副助詞/形容詞語尾 | 連用形+し+体言 → 過去 |
| けれ | 過去「けり」已然形/形容詞已然形語尾 | 連用形+ → けり |
| べし | 6 意味 | 人称・打消・文脈 |
6. よくある間違い
- 「けり」を常に「〜た」と訳す(和歌・会話では詠嘆「〜だなあ」)
- 「き」と「けり」の違いを無視する(き = 直接体験、けり = 伝聞)
- 「つべし」「ぬべし」の「つ・ぬ」を完了で訳す(強意:きっと〜)
- 「たり」を常に完了とする(存続「〜ている」が多い)
- 「り」の接続を連用形とする(サ変未然・四段已然:e 段)
- 「べし」を「〜べきだ」だけで訳す(推量・意志・可能・当然・命令・適当)
- 「らむ」を過去推量とする(現在推量。過去推量は「けむ」)
- 「めり」と「なり」の根拠を逆にする(めり = 目、なり = 耳)
- 終止形+「なり」を断定とする(伝聞・推定。断定は体言・連体形+)
- 「あなり」「ななり」を「あ+なり」と分解できない(連体形の撥音便無表記+伝聞推定)
- 「なむ」を全部「きっと〜だろう」とする(未然形+なむ は「〜してほしい」)
- 「まじ」を「まし」と混同する(まじ = べしの打消、まし = 反実仮想)
7. 自己チェック
- 連用形・終止形・連体形接続の助動詞をそれぞれ言えるか
- き(直接体験)と けり(伝聞・詠嘆)の違いと活用を言えるか
- つ・ぬ の強意の形(てむ・なむ・つべし・ぬべし)を訳せるか
- たり・り の存続、り の接続(e 段)を言えるか
- べし の 6 つの意味「すいかとめて」と まじ を言えるか
- らむ・けむ・めり・なり・らし の意味と根拠の違いを言えるか
- なり・ぬ・ね・なむ・らむ・に の識別表を言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(jg-04)
関連する単元
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「古典探究」
- 『土佐日記』冒頭、『古今和歌集』紀友則「ひさかたの…」、『万葉集』持統天皇「春過ぎて…」ほか著作権の切れた古典の一節
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jg-04/ / 更新 2026-09-13