高1 / 古文 / jg-06
和歌の修辞(枕詞・掛詞・序詞・縁語・本歌取り)と古典常識
この単元でできるようになること
- 和歌の形式(五七五七七・句切れ・字余り)と、・序詞・・縁語・本歌取り・見立て・倒置・体言止めを見分け、歌の意味を説明できる
- 掛詞を「音が同じ 2 語」から見つけ、両方の意味を訳に反映できる(松 = 待つ、あき = 秋・飽き、ながめ = 長雨・眺め など)
- 代表的な枕詞(あしひきの・ひさかたの・ちはやぶる・たらちねの・ぬばたまの)とかかる語を言える
- 古典常識:月の異名・時刻・方位・十二支、官位・身分(摂政・関白・大臣・中将・女房)、宮中の建物(清涼殿・紫宸殿・後宮)、通過儀礼(元服・裳着・後見)、婚姻(通い婚・妻問い・後朝の文)、出家・物忌み・方違えを説明できる
- 和歌の贈答(贈歌と返歌)の慣習、物名・折句、歌合を知り、読解で和歌の役割(心情の表明・求愛・別れ)を読める
入試での位置づけ
共通テスト古文では和歌の解釈がほぼ毎年出ます。「掛詞を見つけて 2 つの意味を訳す」「贈答歌でどちらが誰の歌か」「序詞と本題の切れ目」が定番。古典常識は「暁に男が帰る → 通い婚」「裳着 → 結婚適齢」のように場面の理解に直結し、知らないと文脈を誤読します。
1. 和歌の形式
まずここだけ
- 短歌:五・七・五・七・七(31 音)。上の句(五七五)と下の句(七七)。初句・二句・三句(腰の句)・四句・結句
- 長歌(五七を繰り返し最後を七七)、旋頭歌(五七七五七七)、反歌(長歌に添える短歌)
- 句切れ:意味・文法が切れる所(終止形・命令形・終助詞・係り結びの結びで切れる)。初句切れ・二句切れ・三句切れ・四句切れ。句切れなし。万葉集は二句・四句切れ(五七調)、古今以後は三句切れ(七五調)が多い
- 字余り・字足らず:字余りは句中に母音(あ・い・う・お)があるときに許される
- 歌の構成:景(自然)+情(心情)、序詞 → 本題、上の句で状況・下の句で心情が多い
2. 修辞法
まずここだけ
| 修辞 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 枕詞 | 5 音の固定した語で、特定の語を導く。訳さない | あしひきの → 山、ひさかたの → 天・光・月、ちはやぶる → 神、たらちねの → 母、ぬばたまの → 黒・夜・髪、くさまくら → 旅、あづさゆみ → 引く・張る、からころも → 着る・裾、しろたへの → 衣・袖・雪、あかねさす → 日・紫、うつせみの → 世・命、たまきはる → 命、いはばしる → 垂水、ももしきの → 大宮 |
| 序詞 | 7 音以上(多くは 2 句以上)で、ある語を導くその歌だけの前置き。比喩・掛詞・同音で本題につなぐ。訳は「〜のように」など | 「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」(山鳥の尾のように長い夜を)、「みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ」(いづみ → いつ見) |
| 掛詞 | 同音で 2 つの意味をもたせる。自然の語と心情の語の組が多い。訳は両方 | まつ(松・待つ)、あき(秋・飽き)、ながめ(長雨・眺め)、ふる(降る・経る・古る・振る)、かれ(枯れ・離れ)、よ(夜・世・節)、み(身・実)、あふ(逢ふ・逢坂)、いなば(因幡・往なば)、うき(憂き・浮き)、おき(沖・起き)、なみだ(波・涙)、はる(春・張る)、かり(雁・仮)、たつ(立つ・竜田)、すみ(住み・澄み)、ね(音・根・寝) |
| 縁語 | 1 つの語に関連する語を歌の中に散りばめる。掛詞と組み合わさることが多い | 「糸」→ より・乱れ・ほそし、「衣」→ 着る・裁つ・裾・褄・張る、「波」→ 寄る・立つ・帰る、「舟」→ 漕ぐ・寄る・泊つ、「弓」→ 引く・張る・矢 |
| 本歌取り | 有名な古歌(本歌)の句を取り入れて、新しい情趣を重ねる。新古今集に多い | 藤原定家「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ」← 万葉集「苦しくも降りくる雨か三輪の崎佐野のわたりに家もあらなくに」 |
| 見立て | あるものを別のものに見る比喩 | 桜を雲に、紅葉を錦に、波を花に |
| 擬人法 | 自然を人のように | 「花に物言ふ」 |
| 倒置法 | 語順を入れかえて強調 | |
| 体言止め | 結句を体言で止めて余情 | 「…雪の夕暮れ」 |
| 物名(隠し題)・折句 | 物の名を歌に隠す/各句の頭に語を置く(「からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞ思ふ」→ かきつばた) | 伊勢物語・東下り |
掛詞の見つけ方:①ひらがなで書かれた語に注意 ②その語で自然と心情の両方に読めるか ③前後の語とつながる意味が 2 通りあるか。訳では「〜(秋)… あなたに飽きられ…」のように両方を出す。 序詞の見つけ方:上の句が自然描写で、下の句の心情と同音(掛詞)か比喩でつながる。枕詞との違いは長さ(7 音以上)とその歌独自であること。
3. 古典常識 ── 時間・空間
まずここだけ
月の異名(旧暦。季節は 1〜3 月 春、4〜6 夏、7〜9 秋、10〜12 冬):
| 月 | 異名 | 月 | 異名 | 月 | 異名 | 月 | 異名 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 睦月 | 4 | 卯月 | 7 | 文月 | 10 | 神無月 |
| 2 | 如月 | 5 | 皐月 | 8 | 葉月 | 11 | 霜月 |
| 3 | 弥生 | 6 | 水無月 | 9 | 長月 | 12 | 師走 |
時刻(十二支で 2 時間ずつ):子(0 時ごろ)・丑(2)・寅(4)・卯(6)・辰(8)・巳(10)・午(12:正午)・未(14)・申(16)・酉(18)・戌(20)・亥(22)。暁(あかつき:夜明け前)→ しののめ → 曙(あけぼの)→ 朝ぼらけ → 朝。夕べ → 宵 → 夜中 → 暁。「つとめて」は早朝。 方位:子 = 北、午 = 南、卯 = 東、酉 = 西。北東 = 丑寅(艮:鬼門)、南西 = 未申(裏鬼門)。 月の呼び名:朔・新月(1 日)→ 三日月 → 上弦 → 十五夜・望月・満月(15 日:中秋の名月は 8 月 15 日)→ 十六夜(いざよひ) → 立待月(17)・居待月(18)・寝待月(19)・更待月(20)→ 有明の月(夜明けに残る月。20 日以降)→ 晦日(つごもり)。 方違え(陰陽道で凶の方角を避けて別の場所に泊まる)、物忌み(凶日に家にこもる)、夢占、加持祈禱(病気はもののけ)、穢れ。
4. 古典常識 ── 身分・宮中・人生
まずここだけ
- 天皇(帝・みかど・主上・上・内裏)、上皇(院)、中宮・皇后・女御・更衣(身分順)、東宮(春宮) = 皇太子、宮 = 皇族、親王・内親王
- 官位:摂政(幼帝の代行)・関白(成人の帝を補佐)、太政大臣・左大臣・右大臣・内大臣、大納言・中納言・参議(= 公卿・上達部(かんだちめ):三位以上)、殿上人(四位・五位・六位蔵人で清涼殿に昇れる)、地下(じげ)。武官:近衛の大将・中将・少将、蔵人・蔵人頭(天皇の秘書)。地方:国司(守・介)、受領
- 女性:女房(宮中・貴族に仕える女性。上臈・中臈・下臈)、乳母、北の方(正妻)、姫君、尼
- 宮中:内裏、紫宸殿(儀式)、清涼殿(天皇の日常)、後宮(七殿五舎:弘徽殿・藤壺(飛香舎)・梨壺・桐壺(淑景舎) など后妃の住まい)、殿上の間、御簾・几帳・屏風(女性は姿を見せない)、寝殿造(寝殿・対屋・渡殿・釣殿)、簀子・廂・格子・妻戸
- 人生の儀礼:産養(誕生)→ 袴着(3〜7 歳)→ 元服(男子の成人、12〜16 歳。初冠)/裳着(女子の成人 12〜14 歳 → 結婚可)→ 結婚(通い婚・妻問い婚:男が夜に女の家に通い暁に帰る、三日夜の餅で成立、後朝(きぬぎぬ)の文:翌朝男が送る手紙。垣間見(のぞき見)から懸想文・和歌の贈答で始まる。北の方と妾)→ 出家(世を捨つ・御髪おろす・尼になる。重病・悲しみの時)→ 死(いたづらになる・はかなくなる・隠る・消え入る)→ 服喪・四十九日
- 衣服:束帯・衣冠・直衣・狩衣(男)、十二単(女房装束・唐衣裳)・小袿・袿(女)、烏帽子、扇・檜扇、薫物(香)
- 教養:和歌(贈答・歌合・歌会)、管弦(琴・琵琶・笛)、漢詩文(男性)、仮名(女性)、書、蹴鞠、双六・碁、物語(女性が読む)
- 年中行事:正月(白馬の節会・子の日の遊び)、三月三日(曲水の宴)、五月五日(端午:菖蒲)、七月七日(乞巧奠)、八月十五夜、九月九日(重陽:菊)、葵祭(賀茂祭)、五節の舞、除目(官職の任命:春の県召・秋の司召)
- 仏教:無常観、極楽往生、前世の因縁(宿世・契り)、六道、加持・読経、法華八講
5. 和歌の読解の手順
まずここだけ
- ひらがなの語に掛詞がないか探す(まつ・あき・ながめ・ふる・よ)
- 上の句が自然描写なら序詞か → 下の句とのつなぎ目(同音・比喩)を見つける
- 枕詞は訳さず飛ばす
- 句切れで意味を区切り、助動詞(けり = 詠嘆、らむ = 原因推量、まし = 反実仮想)で心情をつかむ
- 贈答歌:贈歌の語を返歌が受ける(同じ語・縁語で返す)。誰が誰に、求愛か拒絶か、別れか慰めか
- 詞書(ことばがき)(歌の前の状況説明)と本文の場面に戻して、歌が何をしているか(心情の表明・皮肉・約束)を決める
「秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざとぶらはむ」:まつ = 松虫・待つ(掛詞)。「人を待つ松虫の声がする。私を待っているのかと行って訪ねてみよう」
6. よくある間違い
- 枕詞を訳す(訳さない。序詞は「〜のように」で訳すことがある)
- 序詞を枕詞とする(枕詞は 5 音の固定、序詞は 7 音以上でその歌独自)
- 掛詞の片方の意味だけ訳す(両方)
- 「あき」を「秋」だけ、「まつ」を「松」だけとする(飽き・待つ)
- 十五夜を「9 月 15 日」とする(旧暦 8 月 15 日)
- 有明の月を「夕方の月」とする(夜明けに残る月)
- 子の刻を正午とする(午が正午。子は午前 0 時)
- 鬼門を「南西」とする(北東・丑寅)
- 元服を女子、裳着を男子の成人とする(元服 = 男、裳着 = 女)
- 平安の結婚を「嫁入り」とする(男が女の家に通う通い婚)
- 「暁に男が帰る」場面を理解できない(通い婚で夜明け前に帰る。後朝の文が続く)
- 上達部と殿上人を同じとする(上達部 = 三位以上の公卿、殿上人 = 四・五位など)
- 「いたづらになる」を「退屈になる」と訳す(死ぬ)
7. 自己チェック
- 枕詞 10 個とかかる語を言えるか
- 掛詞の組 10 個を言え、歌から見つけられるか
- 序詞・縁語・本歌取りを説明し、枕詞と序詞の違いを言えるか
- 月の異名 12、時刻の十二支、月の呼び名(望月・十六夜・有明)を言えるか
- 身分(摂政関白・上達部・殿上人・女御更衣・女房)と宮中の建物を言えるか
- 元服・裳着・通い婚・後朝の文・出家・死の婉曲表現を説明できるか
- 和歌の読解手順 6 つを言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(jg-06)
関連する単元
- 前提:jg-01 古文単語(多義語)、jg-04 助動詞(けり・らむ・まし)、jg-05 係り結び・終助詞
- 次に進む:jg-07 古典文学史、jg-08 古文読解の型
- ここで使う考え方が出てくる:jk-04 漢詩の形式(対句・押韻)、jn-02 小説の表現技法
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「古典探究」(伝統的な言語文化)
- 『百人一首』『古今和歌集』『新古今和歌集』『万葉集』『伊勢物語』の歌(著作権の切れた古典)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jg-06/ / 更新 2026-09-13