高1 / 現代文 / jn-02
小説・随筆の読み方(心情・情景・語り手・表現技法)
この単元でできるようになること
- 小説の心情は直接書かれないことが多いと知り、行動・会話・情景・身体の反応から読み取れる
- 情景描写が心情を映す(雨 = 沈んだ気分、とは限らない:その場面の文脈で決める)ことを使える
- 語り手・視点(一人称・三人称・誰の目から見ているか)と時間の流れ(回想・場面転換)を押さえられる
- 表現技法(比喩・擬人法・倒置・反復・体言止め・象徴・対比・色彩)とその効果を説明できる
- 随筆(エッセイ)は「体験(具体)→ 気づき(抽象)」の構造と知り、筆者の気づきの文を見つけられる
- 設問の型(心情説明・理由・表現の効果・人物像)ごとの解き方と、選択肢の外し方を使える
入試での位置づけ
共通テスト国語の第 2 問(文学的文章)は、小説または随筆・詩など。約 3,000〜4,000 字に 5〜6 問、配点 45〜50 点。「傍線部の心情」「行動の理由」「表現の効果」「本文と批評文や別資料の比較」が出ます。本文の描写に根拠がある選択肢だけが正解で、「こう感じるのが普通」という常識的な心情を選ぶと外れます。この単元の例文はすべてこのサイトのための自作です。
1. 心情の読み取り ── 直接書かれないものを読む
まずここだけ
小説は「悲しかった」と書かずに、悲しさが表れる行動や情景を書く。心情の手がかりは 5 つ。
| 手がかり | 例(自作) | 読み取れる心情 |
|---|---|---|
| 行動 | 返事をせず、靴の紐を結び直した | 答えたくない・ためらい・動揺を隠す |
| 会話(言い方) | 「別に」と言って、窓の外を見た | 本心を隠す・強がり |
| 身体の反応 | 喉が鳴った/指先が冷たくなった/頬が熱くなった | 緊張・恐れ・恥ずかしさ |
| 情景 | 夕方の光が、教室の床に長く伸びていた | 終わりの予感・寂しさ(文脈で決まる) |
| 直接の心情語 | うれしかった・腹が立った | そのまま(ただしそれだけで終わらない:その後の行動と矛盾しないか) |
読み方:
- 傍線部の直前の出来事(何が起きたか・誰が何を言ったか)を確認 → 心情の原因
- 傍線部の行動・身体反応を確認 → 心情の表れ
- 傍線部の後の行動・会話で確かめる(矛盾しないか)
- 心情は複数が混じることが多い(「うれしいが、素直に喜べない」「怒りと、それを恥じる気持ち」)。選択肢では両方が書かれているものが正解になりやすい
自作例:「『合格、おめでとう』と母は言った。言ってから、台所に戻って水を出した。水はしばらく流れ続けた。」 → 行動(台所に戻る・水を流し続ける)から、祝う気持ちと、娘が家を出ることへの寂しさ(素直に喜べない複雑な気持ち)を読む。「水」は涙の象徴にもなっている。
2. 情景描写 ── 景色は心の鏡
まずここだけ
- 小説の天候・光・色・音・季節は人物の心情や場面の空気を映す。ただし決まった対応はない(雨 = 悲しみ、とは限らない)。その場面の文脈で読む
- よく使われる対応(目安):光・明るさ(希望・気づき)、夕暮れ(終わり・寂しさ・懐かしさ)、夜・闇(不安・孤独・秘密)、雨(沈む・閉じこもる/洗い流す・再生)、風(変化・動揺)、春(始まり)、冬(厳しさ・停滞)、海・川(時間・隔たり・境界)、窓(内と外・あこがれ)
- 情景の変化 = 心情の変化:「雲が切れて、光が差した」の後に人物が顔を上げるなど。場面の最初と最後の情景を比べる
- 五感(音・匂い・手触り)の描写は、人物の意識がそこに向いていることを示す(緊張すると時計の音が聞こえる)
自作例:「駅のホームには、もう誰もいなかった。電車の去った線路の上で、蛾が一匹、灯りに当たり続けていた。」 → 誰もいないホーム・去った電車・同じ所をぶつかり続ける蛾 = 取り残された感じ・行き場のなさ。
3. 語り手・視点・時間
まずここだけ
| 項目 | 種類 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 語り手 | 一人称(私・僕)/三人称(彼・彼女・名前) | 一人称は語り手の知らないこと・気づかないことがある(読者には見えて語り手には見えない) |
| 視点 | 誰の内面が描かれるか(視点人物)。三人称でも一人の内側に寄る(「彼は〜と思った」)ことが多い | 視点人物以外の心情は行動・会話からしか読めない。視点が移る場面に注意 |
| 語り手と作者 | 語り手 ≠ 作者。「私」は作中の人物 | 随筆では語り手 = 筆者に近い |
| 時間 | 現在の場面/回想(「〜たものだった」「あの頃」)/場面転換(行空き・時間の飛び) | 回想の始まりと終わりを見つける。過去の出来事が現在の心情の原因になる |
| 語りの距離 | 人物に近い(内面を細かく)/遠い(外から淡々と) | 淡々と語られる場面ほど感情が抑えられている(強い感情の裏返し)ことがある |
人物像の読み方:行動・発言・他の人物の反応・外見の描写を集めて一言でまとめる(「不器用だが誠実」)。変化(最初と最後でどう変わったか)を問われることが多い。
4. 表現技法とその効果
まずここだけ
| 技法 | 例(自作) | 効果(設問で使う言い方) |
|---|---|---|
| 比喩(直喩) | 声は、氷の上を転がる小石のようだった | 感覚的に具体化する・印象を強める |
| 比喩(隠喩) | 彼の言葉は、いつも私の胸に刺さる棘だった | 「ようだ」を使わず直接重ねる。強い一体感 |
| 擬人法 | 古い時計が、ためらうように鳴った | ものに感情を与え、人物の心情を重ねる |
| 象徴 | 流れ続ける水(涙)/閉じた窓(心を閉ざす) | 具体物が抽象的な意味を背負う |
| 倒置 | 見えなかった、何も。 | 語順を変えてその語を強調・余韻 |
| 反復 | 待った。待った。それでも来なかった。 | 時間の長さ・感情の高まり・リズム |
| 体言止め | 窓の外、ただ雪。 | 余韻・印象を残す・簡潔 |
| 短文・言い切り | 扉が閉まった。終わった。 | 緊張・断絶・感情の抑制 |
| 対比 | 騒がしい教室と、静かな保健室 | 二つを並べて違いを際立たせる |
| 色彩・光 | 白い病室に、赤い林檎が一つ | 視覚的な印象・象徴(赤 = 生命) |
| オノマトペ | ぽつり、ぽつりと話した | 臨場感・感覚の具体化 |
| 会話の省略・沈黙 | 「……」「うん」 | 言葉にならない感情・距離 |
| 視点の転換・場面の飛躍 | 行空きで十年後 | 時間の経過・対比 |
| 反語・問いかけ | あれは本当に春だったのか | 疑い・心の揺れを読者に伝える |
「表現の効果」設問の答え方:①技法の名前(比喩・反復…)、②何を表しているか(人物の心情・場面の空気)、③読者にどう伝わるか(印象を強める・余韻・臨場感)。本文の内容と合わない効果(明るい場面で「不安を強める」)は外す。
5. 随筆(エッセイ)の読み方
まずここだけ
- 随筆 = 筆者の体験(具体)+そこからの気づき・考え(抽象)。評論より主張がゆるやかで、感じたことが中心
- 構造:「体験の描写 → 『そのとき私は〜と思った』『〜ということに気づいた』『〜なのかもしれない』」。気づきの文(抽象)に線
- 文末:「〜のかもしれない」「〜気がする」「〜ような気がした」「〜だろう」── 断定を避けた柔らかい主張。設問では「筆者の考え」として扱う
- 体験と気づきの対応:気づきは体験のどの部分から来たかを結ぶ。選択肢で体験だけを書いたもの(具体にすぎない)、気づきを言い過ぎたもの(「人生のすべて」)は外す
- 評論との違い:評論は「〜である」と論証する。随筆は「私には〜と思えた」と感じ方を語る。「筆者は〜と断定している」という選択肢は随筆では外れやすい
自作例:「祖父の書斎を片づけていると、辞書の間から、私が小学生のときに描いた絵が出てきた。祖父は一度もその絵のことを話さなかった。人は、大切なものほど口にしないのかもしれない。」 → 体験:絵が出てきた・祖父は話さなかった。気づき:最後の文(「のかもしれない」)。
6. 設問の型と解き方
まずここだけ
| 型 | 問い方 | 解き方 |
|---|---|---|
| 心情説明 | 「このときの〜の気持ちとして適切なもの」 | 直前の出来事(原因)+行動・身体反応(表れ)+後の行動(確認)。複数の感情が混じるものが正解になりやすい |
| 行動の理由 | 「〜したのはなぜか」 | 直前の会話・出来事と人物の性格・立場。「〜から」で傍線部とつながるか |
| 表現の効果 | 「この表現の効果として適切なもの」 | 技法 + 表す心情・空気 + 読者への伝わり方。場面の雰囲気と合うか |
| 人物像 | 「〜はどのような人物か」 | 行動・発言・他人の反応を集める。一つの場面だけで決めない |
| 情景の意味 | 「この描写は何を表しているか」 | 人物の心情との対応。場面の前後の情景の変化 |
| 本文と資料 | 「批評文・作者の言葉・別の場面との比較」 | 資料の主張を一言でまとめ、本文のどの描写が対応するか |
選択肢の外し方:
- 本文に描写の根拠がない心情(常識ではそう感じそうでも)
- 言い過ぎ(「絶望」「憎悪」「完全に」── 本文は「ためらい」程度)
- 原因のすり替え(心情の原因が別の出来事になっている)
- 人物のすり替え(A の心情を B のものとする・視点人物以外の内面を断定)
- 時間のずれ(後でわかることを、その時点の心情としている)
- 一部だけ正しい(前半は合うが後半が本文にない)
7. 読む手順
まずここだけ
- 登場人物と関係(誰と誰・年齢・立場)をメモ。語り手・視点人物を確認
- 場面の区切り(時間・場所が変わる所、回想の出入り)に線
- 人物の行動・身体反応に印、情景に波線 → 心情の手がかり
- 心情の変化(最初 → きっかけ → 最後)を一言ずつメモ
- 設問は傍線部の前後に戻り、原因 → 表れ → 確認の順で本文の言葉で答えを作ってから選択肢へ
- 随筆は体験と気づきを線で結ぶ
8. よくある間違い
- 「雨 = 悲しい」のように情景を決まった意味で読む(文脈で決める)
- 常識的に「こう感じるはず」の心情を、本文の根拠なしに選ぶ
- 心情は一つだと思い、複数の感情が混じる選択肢を「矛盾している」と外す
- 視点人物以外の心情を断定した選択肢を選ぶ(行動から推測できる範囲まで)
- 語り手を作者と同一視する(小説の「私」は作中人物)
- 回想と現在の場面を混同し、時間のずれた心情を選ぶ
- 「表現の効果」で技法の名前だけ合っていて、場面の雰囲気に合わない効果を選ぶ
- 随筆の「〜かもしれない」を「筆者は断定している」とする選択肢を選ぶ
- 人物像を一つの場面の行動だけで決める
9. 自己チェック
- 心情の手がかり 5 つと、読み取りの順(原因 → 表れ → 確認)を言えるか
- 情景描写の読み方(決まった意味ではなく文脈・変化)を説明できるか
- 語り手・視点人物・回想の見つけ方を言えるか
- 表現技法 10 と、その効果の言い方を言えるか
- 随筆の「体験 → 気づき」の構造と文末の特徴を言えるか
- 選択肢の外し方 6 つを言えるか
10. 小テストへ
→ 小テスト(jn-02)
関連する単元
- 前提:k-12 説明文・小説の読み方(中学)、k-13 作文と表現の決まり(表現技法)
- 次に進む:jn-03 評論頻出語彙と漢字、jn-04 記述・要約と複数資料
- ここで使う考え方が出てくる:jn-01 評論の読み方(具体と抽象・選択肢の外し方は共通)、jg-06 和歌の修辞(比喩・象徴の古典版)、jg-08 古文読解の型(心情の読み取り)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「文学国語」の「読むこと」
- 大学入試センター「令和 7 年度 大学入学共通テスト 問題作成方針」
- 例文はすべて本サイトのための自作。他人の作品の転載はしていない
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jn-02/ / 更新 2026-09-13