高1 / 古文 / jg-01
歴史的仮名遣いと古文単語(現代と意味が違う語・多義語)
この単元でできるようになること
- 歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直す 5 つの規則(は行転呼・ゐゑを・ぢづ・くわぐわ・長音)を使える
- 現代と意味が違う古文単語(あはれ・をかし・うつくし・ありがたし・おどろく・ののしる など)を文脈で正しく訳せる
- 多義語(心・世・さらなり・すなはち・いと・げに)と、古文特有の語(いみじ・かなし・つとめて・ゆかし・さうざうし)を覚える
- 接頭語・接尾語・重要な副詞(え〜ず・な〜そ・よも〜じ・つゆ〜ず・いかで)を訳せる
- 単語の意味を語源・現代語との対応・プラス/マイナスで整理して覚える方法がわかる
入試での位置づけ
共通テスト古文の最初の設問は語句の解釈(傍線部の現代語訳・意味)。ここで出るのは「現代語と意味がずれている語」ばかりで、単語を知らないと選択肢を絞れません。300 語程度の重要単語のうち、この単元では特に頻出の 60 語を「現代と違う・多義・古文特有・副詞」の 4 グループで確かめます。
1. 歴史的仮名遣いの 5 規則
まずここだけ
| 規則 | 歴史的 → 現代 | 例 |
|---|---|---|
| ① 語頭以外のは行はわ行に | は・ひ・ふ・へ・ほ → わ・い・う・え・お | 思ふ → 思う、あはれ → あわれ、川 → かわ(かは)、なほ → なお |
| ② ゐ・ゑ・を → い・え・お | ゐる → いる、こゑ → こえ、をかし → おかし | |
| ③ ぢ・づ → じ・ず | はぢ → はじ、みづ → みず | |
| ④ くわ・ぐわ → か・が | くわし → かし(菓子)、ぐわん → がん(願) | |
| ⑤ 長音:au → ō、iu → yū、eu → yō、ou → ō | やうやう → ようよう、けふ → きょう(eu)、てふ → ちょう、いみじう → いみじゅう、さうらふ → そうろう |
※ 助詞の「は」「へ」「を」はそのまま(「われは」「京へ」)。語頭の「は」も変えない。
2. 現代と意味が違う語(最重要)
まずここだけ
| 古語 | 古文での意味 | 現代の意味との違い | 例 |
|---|---|---|---|
| あはれ | しみじみとした趣・情趣・かわいそう | 「哀れ」だけではない | もののあはれ |
| をかし | 趣がある・すばらしい・美しい・こっけい | 「おかしい」= 変 ではない | 春はあけぼの…をかし |
| うつくし | かわいい・いとしい | 「美しい」ではない | うつくしきもの、瓜にかきたるちごの顔 |
| ありがたし | めったにない・珍しい | 「感謝」ではない | ありがたきもの |
| おどろく | 目が覚める・はっと気づく | 「びっくり」もある | 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる |
| ののしる | 大声で騒ぐ・評判になる | 「悪口を言う」ではない | 人々ののしりあへり |
| かなし | いとしい・かわいい(愛し)/悲しい(悲し) | 2 つの意味 | いとかなしうしたまふ |
| あやし | 不思議だ・身分が低い・粗末だ | 「怪しい」だけではない | あやしき家 |
| いみじ | 程度がはなはだしい(良くも悪くも)・すばらしい・ひどい | 文脈でプラスにもマイナスにも | いみじうをかし/いみじう恐ろし |
| おぼゆ | 思われる・似ている・思い出される | 「覚える」ではない | 昔おぼゆ |
| おこたる | 病気が治る・怠ける | 病おこたりぬ | |
| としごろ | 長年・数年来 | 「年ごろ」ではない | としごろ思ひつること |
| つとめて | 早朝・翌朝 | 「努めて」ではない | 冬はつとめて |
| やがて | すぐに・そのまま | 「しばらくして」ではない | やがて帰りぬ |
| さらに〜ず | まったく〜ない | 「その上」ではない | さらに知らず |
| なかなか | かえって・中途半端に | 「かなり」ではない | なかなかなり |
| むつかし | 不快だ・うっとうしい | 「難しい」ではない | |
| はづかし | 立派だ(こちらが恥ずかしくなるほど)・恥ずかしい | はづかしき人 | |
| こころにくし | 奥ゆかしい・心ひかれる | 「憎い」ではない | |
| けしき | 様子・態度・機嫌 | 「景色」ではない | けしきばかり |
| せうそこ | 手紙・訪問 | 「消息」 | |
| ゆかし | 知りたい・見たい・聞きたい・心ひかれる | 「ゆかしい」 | |
| さうざうし | 物足りない・寂しい | 「騒々しい」ではない | |
| すさまじ | 興ざめだ | 「すさまじい」ではない | すさまじきもの |
| にくし | 気にくわない・不快だ | にくきもの | |
| わろし | よくない(悪し > わろし) | 「悪い」より弱い | |
| いたづらなり | むだだ・むなしい・退屈だ | 「いたずら」ではない | いたづらになりぬ(= 死んだ) |
| あからさまなり | ほんのちょっと・急に | 「露骨」ではない | |
| まめなり | まじめだ・誠実だ・実用的だ | まめまめし | |
| おとなし | 大人らしい・分別がある | 「静か」ではない |
3. 多義語と古文特有の語
ここまでできれば十分
多義語:
| 語 | 意味 |
|---|---|
| 心 | ①心 ②趣・風流心 ③意味・わけ ④思いやり ⑤本心 |
| 世 | ①世の中 ②男女の仲 ③一生・治世 ④俗世(「世を捨つ」= 出家) |
| いと | ①とても ②(打消と)たいして〜ない(いとしも〜ず) |
| げに | ①なるほど・本当に ②実に |
| すなはち | ①すぐに ②つまり |
| さらなり | 言うまでもない(言へばさらなり) |
| わりなし | ①道理に合わない ②どうしようもない ③つらい |
| あぢきなし | ①つまらない ②どうにもならない |
| はかなし | ①頼りない ②ちょっとした ③はかない |
| おほかた | ①だいたい ②(打消と)まったく〜ない |
| たより | ①手がかり・よりどころ ②ついで・機会 ③便宜 |
| ことわり | ①道理 ②もっともだ(ことわりなり) |
| いとほし | ①かわいそうだ ②かわいい ③困る |
| らうたし | かわいい・いじらしい |
| なつかし | 心ひかれる・親しみやすい(「懐かしい」ではない) |
古文特有の語:あした(朝)、ゆふべ(夕方)、よ・よる、あく(夜が明ける)、なほ(やはり)、ただ(ただ・まるで・すぐ)、いかで(どうして/なんとかして)、など(どうして)、いつしか(早く)、ゆゆし(不吉だ・はなはだしい・すばらしい)、きよらなり(美しい)、なめし(無礼だ)、あさまし(驚きあきれる)、めづらし(すばらしい・珍しい)、めでたし(すばらしい)、くちをし(残念だ)、あまた(たくさん)、やをら(そっと)、ふと(さっと)、ゐる(座る)、ゐざる(膝で進む)、ながむ(物思いにふける)、あくがる(さまよい出る)、まうく(用意する)、まもる(見つめる)、かしづく(大切に育てる)、ねんず(祈る・我慢する)、さぶらふ・はべり(お仕えする/〜です)
4. 副詞と呼応(陳述の副詞)
まずここだけ
| 副詞 | 呼応 | 意味 |
|---|---|---|
| え | 〜ず | 〜できない(不可能) |
| な | 〜そ | 〜するな(禁止) |
| ゆめ・ゆめゆめ | 〜な・〜ず | 決して〜するな |
| つゆ・さらに・すべて・たえて・おほかた・よに | 〜ず | まったく〜ない |
| よも | 〜じ | まさか〜ないだろう |
| いかで | 〜む・〜ばや | なんとかして〜したい/どうして〜か |
| いかが・など・なに | 〜む | どうして〜か |
| おそらく・けだし | 〜む | おそらく〜だろう |
| をさをさ | 〜ず | ほとんど〜ない |
| もし | 〜ば | もし〜なら |
| たとひ | 〜とも | たとえ〜ても |
| いと | 〜ず | たいして〜ない |
接頭語:うち〜(ちょっと・すっかり:うち笑ふ)、もの〜(なんとなく:もの悲し)、かき〜(強め:かき消つ)、さし〜、み〜(敬意:み心)。接尾語:〜がる(〜と思う)、〜ばむ(〜らしくなる)、〜げなり(〜そうだ)。
5. 覚え方のコツ
ここまでできれば十分
- プラス/マイナスで分ける:プラス(をかし・めでたし・うつくし・らうたし・きよらなり・いみじ〈良〉)、マイナス(すさまじ・むつかし・にくし・わろし・あさまし・いみじ〈悪〉)
- 現代語の中の名残を探す:「おどろく」→「目覚まし時計に驚く」、「ありがたし」→「有り難い = めったにない」、「つとめて」→「早朝に勤める」
- 漢字を当てる:「あやし」→ 怪し/賤し、「かなし」→ 愛し/悲し、「おこたる」→ 怠る(病が怠る = 休む = 治る)
- 短い例文ごと覚える(枕草子・徒然草の冒頭など)
- 訳すときはまず現代語と同じ意味を疑う:選択肢に「現代語そのまま」があればひっかけの可能性
6. よくある間違い
- 「うつくし」を「美しい」と訳す(かわいい)
- 「ありがたし」を「ありがたい」と訳す(めったにない)
- 「おどろく」を常に「驚く」と訳す(目が覚める、が第一)
- 「ののしる」を「悪口を言う」と訳す(大声で騒ぐ)
- 「やがて」を「しばらくして」と訳す(すぐに)
- 「なかなか」を「かなり」と訳す(かえって)
- 「あさまし」を「あさましい(浅ましい)」と訳す(驚きあきれる。善悪どちらにも)
- 「え〜ず」の「え」を無視する(〜できない)
- 「な〜そ」を「〜しなさい」と訳す(〜するな)
- 「いみじ」を常に「すばらしい」と訳す(文脈でひどい・恐ろしいにも)
- 「けふ」を「けう」と直す(きょう。eu → yō)
- 助詞の「は」「へ」「を」まで「わ」「え」「お」に直す(助詞はそのまま)
7. 自己チェック
- 仮名遣いの 5 規則を、例つきで言えるか
- 現代と意味が違う語 30 語を「古文の意味」で言えるか
- 心・世・いと・げに・すなはち の複数の意味を言えるか
- 呼応の副詞 10 組(え〜ず・な〜そ・よも〜じ など)を訳せるか
- いみじ・かなし・あやし の複数の意味を文脈で選べるか
- プラス語・マイナス語をそれぞれ 5 つ言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(jg-01)
関連する単元
- 前提:k-10 歴史的仮名遣いと古文の基礎(中学)
- 次に進む:jg-02 用言の活用、jg-08 古文読解の型
- ここで使う考え方が出てくる:jg-06 和歌の修辞(掛詞は多義語の応用)、jn-03 現代文の語彙
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「古典探究」(古典の言葉の理解)
- 引用した古典の一節は『枕草子』『徒然草』『古今和歌集』『源氏物語』など著作権の切れた作品から(岩波文庫・新編日本古典文学全集を参照)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jg-01/ / 更新 2026-09-13