高1 / 漢文 / jk-04
漢詩の形式(絶句・律詩・押韻・対句)と思想・故事成語・文学史
この単元でできるようになること
- 漢詩の形式(五言・七言、・古詩)と句の名前(起承転結・首聯〜尾聯)、の位置、対句のルールを言え、空欄の字を韻から選べる
- 唐詩の代表詩人(李白・杜甫・王維・白居易・孟浩然・王之渙)と代表作を言える
- (儒家・道家・法家・墨家・兵家)の思想家と主張、『論語』の重要句を説明できる
- 故事成語(五十歩百歩・矛盾・推敲・塞翁が馬・朝三暮四・守株・漱石枕流・臥薪嘗胆・四面楚歌・背水の陣など)の意味と出典を言える
- 中国文学史の大筋(詩経・楚辞 → 史記 → 唐詩 → 宋の文章)と、日本への影響(漢詩文・訓読)を説明できる
入試での位置づけ
共通テスト漢文では漢詩が出る年が多く、「形式の名前」「押韻する字を選ぶ」「対句の構造」「詩の内容の解釈」が問われます。思想・故事成語は本文の理解の前提(論語・孟子・韓非子などが出典)になり、注で説明されないことも多いので、人物と主張を押さえます。
1. 漢詩の形式
まずここだけ
| 形式 | 句数 | 1 句の字数 | 名称 |
|---|---|---|---|
| 五言絶句 | 4 句 | 5 字 | 起句・承句・転句・結句 |
| 七言絶句 | 4 句 | 7 字 | 同上 |
| 五言律詩 | 8 句 | 5 字 | 首聯(1・2 句)・頷聯(3・4)・頸聯(5・6)・尾聯(7・8) |
| 七言律詩 | 8 句 | 7 字 | 同上 |
| 古詩(古体詩) | 句数自由 | 五言・七言など | 唐以前の形式。押韻・対句の規則が緩い(『詩経』・楽府) |
| 排律 | 12 句以上 |
- 近体詩(絶句・律詩:唐代に完成、規則が厳しい)と古体詩(古詩・楽府)
- 起承転結:起句で場面を起こし、承句で受け、転句で視点・話題を転じ、結句で締める。前半が景(自然)・後半が情(心情)が多い
2. 押韻と対句
まずここだけ
押韻(韻を踏む):偶数句の末字が同じ韻(音読みの母音部分が同じ)。
| 押韻の位置 | |
|---|---|
| 五言詩 | 偶数句末(2・4 句/2・4・6・8 句) |
| 七言詩 | 第 1 句末+偶数句末(1・2・4 句/1・2・4・6・8 句) |
- 韻の判定:字の音読みで「-ou」「-an」「-ei」などが同じ → 押韻。例:暁(ギョウ)・鳥(チョウ)・少(ショウ)(-ou)、流(リュウ)・楼(ロウ)・州(シュウ)(-ou)、間(カン)・還(カン)・山(サン)(-an)
- 空欄補充:押韻の位置の空欄は、他の押韻字と韻が合う字を選ぶ。さらに対句なら対応する語の品詞、意味の流れで絞る
対句:隣り合う 2 句で語の構造(品詞・文法)と意味が対応する。
- 律詩では頷聯(3・4 句)と頸聯(5・6 句)が対句になるのが原則
- 絶句では任意(起・承が対句のことがある)
杜甫「絶句」:江碧鳥逾白、山青花欲燃(江は碧にして鳥は逾白く、山は青くして花は燃えんと欲す)→ 江/山、碧/青、鳥/花、逾白/欲燃 が対応
その他の規則:平仄(平声と仄声の配置。高校では深入りしない)、一句内の区切り(五言:2+3、七言:4+3 または 2+2+3)。
3. 唐詩の代表詩人と詩
まずここだけ
| 詩人 | 特徴 | 代表作(冒頭) |
|---|---|---|
| 李白(701〜762) | 詩仙。豪放・幻想的、酒と月、道教的 | 「静夜思」(牀前看月光)、「黄鶴楼送孟浩然之広陵」(故人西辞黄鶴楼)、「早発白帝城」、「山中与幽人対酌」 |
| 杜甫(712〜770) | 詩聖。社会派・律詩の完成者、安史の乱の苦難 | 「春望」(国破山河在)、「絶句」(江碧鳥逾白)、「登高」、「月夜」、「春夜喜雨」 |
| 王維 | 詩仏。自然詩・画家、仏教的 | 「鹿柴」(空山不見人)、「送元二使安西」(渭城朝雨浥軽塵)、「竹里館」 |
| 白居易(白楽天) | 平易な詩風、日本で最も愛読された(『白氏文集』、枕草子・源氏物語に影響) | 「長恨歌」(楊貴妃)、「琵琶行」、「香炉峰下…」(枕草子「香炉峰の雪」) |
| 孟浩然 | 自然詩 | 「春暁」(春眠不覚暁、処処聞啼鳥、夜来風雨声、花落知多少) |
| 王之渙 | 「登鸛鵲楼」(白日依山尽、黄河入海流、欲窮千里目、更上一層楼) | |
| 王翰 | 「涼州詞」(葡萄美酒夜光杯) | |
| 張継 | 「楓橋夜泊」(月落烏啼霜満天) | |
| 杜牧 | 晩唐 | 「江南春」(千里鶯啼緑映紅)、「山行」 |
| 柳宗元 | 「江雪」(千山鳥飛絶) | |
| 賈島 | 「題李凝幽居」(推敲の語源:僧推月下門 → 敲) | |
| 陶淵明(六朝) | 田園詩、「帰去来辞」「桃花源記」 | 唐以前 |
唐詩の時代区分:初唐 → 盛唐(李白・杜甫・王維・孟浩然)→ 中唐(白居易・韓愈・柳宗元)→ 晩唐(杜牧・李商隠)。『唐詩選』『三体詩』が日本で読まれた。
4. 諸子百家と『論語』
まずここだけ
| 学派 | 人物 | 主張 | 著作 |
|---|---|---|---|
| 儒家 | 孔子(春秋) | 仁・礼、徳治主義、「克己復礼」「己所不欲、勿施於人」「温故知新」「学而時習之」「巧言令色、鮮矣仁」「過猶不及」 | 『論語』(弟子が編集) |
| 孟子(戦国) | 性善説、王道政治、易姓革命、五十歩百歩、「惻隠の心」、四端 | 『孟子』 | |
| 荀子 | 性悪説、礼治 | 『荀子』 | |
| 道家 | 老子 | 無為自然・道・小国寡民・「大器晩成」「上善如水」 | 『老子』 |
| 荘子 | 万物斉同・「胡蝶の夢」「朝三暮四」「井の中の蛙」 | 『荘子』 | |
| 法家 | 韓非子・商鞅・李斯 | 法と刑罰による統治、守株・矛盾(韓非子の寓話)→ 秦の始皇帝が採用 | 『韓非子』 |
| 墨家 | 墨子 | 兼愛(無差別の愛)・非攻 | 『墨子』 |
| 兵家 | 孫子 | 「彼を知り己を知れば百戦殆からず」「風林火山」 | 『孫子』 |
| 縦横家 | 蘇秦(合従)・張儀(連衡) | 外交術 | 『戦国策』 |
| 名家・陰陽家・農家 |
『論語』の重要句:「吾十有五にして学に志す、三十にして立つ、四十にして惑はず、五十にして天命を知る、六十にして耳順ふ、七十にして心の欲する所に従へども矩を踰えず」(志学・而立・不惑・知命・耳順・従心)、「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや」、「故きを温めて新しきを知る」、「朋有り遠方より来たる、亦楽しからずや」、「知之為知之、不知為不知、是知也」、「三人行けば必ず我が師有り」、「義を見て為ざるは勇無きなり」。
5. 故事成語
まずここだけ
| 故事成語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 五十歩百歩 | 大差がない | 『孟子』(戦場で五十歩逃げた者が百歩逃げた者を笑う) |
| 矛盾 | 前後がつじつまが合わない | 『韓非子』(どんな盾も突き通す矛とどんな矛も防ぐ盾) |
| 守株(株を守る) | 古い習慣にこだわる | 『韓非子』(切り株にぶつかった兎を待つ) |
| 推敲 | 文章を練り直す | 賈島の詩「僧推月下門」の「推」を「敲」に変えた(韓愈の助言) |
| 塞翁が馬(人間万事塞翁が馬) | 幸不幸は予測できない | 『淮南子』 |
| 朝三暮四 | 目先の違いにだまされる/ごまかす | 『荘子』『列子』(猿に栃の実を朝 3 つ暮れ 4 つ) |
| 漱石枕流 | 負け惜しみの強いこと | 『世説新語』(夏目漱石の号) |
| 臥薪嘗胆 | 復讐のために苦労を重ねる | 『史記』(呉王夫差と越王勾践) |
| 四面楚歌 | 周りが敵ばかり | 『史記』(項羽の最期) |
| 背水の陣 | 退路を断って全力で | 『史記』(韓信) |
| 蛇足 | 余計なもの | 『戦国策』 |
| 漁夫の利 | 争いにつけこんで第三者が利益 | 『戦国策』(鴫と蛤) |
| 虎の威を借る狐 | 強者の力を借りて威張る | 『戦国策』 |
| 温故知新 | 古いことを学んで新しい知見を得る | 『論語』 |
| 過猶不及(過ぎたるは猶及ばざるがごとし) | やり過ぎは足りないのと同じ | 『論語』 |
| 杞憂 | 無用の心配 | 『列子』(杞の国の人が天が落ちると心配) |
| 助長 | 余計な手助けで悪くする | 『孟子』(苗を引っ張る) |
| 大器晩成 | 大人物は遅れて成る | 『老子』 |
| 胡蝶の夢 | 現実と夢の区別がつかない | 『荘子』 |
| 画竜点睛 | 最後の仕上げ | 『歴代名画記』 |
| 覆水盆に返らず | 取り返しがつかない | 『拾遺記』(太公望) |
| 完璧 | 欠点がない(璧を完うす) | 『史記』(藺相如) |
| 管鮑の交わり | 変わらぬ友情 | 『史記』(管仲と鮑叔) |
| 先従隗始(先ず隗より始めよ) | 手近なことから/言い出した者から | 『戦国策』 |
| 鶏口牛後 | 大きな組織の末端より小さな組織の長 | 『史記』 |
| 呉越同舟 | 敵どうしが同じ場所に | 『孫子』 |
| 出藍の誉れ | 弟子が師を超える | 『荀子』(青出於藍) |
| 苛政猛於虎 | 過酷な政治は虎より恐ろしい | 『礼記』 |
| 燕雀安知鴻鵠之志 | 小人物には大人物の志がわからない | 『史記』 |
6. 中国文学史の大筋と日本への影響
ここまでできれば十分
| 時代 | 作品・人物 |
|---|---|
| 春秋・戦国 | 『詩経』(最古の詩集)、『楚辞』(屈原)、『論語』『孟子』『老子』『荘子』『韓非子』『孫子』『春秋左氏伝』 |
| 漢 | 司馬遷『史記』(紀伝体の歴史書の祖。項羽と劉邦・鴻門の会・四面楚歌)、『漢書』、楽府 |
| 六朝 | 陶淵明(帰去来辞・桃花源記)、『文選』、『世説新語』 |
| 唐 | 唐詩(李白・杜甫・王維・白居易)、韓愈・柳宗元(古文復興)、伝奇小説 |
| 宋 | 蘇軾(蘇東坡)(赤壁賦・「春夜」)、欧陽脩、朱子(朱子学)、『十八史略』(日本で歴史の教科書に) |
| 元・明・清 | 『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『紅楼夢』(四大奇書)、『聊斎志異』 |
日本への影響:漢字と訓読(送り仮名・返り点は日本独自の読解法)、『懐風藻』『凌雲集』(漢詩集)、菅原道真・空海の漢詩文、『和漢朗詠集』、白氏文集と枕草子・源氏物語、五山文学、江戸の儒学(朱子学:林羅山、陽明学:中江藤樹、古学:伊藤仁斎・荻生徂徠)と漢詩(頼山陽・菅茶山)、明治の漢詩(夏目漱石・森鷗外・正岡子規)。
7. 漢詩の読解の手順
まずここだけ
- 形式を確認(句数・字数 → 絶句/律詩、五言/七言)
- 押韻の字に印(五言 = 偶数句末、七言 = 1 句末+偶数句末)→ 空欄補充は韻で絞る
- 対句を探す(律詩の 3・4 句、5・6 句)→ 対応する語から意味を推測
- 起承転結で景 → 情の流れをつかむ。転句で何が変わるか
- 題(「送〜」= 送別、「登〜」= 登高、「夜泊」= 旅、「春望」= 戦乱)と作者の境遇(杜甫 = 安史の乱・流浪、李白 = 放浪・酒、王維 = 隠遁)から心情を推測
- 定番の詩語:月(故郷・友を思う)、雁・鴻(手紙・旅)、柳(別れ:折柳)、酒(別れ・憂い)、白髪(老い・憂い)、故人(旧友。死んだ人ではない)、客(旅人)、楼(高殿)、烟(もや)、孤(一つの)、尽(見えなくなる)
8. よくある間違い
- 絶句を 8 句、律詩を 4 句とする(絶句 4 句、律詩 8 句)
- 五言詩で第 1 句も押韻するとする(五言は偶数句末のみ。七言は 1 句末も)
- 律詩の対句を「首聯・尾聯」とする(頷聯・頸聯)
- 押韻を「訓読みの音」で判定する(音読みの母音部分)
- 「故人」を「死んだ人」と訳す(旧友)
- 「客」を「客人」と訳す(旅人・他郷にいる自分)
- 李白を詩聖、杜甫を詩仙とする(李白 = 詩仙、杜甫 = 詩聖)
- 「春暁」を李白、「静夜思」を孟浩然とする(春暁 = 孟浩然、静夜思 = 李白)
- 『論語』を孔子が書いたとする(弟子たちの編集)
- 性善説を荀子、性悪説を孟子とする(逆)
- 法家を「法律を守ることを説いた道徳思想」とする(法と刑罰による統治術。秦が採用)
- 「矛盾」「守株」の出典を『論語』とする(『韓非子』)
- 「五十歩百歩」の出典を『荘子』とする(『孟子』)
- 「推敲」を杜甫の故事とする(賈島と韓愈)
- 『史記』を編年体とする(紀伝体。編年体は『春秋』『資治通鑑』)
9. 自己チェック
- 絶句・律詩の句数と句の名前、五言・七言の押韻の位置を言えるか
- 対句の位置(頷聯・頸聯)とルールを言えるか
- 李白・杜甫・王維・白居易・孟浩然・王之渙 の特徴と代表作を言えるか
- 儒家・道家・法家・墨家・兵家の人物と主張、『論語』の重要句 5 つを言えるか
- 故事成語 20 の意味と出典を言えるか
- 詩経 → 史記 → 唐詩 → 宋 の流れと、日本への影響を言えるか
10. 小テストへ
→ 小テスト(jk-04)
関連する単元
- 前提:jk-01〜03 漢文の訓読と句形、k-11 漢文の基礎(中学)
- 次に進む:jn-01 評論の読み方(現代文へ)
- ここで使う考え方が出てくる:kk-01 先哲の思想(孔子・孟子・老子)、jg-06 和歌の修辞(対句・押韻との比較)、jg-07 日本文学史(白氏文集の影響)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「古典探究」(漢文・漢詩)
- 『唐詩選』『論語』『孟子』『韓非子』『史記』『戦国策』ほか著作権の切れた漢籍(岩波文庫・新釈漢文大系を参照)。引用は短い一節のみ
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jk-04/ / 更新 2026-09-13