高1 / 漢文 / jk-03
句形②(比較・限定・累加・仮定・抑揚・詠嘆)と重要語
この単元でできるようになること
- 比較・選択(A 不如 B・莫如・於・最も〜・与其 A 寧 B・孰与)を読み、訳せる
- 限定(唯・惟・独・只・但・徒〜のみ、耳・已・爾)と累加(不唯 A 而 B・非独・豈唯〜のみならんや)を読める
- 仮定(若・如・苟・雖・縦・微)と抑揚(A 且 B、況 C 乎)を読み、訳せる
- 詠嘆(嗚呼・嗟乎・〜哉・豈不〜哉・何〜也)と願望(願・請・庶幾・欲)を読める
- 重要語(蓋し・夫れ・凡そ・故に・是以・然れども・則ち・乃ち・即ち・所以・所謂・者・矣・耳、多義語「与・為・以・如・其・之・而・則」)を読める
入試での位置づけ
句形①(否定・疑問・反語・使役・受身)に続く残りの句形。「A 不如 B(A は B に及ばない)」「与其 A 寧 B(A よりむしろ B)」「抑揚(A ですら B、ましてや C)」「限定の『のみ』」は選択肢の解釈で頻出。重要語の「則」「以」「与」「為」の読み分けは空欄補充・書き下しで問われます。
1. 比較・選択
まずここだけ
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| A 不如 B・A 不若 B | A は B に如かず(若かず) | A は B に及ばない(B のほうがよい) |
| 莫如 A・莫若 A | A に如くは莫し | A に及ぶものはない(A が最上) |
| A 於 B(形容詞+於) | A は B より〜 | A は B より〜だ(苛政猛於虎) |
| A 孰与 B・A 孰若 B | A は B に孰与れぞ | A と B ではどちらが〜か(比較の疑問。B のほうがよいという含み) |
| 与其 A 寧 B・与其 A 不如 B | 其の A よりは寧ろ B(せよ) | A するよりはむしろ B のほうがよい(選択) |
| 寧 A 無 B | 寧ろ A するも B する無かれ | むしろ A しても B はするな |
| 最・至・極 | 最も・至りて・極めて | 最上級 |
| 如・若・猶・由 | 〜のごとし | 〜のようだ(比況) |
「百聞不如一見」→ 百聞は一見に如かず(百回聞くより一度見るほうがよい) 「与其生而無義、固不如烹」→ 其の生きて義無きよりは、固より烹らるるに如かず
2. 限定・累加
まずここだけ
限定:
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 唯・惟・只・但・徒・特・独 〜(耳) | ただ〜(のみ) | ただ〜だけ |
| 〜耳・已・爾・而已・而已矣 | 〜のみ | 〜だけだ(文末) |
| 独 〜 | ひとり〜(のみ) | 〜だけ(「独〜んや」は反語:jk-02) |
「直不百歩耳」→ 直だ百歩ならざるのみ(ただ百歩でないだけだ)
累加(「〜だけでなく、さらに〜」):
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 不唯 A、(而)B/不独 A/不特 A/不徒 A | 唯だに A のみならず、B | A だけでなく B も |
| 非唯 A、(亦)B/非独 A | 唯だに A のみに非ず、亦 B | A だけでなく B も |
| 豈唯 A(ん)や | 豈に唯だに A のみならんや | どうして A だけであろうか(いや B も) |
- 読みのポイント:「のみならず」「のみに非ず」と「のみ」を補う。「唯だに」と読む(「唯だ」ではない)
3. 仮定
まずここだけ
| 字 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 若・如 | もし〜ば | もし〜ならば |
| 苟 | いやしくも〜ば | もしも〜ならば・仮にも |
| 雖 | 〜(と)いへども | 〜であっても・〜だけれども(逆接仮定・確定) |
| 縦・縦令・縦使 | たとひ〜とも | たとえ〜でも |
| 微 | 〜なかりせば | 〜がなかったら(反実仮想) |
| 使・令(文頭) | もし〜しめば | もし〜させたら |
| 則 | 〜ば則ち | 〜ならばそのときは(条件の結果) |
| 不然・否則 | しからずんば | そうでなければ |
- 仮定の「ば」は未然形+ば(古文と同じ):「若し〜せば」「苟も〜せば」
「微管仲、吾其被髪左衽矣」→ 管仲微かりせば、吾其れ被髪左衽せん(管仲がいなかったら、私たちは髪を振り乱し左前の衣を着ていただろう = 異民族のようになっていただろう) 「学而不思則罔」→ 学びて思はざれば則ち罔し
4. 抑揚
まずここだけ
抑揚 = 程度の低いものを抑えて(A すら B だ)、高いものを揚げる(ましてや C はなおさらだ)。
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| A 且 B、況 C 乎 | A すら且つ B、況んや C をや | A でさえ B だ、ましてや C はなおさらだ |
| A 猶 B、況 C 乎 | A すら猶 B、況んや C をや | 同上 |
| A 尚 B、安 C | A すら尚 B、安くんぞ C(んや) | |
| 況 C 乎(単独) | 況んや C をや | ましてや C は言うまでもない |
「死馬且買之、況生者乎」→ 死馬すら且つ之を買ふ、況んや生ける者をや(死んだ馬でさえ買う、ましてや生きた馬はなおさらだ)
- 「況んや〜をや」の「をや」を必ず補う。「且つ」「猶」の前の A に「すら」を補う
5. 詠嘆・願望
ここまでできれば十分
詠嘆:
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 嗚呼・嗟乎・噫・嗟夫 | ああ | ああ(感嘆詞) |
| 〜哉・〜夫・〜也・〜矣・〜乎(文末) | 〜かな・〜や | 〜だなあ |
| 豈不 A 哉 | 豈に A ならずや | なんと A ではないか(反語的詠嘆) |
| 不亦 A 乎 | 亦 A ならずや | なんとも A ではないか |
| 何(其) A 也 | 何ぞ(其れ)A なるや | なんと A なことか |
| A 哉、B(倒置) | A なるかな、B | B は A だなあ(述語が前に出る) |
「賢哉回也」→ 賢なるかな、回や(賢いなあ、回は:倒置)
願望:
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 願 V | 願はくは V(せん/せよ) | どうか V したい/V してください |
| 請 V | 請ふ V(せん/せよ) | どうか V させてください/V してください |
| 庶幾・冀・幸 | こひねがはくは | どうか〜 |
| 欲 V | V せんと欲す | V したいと思う |
| 欲 A V | A の V せんことを欲す | A が V することを望む |
6. 重要語
まずここだけ
接続・文頭の語:
| 字 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 蓋 | けだし | 思うに・そもそも(推測) |
| 夫(文頭) | それ | そもそも(文末「かな」は詠嘆) |
| 凡 | およそ | 一般に |
| 故 | ゆゑに | だから |
| 是以・是故・以故 | ここをもつて・このゆゑに | だから |
| 然 | しかり・しかるに・しかれども | そうだ・しかし |
| 然則 | しからばすなはち | それならば |
| 則 | すなはち | 〜ならば(条件)・〜は(提示) |
| 乃 | すなはち | そこで・なんと(意外) |
| 即 | すなはち | すぐに・とりもなおさず |
| 便 | すなはち | すぐに |
| 遂・竟・終・卒 | ついに | ついに・結局 |
| 所以 | ゆゑん | 理由・手段 |
| 所謂 | いはゆる | 世にいう |
| 且 | かつ(さらに)/まさに〜んとす(再読)/すら且つ(抑揚) | |
| 尚 | なほ | それでもまだ |
| 固 | もとより | もともと |
| 方 | まさに | ちょうど今 |
| 甞・嘗 | かつて | 以前 |
| 毎 | つねに・〜ごとに | |
| 忽 | たちまち | |
| 俄・俄而 | にはかに | |
| 会 | たまたま | ちょうどその時 |
| 幾 | ほとんど | |
| 既 | すでに | |
| 須 | しばらく(須く:再読) | |
| 少・頃 | しばらく |
多義語:
| 字 | 読みと意味 |
|---|---|
| 与 | と(〜と)/あたふ(与える)/あづかる(関与する)/か・や(文末の疑問)/ともに/与其〜寧〜(よりは) |
| 為 | なす(する)/なる/たり(〜である)/ため(〜のために)/つくる/為〜所〜(受身) |
| 以 | もつて(〜で・〜によって)/以 A 為 B(A を B とする)/以為(おもへらく:思うことには)/ゆゑに(理由)/ひきゐる |
| 如 | ごとし(〜のようだ)/もし(仮定)/しく(及ぶ)/ゆく(行く)/如何(いかん) |
| 其 | その/それ(強調)/其れ〜ん(か)(推量・反語)/其れ〜(せよ)(命令・願望) |
| 之 | の(連体修飾)/これ(代名詞)/ゆく(行く)/主格の「の」 |
| 而 | て・して(順接)/ども・も(逆接)/なんぢ(汝:二人称)/しかして(文頭) |
| 自・従・由 | より(〜から)/みづから(自分で)/おのづから(自然に)/よる |
| 見 | みる/る・らる(受身)/あらはる(現れる) |
| 相 | あひ(互いに・一方的に)/しょう(大臣)/みる |
| 者 | もの(人・こと)/は(提示)/〜者、〜(〜というのは) |
| 安 | いづくにか/いづくんぞ/やすし(安らかだ)/いづくに〜(か) |
7. よくある間違い
- 「A 不如 B」を「A は B のようではない」とする(A は B に及ばない)
- 「与其 A 寧 B」を「A と B」とする(A よりむしろ B)
- 限定の「唯」を読んで文末の「のみ」を補わない
- 累加「不唯 A」を「ただ A ではない」と否定で訳す(A だけでなく)
- 「雖」を「もし」とする(〜といえども:逆接)
- 「微」を「かすか」とする(〜なかりせば:反実仮想)
- 抑揚で「すら」「況んや〜をや」を補わない
- 「嗚呼」を「なるかな」と読む(ああ)
- 「蓋し」を「ふた」、「夫れ」を「おっと」と読む(けだし・それ)
- 「則」を常に「すなはち」で終わらせ、条件「〜ば則ち」を見落とす
- 「以為」を「以て為す」と読む(おもへらく:〜と思う)
- 「与」を常に「と」と読む(文末は「か・や」、動詞は「あたふ」)
8. 自己チェック
- 不如・莫如・孰与・与其〜寧〜 を読み、訳せるか
- 限定(唯〜のみ・耳)と累加(不唯〜のみならず)を読めるか
- 若・苟・雖・縦・微 の読みと意味を言えるか
- 抑揚「A すら且つ B、況んや C をや」を読み、訳せるか
- 詠嘆(嗚呼・〜かな・倒置)と願望(願はくは・請ふ)を読めるか
- 蓋し・夫れ・是以・則・乃・所以・所謂・以為 を読めるか
- 与・為・以・如・其・之・而 の多義を言えるか
9. 小テストへ
→ 小テスト(jk-03)
関連する単元
- 前提:jk-01 返り点・書き下し文、jk-02 句形①
- 次に進む:jk-04 漢詩・思想・故事成語
- ここで使う考え方が出てくる:jg-03 古文の仮定(未然形+ば)・反実仮想、kk-01 先哲の思想(論語の句形)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「古典探究」
- 『漢書』「百聞不如一見」、『論語』「微管仲」「学而不思則罔」「賢哉回也」、『戦国策』「死馬且買之」、『孟子』「直不百歩耳」ほか著作権の切れた漢籍の一節
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jk-03/ / 更新 2026-09-13