高1 / 漢文 / jk-02
句形①(否定・疑問・反語・使役・受身)
この単元でできるようになること
- 否定の句形(不・無・非・莫・勿、部分否定と全部否定、二重否定)を読み、訳し分けられる
- 疑問(何・誰・安・何如/如何・乎)と(豈〜んや・安くんぞ〜んや・〜んや)を、文末の「ん(や)」で見分けて訳せる
- 使役(使・令・教・遣+A+V = A をして V しむ、文脈による使役)を読める
- 受身(見・被+V = V せらる、為 A 所 V、V 於 A)を読める
- 句形を書き下し文と訳の両方で使い、空欄補充・解釈の問題に対応できる
入試での位置づけ
漢文の設問の中心は句形。「部分否定と全部否定(不常 vs 常不)」「反語の訳(〜だろうか、いや〜ない)」「使役の『使〜しむ』」「受身の『為〜所〜』」は毎年どこかで問われます。句形 → 読み → 訳を 1 セットで暗記し、本文中で形を見つけられるようにします。
1. 否定
まずここだけ
| 字 | 読み | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| 不・弗 | 〜ず | 〜ない(動作・状態の否定) | 不レ知(知らず) |
| 無・莫・勿 | なし | 〜がない(存在の否定) | 無レ人(人無し) |
| 非・匪 | 〜にあらず | 〜ではない(断定の否定) | 非二君子一(君子にあらず) |
| 勿・莫・無・毋(文頭) | 〜(する)なかれ | 禁止:〜するな | 勿レ言(言ふ勿かれ)、己所不欲、勿施於人 |
| 未 | いまだ〜ず | まだ〜ない(再読) |
部分否定と全部否定(最重要):
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 不+副詞(不常・不必・不復・不倶・不甚・不尽) | 常には〜ず・必ずしも〜ず・復た〜ず | 部分否定:いつも〜とは限らない・必ず〜とは限らない・二度とは〜ない |
| 副詞+不(常不・必不・復不) | 常に〜ず・必ず〜ず・復た〜ず | 全部否定:いつも〜ない・必ず〜ない |
「不常有」→ 常には有らず(いつもあるわけではない)/「常不有」→ 常に有らず(いつもない) 「不復帰」→ 復た帰らず(二度とは帰らない)/「復不帰」→ 復た帰らず(また帰らなかった)※読みは同じ、送り仮名で区別されることもある
二重否定 = 強い肯定:
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 無不 | 〜(せ)ざる(は)なし | 〜しないものはない = すべて〜する |
| 無非 | 〜にあらざる(は)なし | 〜でないものはない |
| 非不 | 〜(せ)ざるにあらず | 〜しないのではない |
| 不可不 | 〜(せ)ざるべからず | 〜しなければならない |
| 不敢不 | 敢へて〜ずんばあらず | 〜せざるをえない |
| 不得不 | 〜(せ)ざるを得ず | 〜しないわけにはいかない |
| 未嘗不 | 未だ嘗て〜ずんばあらず | 〜しなかったことはない |
| 不敢(敢へて〜ず)= 決して〜しない/敢不(敢へて〜ざらんや)= どうして〜しないことがあろうか(反語)。 |
2. 疑問
まずここだけ
疑問詞(文頭・動詞の前)+文末「〜(や/か)」。文末が連体形+「か」または終止形+「や」。
| 字 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 何 | なに・なんぞ・なんの・いづれ | 何(何を・どうして・何の・どれ) |
| 何為 | なんすれぞ | どうして |
| 何以 | なにをもつて | どうして・何によって |
| 誰・孰 | たれ・いづれ | 誰・どちら |
| 安・焉・寧・悪 | いづくにか(場所)・いづくんぞ(理由:反語が多い) | どこに・どうして |
| 何如・何若・奈何 | いかん(文末) | どうであるか(状態・評価) |
| 如何・若何・奈何 | いかん(せん) | どうすればよいか・どうして(手段・方法。目的語をはさむ「如〜何」:如二之何一 = 之を如何せん) |
| 幾何・幾許 | いくばく | どれほど |
| 乎・哉・也・邪・耶・与(文末) | 〜か・〜や | 〜か |
「子ハ何ヲカ好ム」→ 子は何をか好む(あなたは何を好むか)
3. 反語
まずここだけ
反語 = 疑問の形で強い否定(または肯定)を表す。訳は「〜だろうか、いや〜ない」。 見分け方:文末が「〜ん(や)」(推量「む」の連体形・終止形)なら反語、「〜(や/か)」に「ん」がなければ疑問。
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 豈〜(ん)や | あに〜(ん)や | どうして〜か、いや〜ない(最頻出)。「豈〜ざらんや」= どうして〜しないことがあろうか(= 必ず〜する) |
| 安〜(ん)や | いづくんぞ〜(ん)や | どうして〜か、いや〜ない |
| 何〜(ん)や | なんぞ〜(ん)や | どうして〜か、いや〜ない |
| 誰〜(ん)や | たれか〜(ん)や | 誰が〜か、いや誰も〜ない |
| 寧〜(ん)や | いづくんぞ〜(ん)や | |
| 敢不〜(ん)や | あへて〜ざらんや | どうして〜しないことがあろうか |
| 独〜(ん)や | ひとり〜(ん)や | ただ〜だけだろうか、いやそうではない |
| 不亦〜乎 | また〜ずや | なんとも〜ではないか(詠嘆的な反語) |
| 〜乎/〜(ん)や | 文末だけで反語になることも |
「燕雀安知鴻鵠之志哉」→ 燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや(小鳥にどうして大鳥の志がわかろうか、いやわからない)
4. 使役
まずここだけ
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 使・令・教・遣 A V | A をして V(未然形)しむ | A に V させる |
| 命 A V・説 A V | A に命じて V(せ)しむ | 命じて〜させる |
| 文脈による使役 | 使役の字がなくても「〜しむ」と読む | 召二医一(医を召して〔診せ〕しむ) |
- 「使」は「つかふ」(動詞)「つかひ」(使者)とも読む。下に「A+V」の形があれば使役
- 「令」は「れい」(命令)とも。「遣」は「やる・つかはす」(派遣)とも
「天帝使我長百獣」→ 天帝我をして百獣に長たらしむ(天帝は私に百獣の長をさせた)
5. 受身
まずここだけ
| 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 見 V・被 V | V(せ)らる・V(せ)る | V される |
| 為 A 所 V | A の V する所と為る | A に V される(最重要) |
| V 於(于・乎)A | A に V(せ)らる | A に V される |
| 文脈による受身 | 目的語がなく「〜らる」と読む | 殺サル(殺される) |
- 「見」は「みる」(動詞)とも。下に動詞が続くなら受身
- 「為」は多義:なす(する)・なる(なる)・たり(〜である)・ため(〜のために)・つくる。「為 A 所 V」の形では受身
「労力者治於人」→ 労力者は人に治めらる
6. 句形の識別の手順
まずここだけ
- 文頭・文中の句形の字(不・無・非・何・安・豈・使・見・為〜所)に印
- 文末を見る:「ん(や)」→ 反語、「や/か」→ 疑問、「なかれ」→ 禁止、「〜ずんばあらず」→ 二重否定
- 副詞と否定の順:不+副詞 → 部分否定、副詞+不 → 全部否定
- 使役・受身は「誰が誰に」を補う(A をして V しむ:A が動作主。A の V する所と為る:A が動作主で主語は受け手)
- 訳すときは句形の型どおりに(反語は「〜か、いや〜ない」まで)
7. よくある間違い
- 「不」と「非」を同じに訳す(不 = 〜しない、非 = 〜ではない)
- 部分否定「不常」を「常に〜ない」と訳す(いつも〜とは限らない)
- 二重否定「無不」を否定で訳す(すべて〜する)
- 「不可不」を「〜してはいけない」とする(〜しなければならない)
- 反語を疑問で訳し切る(「〜か」で止めず「いや〜ない」まで)
- 「豈」を疑問とする(ほぼ反語)
- 文末の「ん」を見落として疑問と反語を区別しない
- 「何如」(いかん:どうであるか)と「如何」(いかんせん:どうすればよいか)を混同する
- 「使」を常に「つかふ」と読む(下に A+V があれば使役「しむ」)
- 「為 A 所 V」を「A のために V する」と訳す(A に V される)
- 「見」を常に「見る」と読む(下に動詞があれば受身「らる」)
- 「勿」を否定「〜ない」とする(禁止「〜するな」)
8. 自己チェック
- 不・無・非・勿 の読みと意味の違いを言えるか
- 部分否定と全部否定を「不常」「常不」で説明できるか
- 二重否定 5 つ(無不・非不・不可不・不敢不・不得不)を読めるか
- 疑問詞 8 つの読みと、何如/如何の違いを言えるか
- 反語の型(豈・安・誰・敢不・不亦〜乎)と見分け方(文末の「ん」)を言えるか
- 使役「使 A V」と受身「見 V・為 A 所 V・V 於 A」を読めるか
9. 小テストへ
→ 小テスト(jk-02)
関連する単元
- 前提:jk-01 返り点・書き下し文
- 次に進む:jk-03 句形②(比較・限定・累加・仮定・抑揚・詠嘆)
- ここで使う考え方が出てくる:jk-04 漢詩・思想(論語の句形)、jg-03 古文の助動詞(使役・受身との対応)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「言語文化」「古典探究」
- 『史記』陳渉世家「燕雀安知鴻鵠之志哉」、『戦国策』「天帝使我長百獣」、『孟子』「労力者治於人」、『論語』「己所不欲、勿施於人」ほか著作権の切れた漢籍の一節
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/japanese/jk-02/ / 更新 2026-09-13