高1 / 生物基礎 / bb-04
遺伝情報の発現(転写・翻訳・ゲノム)
この単元でできるようになること
- (DNA → RNA → タンパク質)の流れと、転写・翻訳の場所・材料を説明できる
- DNA と RNA の違い(糖・塩基 U・1 本鎖)、mRNA・tRNA・rRNA のはたらきを言える
- コドン(塩基 3 個で 1 アミノ酸)から、塩基数とアミノ酸数を換算できる
- DNA の塩基配列から mRNA の配列、mRNA からアミノ酸配列(遺伝暗号表を使って)を導ける
- 遺伝子の発現の調節(細胞によって使う遺伝子が違う:分化、パフ、だ腺染色体)を説明できる
- タンパク質の役割(酵素・ヘモグロビン・コラーゲン・抗体・ホルモンの一部)を挙げられる
入試での位置づけ
転写・翻訳は「DNA の配列 → mRNA → アミノ酸」の変換と「塩基 3 個 = アミノ酸 1 個」の計算が共通テストの定番。遺伝暗号表は問題に与えられるので、読み方を練習しておけば得点できます。「すべての細胞は同じゲノムをもつが、はたらく遺伝子が違う(分化)」は正誤問題で繰り返し問われます。
1. セントラルドグマ ── DNA → RNA → タンパク質
まずここだけ
遺伝情報は DNA → (転写)→ RNA → (翻訳)→ タンパク質 の一方向に流れる。
| 過程 | 内容 | 場所(真核細胞) |
|---|---|---|
| 転写 | DNA の塩基配列を鋳型に mRNA を合成 | 核内 |
| 翻訳 | mRNA の塩基配列をもとにアミノ酸をつなぎタンパク質を合成 | 細胞質のリボソーム |
タンパク質:20 種類のアミノ酸がペプチド結合でつながったもの。アミノ酸の並び順(一次構造)が遺伝子で決まり、それが立体構造とはたらきを決める。
酵素・ヘモグロビン(酸素運搬)・コラーゲン(骨・皮膚)・抗体(免疫)・インスリン(ホルモン)・アクチン/ミオシン(筋肉)
2. RNA ── DNA との違い
まずここだけ
| DNA | RNA | |
|---|---|---|
| 糖 | デオキシリボース | リボース |
| 塩基 | A・T・G・C | A・U(ウラシル)・G・C |
| 鎖 | 2 本鎖(二重らせん) | 1 本鎖 |
| RNA | はたらき |
|---|---|
| mRNA(伝令 RNA) | DNA の情報を写し取り、リボソームへ運ぶ |
| tRNA(転移 RNA) | アミノ酸をリボソームへ運ぶ。アンチコドンで mRNA のコドンと対になる |
| rRNA(リボソーム RNA) | リボソームを構成する |
転写での対応:DNA の A → mRNA の U、T → A、G → C、C → G
DNA(鋳型鎖)TACGGA → mRNA AUGCCU
3. コドンと翻訳
ここまでできれば十分
- mRNA の塩基 3 個の並び(コドン)が 1 つのアミノ酸を指定 → 4³ = 64 通りで 20 種のアミノ酸(同じアミノ酸に複数のコドン)
- 開始コドン AUG(メチオニン)で翻訳開始、終止コドン UAA・UAG・UGAで終了(アミノ酸を指定しない)
- 塩基 3n 個 → アミノ酸 n 個(終止コドンは数えない)
mRNA AUG CCU GAA UAA → メチオニン・プロリン・グルタミン酸(終止):塩基 12 個、アミノ酸 3 個 アミノ酸 100 個のタンパク質を指定する mRNA の塩基は 300 個(+ 終止コドン 3 個) 遺伝暗号表(コドン表)は問題文に与えられる。左の列 → 上の行 → 右の列 の順に 1・2・3 文字目を読む
4. 遺伝子の発現と分化
ここまでできれば十分
- 多細胞生物のすべての体細胞は同じゲノムをもつ(受精卵の体細胞分裂でコピー)
- 細胞ごとにはたらく(発現する)遺伝子が違う → 形やはたらきの違う細胞になる(分化)
- すい臓の細胞:インスリンの遺伝子が発現。水晶体の細胞:クリスタリンの遺伝子が発現
- だ腺染色体(ユスリカの幼虫):巨大な染色体で、転写が盛んな部分がパフとしてふくらむ。パフの位置は発生の時期で変わる → 遺伝子発現の調節が観察できる
- 発現していない遺伝子も失われていない(クローン・iPS 細胞の根拠)
5. ゲノムと生物(補足)
- ゲノムプロジェクト:ヒトゲノムの全塩基配列は 2003 年に解読完了
- 遺伝子の数はヒト約 2 万、大腸菌約 4,000。生物の複雑さと遺伝子数は比例しない
- 個人ごとの塩基配列の違い → 医療(オーダーメイド医療)・法医学に利用
6. よくある間違い
- RNA にチミン T があると書く(U)
- 転写の場所を細胞質、翻訳を核とする(逆)
- コドンを DNA 側で考える(mRNA の 3 塩基)
- 塩基数 ÷ 3 でアミノ酸数を出すときに終止コドンを数える
- 「分化した細胞は遺伝子を失っている」と思う(同じゲノム。発現が違う)
- tRNA が情報を運ぶと思う(情報は mRNA、tRNA はアミノ酸を運ぶ)
7. 自己チェック
- 転写(核・mRNA)と翻訳(リボソーム・タンパク質)を言えるか
- DNA と RNA の 3 つの違いを言えるか
- DNA → mRNA の塩基の対応(A → U)を書けるか
- コドン = 3 塩基 = 1 アミノ酸、開始 AUG、終止 3 つを言えるか
- 「同じゲノム・違う発現 = 分化」を説明できるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(bb-04)
関連する単元
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』── 「生物基礎」(2) イ 遺伝情報とタンパク質の合成
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/science/bb-04/ / 更新 2026-09-12