高1 / 公共 / kk-04
選挙と政党・世論・メディア(選挙制度・ドント式)
この単元でできるようになること
- 選挙の 4 原則と、小選挙区制・大選挙区制・比例代表制の長所・短所(死票・多党化・二大政党)を説明できる
- 日本の衆議院(小選挙区比例代表並立制)と参議院(選挙区+非拘束名簿式比例)の制度を数字で言え、ドント式の配分を計算できる
- 選挙の課題(一票の格差・低投票率・18 歳選挙権・ネット選挙・女性議員の少なさ)と公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法を説明できる
- 政党の役割と日本の政党政治の変遷(55 年体制 → 連立時代 → 政権交代)、圧力団体・無党派層を説明できる
- 世論とマスメディア・SNSの関係(世論操作・メディアリテラシー・フィルターバブル・フェイクニュース)を説明できる
入試での位置づけ
「ドント式の計算」「小選挙区制と比例代表制の特徴の比較」「衆参の選挙制度の数字(289・176、148・100)」「一票の格差の計算」「メディアリテラシー・SNS の影響」が定番。表やグラフ(投票率の推移・年代別投票率)を読む問題が多いです。
1. 選挙の原則と選挙制度
まずここだけ
選挙の 4 原則:普通選挙(財産・性別で制限しない。男子 1925・男女 1945)・平等選挙(一人一票・一票の価値が平等)・直接選挙・秘密選挙(無記名)。(+自由選挙)
| 制度 | しくみ | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 小選挙区制 | 1 選挙区から 1 人。最多得票者が当選 | 二大政党になりやすく政権が安定、候補者と有権者が近い、選挙費用が安い | 死票が多い(過半数の票が無駄になることも)、少数意見が反映されにくい、ゲリマンダー(区割りの操作)の恐れ、得票率と議席率の差が大きい |
| 大選挙区制 | 1 区から 2 人以上(日本の旧中選挙区制は 3〜5 人) | 死票が少ない、少数党も当選 | 同じ党の候補者どうしの争い(派閥・金権政治)、多党化 |
| 比例代表制 | 政党の得票に比例して議席を配分 | 死票が少なく、多様な意見を反映、得票率 ≒ 議席率 | 小党分立(多党化)→ 連立で政権が不安定、候補者個人を選べない(拘束名簿) |
2. 日本の選挙制度
まずここだけ
| 衆議院 | 参議院 | |
|---|---|---|
| 制度 | 小選挙区比例代表並立制(1994 導入、1996 初実施) | 選挙区制+比例代表制 |
| 定数 | 465 = 小選挙区 289 + 比例 176(全国 11 ブロック) | 248 = 選挙区 148 + 比例 100(全国 1 区)。3 年ごとに半数(124) |
| 比例の名簿 | 拘束名簿式(党が順位を決める)。重複立候補可(小選挙区で落選しても惜敗率で復活当選) | 非拘束名簿式(候補者名でも党名でも投票でき、個人票の多い順に当選)+ 2019 年から特定枠(拘束) |
| 投票 | 2 票(候補者名・政党名) | 2 票(候補者名・政党名または候補者名) |
| 選挙区 | 小選挙区(1 人区) | 都道府県単位(1〜6 人区)。2016 年から合区(鳥取・島根、徳島・高知) |
| 任期・解散 | 4 年・解散あり | 6 年・解散なし |
| 被選挙権 | 25 歳 | 30 歳 |
ドント式(比例代表の議席配分):各党の得票を 1, 2, 3, … で割り、商の大きい順に定数まで議席を与える。
定数 5、A 党 1,200 票・B 党 720 票・C 党 480 票 A:1200, 600, 400, 300… / B:720, 360, 240… / C:480, 240… 大きい順:1200(A) 720(B) 600(A) 480(C) 400(A) → A 3・B 1・C 1
一票の格差:議員 1 人あたりの有権者数の差。有権者数の多い選挙区ほど一票の価値が軽い。最高裁は衆院で 2 倍超、参院で 3 倍超を問題視(違憲状態判決)→ 区割り変更・アダムズ方式(2022 年から 10 増 10 減)・合区。
A 区 有権者 40 万人・定数 1、B 区 20 万人・定数 1 → 格差 2 倍(B 区の一票は A 区の 2 倍の価値)
選挙のルール:公職選挙法(戸別訪問の禁止、文書図画の制限、連座制(運動員の買収で当選無効)、供託金、ネット選挙運動の解禁 2013(メールでの投票依頼は候補者・政党のみ)、期日前投票・不在者投票・在外投票、選挙権 18 歳(2016))、政治資金規正法(企業・団体献金は政党・政治資金団体のみ、政治資金パーティーの収入の不記載問題 2023〜)、政党助成法(1994:国民 1 人 250 円分を議席・得票に応じて政党に交付、年 約 315 億円。共産党は受け取らない)
課題:投票率の低下(衆院 2021 約 56%、2024 約 54%。若年層が低く高齢層が高い → シルバー民主主義)、無党派層の増加、女性議員の少なさ(衆院 約 16%、世界 160 位台。候補者男女均等法 2018 は努力義務)、世襲、選挙区の合区への不満、投票所の減少。対策:期日前投票・共通投票所・主権者教育。
3. 政党と政治参加
ここまでできれば十分
- 政党:政策(マニフェスト(政権公約))を掲げて政権をめざす集団。与党(政権を担う)と野党(批判・監視、シャドーキャビネット)。政党政治・政党国家
- 政党制:二大政党制(英・米)、多党制(独・伊・日本の連立)、一党制(中国)
- 日本の政党政治:55 年体制(1955〜93:自民党 1 党優位、社会党が万年野党、1 と 2 分の 1 政党制)→ 1993 年 非自民連立(細川) → 1994 自社さ連立 → 1996〜 自民中心の連立(自公 1999〜)→ 2009 民主党への政権交代 → 2012 自公政権復帰 → 2024 年の総選挙で自公が過半数割れ(少数与党)
- 政治資金と金権政治:ロッキード事件(1976)、リクルート事件(1988)→ 1994 政治改革(小選挙区制・政党助成・政治資金規正法改正)。2023〜 裏金問題 → 2024 改正
- 圧力団体(利益集団):特定の利益のために政府・政党に働きかける(経団連・日本労働組合総連合会(連合)・農協・医師会)。ロビイスト。族議員と鉄の三角形(政・官・業)
- 無党派層:支持政党なし(有権者の 4〜5 割)。選挙結果を左右
- 政治参加:選挙、住民運動・市民運動、NPO(1998 NPO 法)、請願、パブリックコメント、デモ、オンライン署名。政治的無関心(リースマン:伝統型・現代型)、主権者教育
4. 世論とメディア
ここまでできれば十分
- 世論:政治や社会の問題についての国民の意見。世論調査(サンプリング・設問による誘導に注意)。民主政治は世論にもとづく
- マスメディア(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌):情報提供・権力の監視(「第四の権力」)・議題設定(アジェンダ設定)。問題:世論操作(ナチスの宣伝)、センセーショナリズム、アナウンスメント効果(「勝ちそう」報道で投票行動が変わる:バンドワゴン効果・アンダードッグ効果)、報道の自由と放送法(政治的公平)、記者クラブ
- SNS・インターネット:誰でも発信、ネット選挙(2013)、直接の政治参加。問題:フェイクニュース、フィルターバブル(アルゴリズムで見たい情報だけ)、エコーチェンバー(同じ意見の中で増幅)、炎上、ポピュリズムとの結びつき、外国からの情報操作、ディープフェイク
- メディアリテラシー:情報を批判的に読み解き、発信元・根拠・他の報道と比べ、自分でも責任をもって発信する力。ファクトチェック
- 知る権利と情報公開(kk-02)、特定秘密保護法との緊張
5. 計算の型
まずここだけ
- ドント式:得票 ÷ 1, 2, 3… → 商の大きい順に定数まで
- 一票の格差 =(多い区の議員 1 人あたり有権者数)÷(少ない区の議員 1 人あたり有権者数)
- 惜敗率 = 落選者の得票 ÷ 当選者の得票 × 100(重複立候補の復活当選の順位)
当選者 8 万票、落選者 6 万票 → 75%
- 得票率と議席率:小選挙区では得票率 4 割台で議席の 6〜7 割を得ることがある(死票)
- 死票率 = 落選者の得票の合計 ÷ 総投票数
6. よくある間違い
- 衆議院の比例を「非拘束名簿式」とする(拘束名簿式。非拘束は参議院)
- 衆議院の比例ブロック数を 1 とする(11 ブロック。全国 1 区は参議院)
- 小選挙区制を「死票が少ない」とする(多い)
- 比例代表制を「二大政党になりやすい」とする(多党化)
- ドント式で「余りの大きい順」とする(商の大きい順。余りは別の方式)
- 一票の格差で「有権者数が多い区ほど一票の価値が重い」とする(軽い)
- 戸別訪問が認められているとする(禁止)
- ネット選挙で「メールでの投票依頼は誰でもできる」とする(候補者・政党のみ)
- 政党助成金を全政党が受け取るとする(共産党は受け取らない)
- 55 年体制を「自民党と社会党の二大政党制」とする(自民 1 党優位の 1 と 2 分の 1 政党制)
- 投票率が若年層で高いとする(若年層が低い)
7. 自己チェック
- 選挙の 4 原則と 3 つの選挙制度の長所・短所を言えるか
- 衆参の定数の内訳(289+176、148+100)・名簿方式・重複立候補を言えるか
- ドント式で配分し、一票の格差・惜敗率を計算できるか
- 公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法の要点を言えるか
- 日本の政党政治の変遷(55 年体制 → 1993 → 2009 → 2012)を言えるか
- メディアの役割と問題、SNS の問題(フィルターバブル等)、メディアリテラシーを言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(kk-04)
関連する単元
- 前提:c-04 選挙と政党(中学公民)、kk-03 国会
- 次に進む:kk-05 市場経済のしくみ
- ここで使う考え方が出てくる:ht-07 普通選挙の歴史、ht-12 情報社会、kk-02 一票の格差の判例
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 公民編』── 「公共」B (1) 政治的な主体となる私たち
- 総務省「国政選挙の投票率の推移」「選挙の種類・制度」、公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法(e-Gov)
- 列国議会同盟(IPU)「Women in Parliament」── 女性議員比率
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/social/kk-04/ / 更新 2026-09-13