高1 / 生物基礎 / bb-08
植生の多様性と遷移・バイオーム
この単元でできるようになること
- 植生(森林・草原・荒原)と相観・優占種、森林の階層構造と光の量の関係を説明できる
- 陽生植物・陰生植物の光合成曲線(光補償点・光飽和点)を読める
- 一次遷移(裸地 → 地衣類・コケ → 草原 → 低木林 → 陽樹林 → 混交林 → 陰樹林(極相))の流れと、遷移が進む理由(土壌・光)を説明できる
- 二次遷移と一次遷移の違い、ギャップ更新を説明できる
- を年平均気温と年降水量で分類し、日本の水平分布・垂直分布を言える
入試での位置づけ
遷移とバイオームは共通テストで必ずどちらかが出ると言ってよい分野です。「遷移の順序と各段階の植物」「陽樹と陰樹の光合成曲線」「気温と降水量のグラフからバイオームを判定」「日本の垂直分布(丘陵帯・山地帯・亜高山帯・高山帯)」が定番。気候 → バイオームの対応表は暗記が必要です。
1. 植生と森林の構造
まずここだけ
- 植生:ある場所に生育する植物の集まり。外から見た様子が相観、最も目立つ種が優占種
- 相観で分類:森林(降水量が多い)・草原(少ない)・荒原(極端に少ない・寒い)
森林の階層構造(上から):高木層 → 亜高木層 → 低木層 → 草本層 →(地表層:コケ)
- 光は高木層でさえぎられ、林床(森林の地面)には数 % しか届かない
- 林床には日陰に強い植物(陰生植物)が育つ
光合成曲線(光の強さ − CO₂ 吸収速度):
| 陽生植物 | 陰生植物 | |
|---|---|---|
| 光補償点(光合成 = 呼吸、見かけの光合成 0) | 高い | 低い(弱い光でも生きられる) |
| 光飽和点(それ以上明るくても光合成が増えない) | 高い | 低い |
| 最大光合成速度 | 大きい | 小さい |
| 例 | ススキ・アカマツ・コナラ | シイ・カシ・ブナ・シダ |
陽樹(明るい所でよく育つ)と陰樹(幼木が日陰でも育つ)の違いが遷移を動かす。
2. 一次遷移 ── 裸地から極相へ
まずここだけ
火山の噴火や大規模な地滑りでできた土壌のない裸地から始まる遷移。
| 段階 | 植物 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 裸地・荒原 | 地衣類・コケ植物(先駆種・パイオニア) | 乾燥・貧栄養に強い。岩を風化させ土壌をつくり始める |
| ② 草原 | ススキ・イタドリなどの草本 | 土壌ができ、保水力が増す |
| ③ 低木林 | ヤシャブシ・ウツギなど | |
| ④ 陽樹林 | アカマツ・コナラ・クヌギ | 明るい所で育つ。林床が暗くなり陽樹の幼木は育たない |
| ⑤ 混交林 | 陽樹 + 陰樹 | 林床で陰樹の幼木が育つ |
| ⑥ 陰樹林(極相) | シイ・カシ・タブノキ(暖温帯)、ブナ(冷温帯) | 安定して構成が変わらない(極相林・クライマックス) |
遷移が進む理由:先に入った植物が土壌(有機物・保水力)と光環境(林床が暗くなる)を変え、次の植物に適した環境をつくる。 数百年〜1000 年かかる。乾いた土地から始まる乾性遷移、湖沼から始まる湿性遷移(湖沼 → 湿原 → 草原 → 森林)がある。
3. 二次遷移とギャップ
ここまでできれば十分
- 二次遷移:山火事・伐採・耕作放棄のあとなど、土壌や種子・地下茎が残っている場所から始まる遷移。一次遷移より速く進む
- ギャップ:極相林で高木が倒れてできた明るい空間。陽樹が育ち、やがて陰樹に置きかわる(ギャップ更新)。極相林でも小規模な遷移がくり返され、多様性が保たれる
- 里山:人が薪などのために定期的に伐採して維持してきた雑木林(コナラ・クヌギ)。遷移の途中段階が保たれている
4. バイオーム ── 気候が決める
まずここだけ
バイオーム(生物群系):その地域の植生とそこに生きる動物を含めた生物のまとまり。年平均気温と年降水量で決まる。
| バイオーム | 気候 | 植物の例 | 地域 |
|---|---|---|---|
| 熱帯多雨林 | 高温・多雨 | フタバガキ、つる植物、着生植物。階層が多い | 東南アジア・アマゾン |
| 亜熱帯多雨林 | ガジュマル・ヘゴ・マングローブ | 沖縄 | |
| 雨緑樹林 | 熱帯・雨季と乾季 | チーク(乾季に落葉) | 東南アジアの内陸 |
| 照葉樹林 | 温帯・多雨(暖温帯) | シイ・カシ・クスノキ・タブノキ(葉が厚く光沢) | 西日本〜関東 |
| 硬葉樹林 | 温帯・夏に乾燥 | オリーブ・コルクガシ | 地中海沿岸 |
| 夏緑樹林 | 温帯(冷温帯) | ブナ・ミズナラ・カエデ(冬に落葉) | 東北・北海道南部 |
| 針葉樹林 | 亜寒帯 | エゾマツ・トドマツ・シラビソ、モミ | 北海道東部・シベリア |
| サバンナ | 熱帯・少雨 | イネ科の草原 + まばらな木 | アフリカ |
| ステップ | 温帯・少雨 | イネ科の草原 | モンゴル・北米内陸 |
| 砂漠 | 極端に少雨 | サボテン | |
| ツンドラ | 寒帯 | 地衣類・コケ類 | 北極周辺 |
グラフの読み方:横軸に気温、縦軸に降水量。降水量が多ければ森林で、気温が高い順に熱帯多雨林 → 照葉樹林 → 夏緑樹林 → 針葉樹林。降水量が減ると草原(サバンナ・ステップ)→ 砂漠。
5. 日本のバイオーム ── 水平分布と垂直分布
ここまでできれば十分
日本は降水量が十分なので、気温だけで決まる。
水平分布(緯度):
| 地域 | バイオーム |
|---|---|
| 沖縄・九州南端 | 亜熱帯多雨林 |
| 九州〜関東(西日本) | 照葉樹林 |
| 東北〜北海道南西部 | 夏緑樹林 |
| 北海道東部 | 針葉樹林 |
垂直分布(標高:100 m 上がるごとに約 0.5〜0.6 ℃ 下がる。本州中部の例):
| 帯 | 標高 | バイオーム |
|---|---|---|
| 丘陵帯 | 〜700 m | 照葉樹林 |
| 山地帯 | 700〜1,700 m | 夏緑樹林(ブナ) |
| 亜高山帯 | 1,700〜2,500 m | 針葉樹林(シラビソ・コメツガ) |
| 高山帯 | 2,500 m〜 | 高山草原(お花畑)・ハイマツ。森林限界より上 |
暖かさの指数:月平均気温 5 ℃ 以上の月について (気温 − 5) を合計。85 以上照葉樹林、45〜85 夏緑樹林、15〜45 針葉樹林。
6. よくある間違い
- 遷移の最初を草本とする(地衣類・コケ)
- 極相を陽樹林とする(陰樹林)
- 「陰樹は暗い所を好む」(暗くても幼木が育つ、というだけで明るい所でも育つ)
- 二次遷移が一次遷移より遅いと思う(土壌があるので速い)
- 照葉樹林と夏緑樹林の樹種を逆にする(シイ・カシは照葉、ブナは夏緑)
- 硬葉樹林を日本にあるとする(地中海沿岸)
- 高山帯に森林があるとする(森林限界より上)
7. 自己チェック
- 森林の階層構造と林床の光の量を言えるか
- 光補償点・光飽和点が陽生・陰生でどう違うか言えるか
- 一次遷移の 6 段階と代表植物を言えるか
- 遷移が進む理由(土壌・光)と二次遷移の特徴を言えるか
- バイオーム 11 種と気候・代表植物を言えるか
- 日本の水平分布と垂直分布(4 帯)を言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(bb-08)
関連する単元
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』── 「生物基礎」(4) ア 植生と遷移、イ 気候とバイオーム
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/science/bb-08/ / 更新 2026-09-12