高1 / 地理総合 / gt-08
地球的課題(環境・貧困・格差・SDGs)
この単元でできるようになること
- 地球環境問題(温暖化・砂漠化・熱帯林の減少・酸性雨・オゾン層・海洋プラスチック・生物多様性)の原因・場所・対策を説明できる
- 南北問題・南南問題と、貧困・格差の指標(1 人あたり GNI・HDI・ジニ係数)を読める
- 国際協力(ODA・NGO・フェアトレード・マイクロファイナンス)と(17 目標)の内容を説明できる
- 環境と開発をめぐる国際会議の流れ(ストックホルム 1972 → リオ 1992 → 京都 1997 → パリ 2015)を言える
- 問題どうしのつながり(貧困 → 人口増 → 森林破壊 → 気候変動 → 食料不足 → 貧困)を図で説明できる
入試での位置づけ
地理総合の「国際理解と国際協力」の中心。「環境問題と地域の対応(砂漠化 = サヘル、熱帯林 = アマゾン・東南アジア、酸性雨 = ヨーロッパ・中国)」「HDI・1 人あたり GNI の表から国を選ぶ」「SDGs の目標」が出ます。「共通だが差異ある責任」のような先進国と途上国の立場の違いを説明できるかがポイントです。
1. 地球環境問題
まずここだけ
| 問題 | 原因 | 主な地域 | 影響 | 対策・条約 |
|---|---|---|---|---|
| 地球温暖化 | 化石燃料の燃焼・森林破壊によるCO₂・メタンの増加 | 全球。影響は島国(ツバル・モルディブ)・北極・乾燥地に大 | 海面上昇・異常気象・サンゴの白化・農業への打撃・永久凍土融解 | 京都議定書(1997:先進国だけに削減義務)→ パリ協定(2015:全ての国が目標、2 ℃未満・1.5 ℃)、カーボンニュートラル(日本 2050)、再エネ、炭素税・排出量取引 |
| 砂漠化 | 過放牧・過耕作・薪の過剰採取(人口増)+干ばつ・気候変動 | サヘル(サハラ南縁)、中央アジア(アラル海の縮小:綿花の灌漑)、中国内陸、オーストラリア | 食料不足・難民(環境難民) | 砂漠化対処条約(1994)、植林、適切な放牧、緑の長城 |
| 熱帯林の減少 | 焼畑の短期化・商業伐採・農地(大豆・油やし・牧場)への転換・道路・鉱山 | アマゾン(ブラジル)、東南アジア(インドネシア・マレーシアの油やし)、コンゴ盆地 | CO₂ 吸収源の減少・生物多様性の損失・先住民の生活破壊・土壌流出 | 認証制度(FSC・RSPO)、保護区、REDD+ |
| 酸性雨 | 化石燃料の燃焼で出る硫黄酸化物・窒素酸化物(pH 5.6 以下) | ヨーロッパ(黒い三角地帯・北欧の湖)、北米東部、中国(→ 日本へ越境) | 森林の枯死・湖の魚の死滅・石造建築の腐食 | 脱硫装置、長距離越境大気汚染条約(1979) |
| オゾン層の破壊 | フロン | 南極上空にオゾンホール | 紫外線増加 → 皮膚がん・白内障 | モントリオール議定書(1987)で全廃 → 回復傾向 |
| 海洋汚染・プラスチック | 廃棄物・マイクロプラスチック、油、赤潮 | 太平洋ごみベルト | 生態系・食物連鎖 | 使い捨て削減、レジ袋有料化、3R |
| 生物多様性の減少 | 開発・乱獲・外来種・気候変動 | 熱帯林・サンゴ礁 | 生物多様性条約(1992)、ラムサール条約(湿地)、ワシントン条約(野生動植物の取引)、世界自然遺産 | |
| 水問題 | 人口増・灌漑・汚染 | 中東・アフリカ・インド・中国北部 | 安全な水を使えない人 約 20 億人 | 国際河川の水争い(ナイル・チグリス・メコン)、仮想水(食料輸入は水の輸入) |
| 大気汚染 | 工場・自動車・石炭 | 中国・インドの都市(PM2.5)、かつての日本(四日市) | 健康被害・越境 | 排出規制 |
環境と開発の国際会議:
- 1972 国連人間環境会議(ストックホルム)「かけがえのない地球」→ UNEP 設立
- 1992 地球サミット(リオデジャネイロ)「持続可能な開発」、気候変動枠組条約・生物多様性条約、アジェンダ 21
- 1997 京都議定書(COP3):先進国に CO₂ 削減義務。アメリカ離脱、途上国に義務なし
- 2015 パリ協定(COP21):全ての国が自主目標(NDC)を出す。1.5 ℃目標。同年 SDGs 採択
- 毎年の COP(締約国会議)で見直し
先進国と途上国の対立:「これまで CO₂ を出してきたのは先進国」vs「これから発展したい途上国」→ 共通だが差異ある責任。資金・技術の支援(緑の気候基金)。
2. 貧困・格差と指標
まずここだけ
- 南北問題:北の先進国と南の途上国の経済格差(植民地時代のモノカルチャー経済・不利な貿易条件が背景)
- 南南問題:途上国の中の格差(産油国・新興国(BRICS・NIEs)vs 後発開発途上国(LDC):サハラ以南アフリカ・南アジアの一部、約 45 か国)
- 絶対的貧困:1 日 2.15 ドル未満で生活(世界銀行、約 7 億人。サハラ以南アフリカに集中)。相対的貧困:その国の中央値の半分未満(日本の相対的貧困率 約 15%、子どもの貧困 約 11%)
- 貧困の悪循環:貧しい → 教育を受けられない・栄養不足 → 働けない → 子どもを多く産む → さらに貧しい。教育(特に女子)・保健・水で断ち切る
| 指標 | 意味 | 読み方 |
|---|---|---|
| GDP(国内総生産) | 国内で 1 年に生み出された付加価値の合計 | 総額:米・中・独・日・印 |
| GNI(国民総所得) | 国民が得た所得の合計(GDP + 海外からの所得) | 1 人あたり GNIで豊かさを比べる。世界銀行の分類:高所得(約 1.4 万ドル以上)・中所得・低所得(約 1,100 ドル未満) |
| HDI(人間開発指数) | 平均寿命・教育年数・1 人あたり GNI を合成(0〜1)。UNDP | 北欧・スイスが最高(0.95 以上)、日本 約 0.92、サハラ以南アフリカ 0.4〜0.5 |
| ジニ係数 | 所得の不平等(0 = 完全平等、1 = 1 人が独占) | 南アフリカ・ブラジル 0.5 以上(格差大)、北欧 0.25〜0.3、日本 約 0.33 |
| 乳幼児死亡率・識字率・平均寿命 | 保健・教育の水準 | 途上国で乳幼児死亡率高・識字率低 |
| エンゲル係数 | 家計の消費に占める食費の割合 | 貧しいほど高い |
新興国:BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ、2024 年にエジプト・エチオピア・イラン・UAE などが加わり拡大)、NIEs(韓国・台湾・香港・シンガポール)、ASEAN、グローバルサウス(途上国・新興国の総称。インドが主導)。
3. 国際協力と SDGs
ここまでできれば十分
- ODA(政府開発援助):2 国間(贈与・技術協力・円借款)と多国間(国際機関を通す)。日本は総額で世界 3 位前後だが GNI 比 0.4%(国際目標 0.7% に届かず。北欧は 0.7% 超)。JICA、青年海外協力隊
- NGO(非政府組織):国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレン、オックスファム。NPO
- フェアトレード(公正な価格)、マイクロファイナンス(貧しい人への少額融資。グラミン銀行(バングラデシュ・ユヌス、ノーベル平和賞))、BOP ビジネス、エシカル消費
- 人間の安全保障:国家ではなく一人ひとりの安全(貧困・病気・災害から守る)。日本が推進
- SDGs(持続可能な開発目標):2015 年採択、2030 年まで、17 目標・169 ターゲット。「誰一人取り残さない」。MDGs(2001〜2015、途上国向け)の後継で先進国も対象
- 1 貧困、2 飢餓、3 健康、4 教育、5 ジェンダー平等、6 水・衛生、7 エネルギー、8 働きがい・経済成長、9 産業・技術革新、10 不平等、11 住み続けられるまち、12 つくる責任つかう責任、13 気候変動、14 海の豊かさ、15 陸の豊かさ、16 平和と公正、17 パートナーシップ
- 持続可能な開発 =「将来の世代のニーズを損なわずに現在の世代のニーズを満たす」(1987 ブルントラント委員会)
- 経済・社会・環境の 3 側面の統合
4. 課題のつながり
ここまでできれば十分
貧困 → 子どもが多い(労働力・老後の保障)→ 人口増 → 薪・農地のため森林を切る・過放牧 → 砂漠化・CO₂ 増 → 気候変動(干ばつ・洪水)→ 食料不足・水不足 → 紛争・難民 → 貧困(循環)
- 先進国の消費(肉・油やし・木材・レアメタル・ファストファッション)が途上国の環境破壊・労働問題と結びつく(グローバルなサプライチェーン)→ 認証・エシカル消費
- 気候正義:排出が少ない途上国・島国・将来世代ほど被害を受ける不公平
- 環境難民・気候移民:海面上昇(ツバル・キリバス)、砂漠化
5. よくある間違い
- 砂漠化の原因を「気候だけ」とする(過放牧・過耕作など人間活動が主)
- 酸性雨の原因を CO₂ とする(硫黄酸化物・窒素酸化物)
- オゾン層破壊の原因を CO₂ とする(フロン)
- 京都議定書とパリ協定の違いを混同する(京都 = 先進国のみ義務、パリ = 全ての国が目標)
- HDI を「GDP だけ」の指標とする(寿命・教育・所得の合成)
- ジニ係数が大きいほど平等とする(0 が完全平等、大きいほど不平等)
- SDGs を「途上国だけの目標」とする(先進国も対象。MDGs が途上国向け)
- 南南問題を「南北問題と同じ」とする(途上国の中の格差)
6. 自己チェック
- 温暖化・砂漠化・熱帯林・酸性雨・オゾン層の原因・地域・対策を言えるか
- 京都議定書とパリ協定の違いを言えるか
- 南北問題・南南問題・LDC・絶対的貧困(2.15 ドル)を説明できるか
- 1 人あたり GNI・HDI・ジニ係数の読み方を言えるか
- ODA(日本 0.4%・目標 0.7%)・NGO・フェアトレード・マイクロファイナンスを言えるか
- SDGs(2015・2030・17 目標・誰一人取り残さない)と MDGs の違いを言えるか
7. 小テストへ
→ 小テスト(gt-08)
関連する単元
- 前提:gt-04 食料問題、gt-05 エネルギー、gt-06 人口、eb-09 地球環境
- 次に進む:gt-09 自然災害と防災
- ここで使う考え方が出てくる:kk-09 国際政治・経済、ht-12 現代の課題、bb-09 生態系
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「地理総合」B (2) 地球的課題と国際協力
- 国連開発計画(UNDP)『人間開発報告書』── HDI
- 世界銀行「Poverty and Shared Prosperity」── 国際貧困線 1 日 2.15 ドル(2017 年購買力平価)
- 外務省「ODA 白書(開発協力白書)」── 日本の ODA 実績と GNI 比
- 国連「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」(2015)── SDGs 17 目標
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/social/gt-08/ / 更新 2026-09-13