高1 / 地理総合 / gt-09
自然災害と防災(ハザードマップ・日本の災害)
この単元でできるようになること
- 日本で災害が多い自然条件(プレート境界・火山・モンスーン・急な川・軟弱な低地)を説明できる
- 主な災害(地震・津波・火山・風水害・土砂災害・雪害)のしくみと過去の事例(関東・阪神・東日本・熊本・能登、伊勢湾台風、西日本豪雨)を説明できる
- 地形と災害リスクを地形図・ハザードマップ・地理院地図から読める(gt-02 とつなげる)
- 防災・減災の考え方(自助・共助・公助、ハード・ソフト対策、警戒レベル、避難情報、タイムライン)を説明できる
- 世界の災害(ハリケーン・サイクロン・干ばつ・熱波)と気候変動との関係、途上国で被害が大きい理由を説明できる
入試での位置づけ
地理総合は「防災」を柱の 1 つにしており、共通テストでも「ハザードマップと地形図を重ねて危険な場所を選ぶ」「災害の種類と対策の対応」「自助・共助・公助の例」が出ます。eb-09(地学基礎)と重なる内容は、地理では地形と土地利用・社会の備えの側から問われます。
1. 日本で災害が多い理由
まずここだけ
| 自然条件 | 起こる災害 |
|---|---|
| 4 枚のプレート(太平洋・フィリピン海・北米・ユーラシア)の境界。世界の地震の約 1 割、活火山 111 | 地震・津波・火山噴火 |
| モンスーン・梅雨前線・台風(年 約 26 個発生、数個が上陸)。年降水量 約 1,700 mm(世界平均の約 2 倍) | 洪水・高潮・土砂災害・豪雪 |
| 急峻な山地(国土の 7 割)と短く急な川 → 雨がすぐ流れ下る | 洪水・土石流 |
| 人口の多くが沖積低地・埋立地(国土の 1 割の低地に人口の半分) | 浸水・液状化・高潮・津波 |
| 冬のシベリア高気圧と日本海 | 豪雪・雪崩 |
2. 主な災害としくみ・事例
まずここだけ
| 災害 | しくみ | 主な事例 | 備え |
|---|---|---|---|
| 海溝型地震 | プレート境界で海洋プレートが沈みこみ、ひずみが解放。M8〜9・津波をともなう・周期的 | 東日本大震災(2011・M9.0・死者行方不明 約 2.2 万・津波と原発事故)、想定される南海トラフ巨大地震(30 年以内 70〜80%)、日本海溝・千島海溝 | 津波避難(高台・津波避難タワー)、防潮堤、緊急地震速報、津波警報 |
| 内陸(直下)型地震 | 陸のプレート内の活断層がずれる。M7 前後でも都市直下なら被害大・前兆なし | 関東大震災(1923・M7.9・火災で 10 万人)、阪神・淡路大震災(1995・M7.3・建物倒壊・約 6,400 人)、熊本地震(2016・M7.3・前震と本震)、能登半島地震(2024・M7.6・隆起・孤立集落)、首都直下地震の想定 | 耐震化(1981 年新耐震基準)、家具固定、火災対策、活断層の把握 |
| 津波 | 海底の隆起・沈降で海水全体が動く。浅いと高く遅く、リアス海岸の湾奥で増幅。第 1 波が最大とは限らない | 東日本大震災(最大遡上 40 m)、チリ地震津波(1960・遠地津波が 1 日後に三陸へ) | 「揺れたらすぐ高い所へ」、津波ハザードマップ、津波避難ビル |
| 火山 | 噴石・火山灰・火砕流・溶岩流・火山泥流(ラハール)・火山ガス・山体崩壊 | 雲仙普賢岳(1991・火砕流 43 人)、御嶽山(2014・噴石 63 人)、桜島(常時)、富士山の宝永噴火(1707)の想定(火山灰で首都圏の交通・電力停止) | 噴火警戒レベル(1〜5)、火山ハザードマップ、入山規制、常時観測火山 50 |
| 洪水(外水氾濫) | 川の堤防の決壊・越水 | 西日本豪雨(2018・倉敷市真備)、令和元年東日本台風(2019・千曲川・阿武隈川)、令和 2 年 7 月豪雨(球磨川) | 堤防・ダム・遊水地・流域治水、洪水ハザードマップ(想定最大規模)、線状降水帯の予測 |
| 内水氾濫 | 排水が追いつかず市街地が浸水(都市型水害) | 東京・福岡の地下街浸水 | 雨水貯留、地下調節池(首都圏外郭放水路) |
| 高潮 | 台風の気圧低下(吸い上げ)+強風(吹き寄せ)。満潮と重なると危険。ゼロメートル地帯(東京・大阪・名古屋の低地) | 伊勢湾台風(1959・約 5,000 人・戦後最大の風水害)、室戸台風(1934) | 防潮堤・水門、高潮ハザードマップ |
| 土砂災害 | 土石流(谷を土砂が一気に)・がけ崩れ・地すべり(ゆっくり広く)。大雨・地震が引き金。深層崩壊 | 広島土砂災害(2014)、熱海(2021・盛り土)、紀伊半島(2011) | 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・特別警戒区域(レッドゾーン)、砂防ダム、前兆(湧水・異音) |
| 雪害 | 豪雪・雪崩・屋根の雪下ろし事故・交通まひ | 北陸・東北の日本海側。2021 年関越道の立ち往生 | 除雪体制、雪崩防止柵 |
| 猛暑・干ばつ・竜巻 | 熱中症、水不足、積乱雲の渦 | 2018・2023 年の記録的猛暑 | 熱中症警戒アラート |
3. 地形と災害リスクの読み取り
まずここだけ
ハザードマップ:災害の種類ごと(洪水・内水・高潮・津波・土砂・火山)に被害の想定範囲・避難場所・避難経路を示す。国土交通省「ハザードマップポータルサイト」で重ねて見られる。
| 地形 | 読み取りのサイン | 主なリスク |
|---|---|---|
| 後背湿地・旧河道 | 等高線がほとんどない、水田、「沼・池・川・島」のつく地名、旧版地図で川 | 浸水・液状化・揺れの増幅 |
| 三角州・ゼロメートル地帯 | 河口、標高 0〜数 m | 浸水・高潮・津波・地盤沈下 |
| 埋立地・干拓地 | 直線的な海岸線・区画、「〜新田」 | 液状化・高潮 |
| 扇状地の扇央 | 等高線が扇形、果樹園、水無川 | 土石流 |
| 谷の出口・沢沿い | 等高線が山側へ食いこむ | 土石流 |
| 急斜面の下・盛り土の造成地 | 等高線が密、崖の記号 | がけ崩れ・地すべり |
| リアス海岸の湾奥 | 入り江が奥に細くなる | 津波の増幅 |
| 台地・段丘面・自然堤防 | 周囲より高い | 比較的安全(ただし崖の縁は危険) |
使える地理情報:地理院地図(自然災害伝承碑・土地条件図・治水地形分類図・旧版地形図・標高段彩)、重ねるハザードマップ、自治体の防災マップ、GIS(gt-01)。
4. 防災・減災の考え方
ここまでできれば十分
- 防災(被害を防ぐ)と減災(被害を最小にする。ゼロにはできない前提)
- 自助・共助・公助:
- 自助:自分と家族で備える(非常持ち出し袋・備蓄 3 日〜1 週間・家具固定・避難場所と経路の確認・マイ・タイムライン)
- 共助:地域で助け合う(自主防災組織・避難訓練・要配慮者(高齢者・障害者・乳幼児・外国人)の支援・消防団)。阪神・淡路で救出の約 8 割は近隣住民
- 公助:行政(自衛隊・消防・警察・避難所運営・復旧)。大災害では公助だけでは間に合わない
- ハード対策(堤防・防潮堤・耐震化・砂防ダム)とソフト対策(ハザードマップ・避難訓練・情報伝達・土地利用規制)。両方が必要。ハードは想定を超えると効かない(東日本大震災の防潮堤)
- 避難情報(警戒レベル)(2021 年改正):レベル 3 高齢者等避難、レベル 4 避難指示(全員避難。「避難勧告」は廃止)、レベル 5 緊急安全確保(すでに災害発生・命を守る行動)。気象庁の警報・特別警報・キキクル(危険度分布)
- 避難の種類:指定緊急避難場所(災害から命を守る場所・災害種別ごと)と指定避難所(滞在する施設)は別。垂直避難(建物の上階へ)、在宅避難、分散避難(親戚・ホテル)
- タイムライン防災:台風接近の 3 日前から「いつ・誰が・何をするか」を決めておく
- 災害伝承:自然災害伝承碑(2019 年に地図記号)、「津波てんでんこ」(三陸:各自ばらばらでもすぐ逃げる)、「此処より下に家を建てるな」(岩手・姉吉の碑)、釜石の出来事(防災教育で中学生が小学生を連れて避難)
- 法律・制度:災害対策基本法、建築基準法(新耐震 1981・2000 年)、土砂災害防止法、防災基本計画、国土強靱化、BCP(事業継続計画)、防災の日(9 月 1 日 = 関東大震災)
- 復興:高台移転(三陸)、災害公営住宅、コミュニティの維持、ビルド・バック・ベター(より良い復興)
5. 世界の災害と気候変動
ここまでできれば十分
- 熱帯低気圧の呼び名:台風(北西太平洋)・ハリケーン(大西洋・北東太平洋:カトリーナ 2005 ニューオーリンズ)・サイクロン(インド洋・南太平洋:バングラデシュのサイクロンで高潮被害が大)
- 途上国で被害が大きい理由:低地・デルタに人口密集、貧弱な住宅・堤防、情報伝達・避難体制の不足、貧困(同じ規模の災害でも死者は途上国で圧倒的に多い)。バングラデシュはサイクロンシェルターと早期警報で死者を激減させた
- 干ばつ(サヘル・アフリカの角・オーストラリア)、熱波(2003・2022 ヨーロッパ)、森林火災(オーストラリア 2019〜20、カナダ 2023、カリフォルニア)、洪水(パキスタン 2022・国土の 3 分の 1)
- 気候変動との関係:海面水温上昇で台風が強くなる・雨量が増える(激甚化・頻発化)。IPCC は極端現象の増加を人為的と評価。適応(堤防・早期警報・作物の変更)と緩和(CO₂ 削減)の両方
- 国際協力:仙台防災枠組(2015・国連防災世界会議)、JICA の防災支援、国際緊急援助隊
6. よくある間違い
- 海溝型地震と内陸型地震の特徴を逆にする(海溝型 = M8〜9・津波・周期的、内陸型 = 活断層・M7 前後・直下で被害大)
- 津波は「第 1 波が最大」「引き波から始まる」と思いこむ(どちらも限らない)
- 避難勧告が今もあるとする(2021 年廃止。レベル 4 は避難指示で全員避難)
- 指定緊急避難場所と指定避難所を同じものとする(命を守る場所と滞在する施設)
- 「公助があるから自助・共助は不要」とする(大災害では公助は間に合わない。阪神の救出 8 割は近隣)
- ハード対策だけで安全とする(想定外に対応できない。ソフト対策と両輪)
- 台地を危険・低地を安全とする(逆)
- ハリケーンとサイクロンを別の現象とする(どれも熱帯低気圧の地域名)
7. 自己チェック
- 日本で災害が多い自然条件を 4 つ言えるか
- 海溝型・内陸型地震の違いと事例(東日本・阪神・熊本・能登)を言えるか
- 高潮・洪水・土砂災害のしくみと事例を言えるか
- 地形図・ハザードマップから後背湿地・扇央・湾奥のリスクを読めるか
- 自助・共助・公助、ハード・ソフト、警戒レベル 3・4・5 を言えるか
- 途上国で被害が大きい理由と気候変動との関係を言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(gt-09)
関連する単元
- 前提:gt-01 地図と GIS、gt-02 地形、eb-02 地震と火山、eb-09 自然災害と地球環境
- 次に進む:ht-01 歴史総合へ、または kk-01 公共へ
- ここで使う考え方が出てくる:g-07 日本の自然(中学)、kk-03 地方自治(防災行政)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「地理総合」C (1) 自然環境と防災
- 内閣府『防災白書』、内閣府「避難情報に関するガイドライン」(2021 年改定)── 警戒レベル 3・4・5
- 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)、国土地理院「地理院地図」
- 気象庁「過去の災害」「特別警報」「キキクル」
- 地震調査研究推進本部「南海トラフ地震の長期評価」── 30 年以内 70〜80%
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/social/gt-09/ / 更新 2026-09-13