高1 / 地学基礎 / eb-09
自然災害と地球環境
この単元でできるようになること
- 日本で起こる自然災害(地震・津波・火山・気象災害)のしくみと備え(・緊急地震速報)を説明できる
- 地球温暖化のしくみ・証拠・影響と、CO₂ 濃度の変化を数値で言える
- オゾン層の破壊(フロン)、酸性雨、エルニーニョなど地球規模の環境問題を説明できる
- 過去の気候変動(氷期・間氷期、ミランコビッチ・サイクル)と現在の変化を区別できる
- 地球の水・炭素の循環と、日本の四季(気団と前線)を説明できる
入試での位置づけ
共通テスト地学基礎では「CO₂ 濃度のグラフ(季節変動と長期増加)」「温暖化の影響(海面上昇・異常気象)」「津波と高潮の違い」「液状化・土石流・火砕流」など、身近な災害と環境を図表から読む問題が出ます。数値は 280 ppm(産業革命前)→ 420 ppm(現在)、+1.1 ℃ などを押さえます。
1. 地震・火山の災害
まずここだけ
| 災害 | しくみ・特徴 | 備え |
|---|---|---|
| 地震の揺れ | 軟らかい地盤(埋立地・河口)ほど揺れが増幅。建物の倒壊 | 耐震化、緊急地震速報(P 波を検知して S 波の前に知らせる:eb-02) |
| 液状化 | 水を含んだ砂の地盤が揺れで液体のようになり、建物が傾く・マンホールが浮く。埋立地・旧河道 | 地盤改良、ハザードマップ |
| 津波 | 海底の地震で海底が隆起・沈降し、海水全体が動く。沖では速い(ジェット機並み)が低く、浅くなると遅くなり高くなる。湾の奥や V 字の湾で増幅。引き波から始まるとは限らない | すぐ高い所へ。津波警報。東日本大震災(2011、M9.0)では 最大 40 m 遡上 |
| 火砕流 | 高温(数百 ℃)のガスと火山灰・岩片が時速 100 km 以上で斜面を流れ下る。雲仙普賢岳(1991) | 立入規制、避難 |
| 火山灰 | 広範囲に降る。農業・交通・健康・航空に影響 | 火山灰予報 |
| 溶岩流 | 速度は遅い(歩いて逃げられることが多い) | |
| 噴石・火山ガス | 御嶽山(2014)は水蒸気噴火の噴石で被害 | 噴火警戒レベル |
ハザードマップ:災害が起きたときの被害が予想される範囲(浸水・土砂・津波・火山)を示した地図。自治体が公開。
高潮との違い:高潮は台風の低い気圧(吸い上げ)と強風(吹き寄せ)で海面が上がる気象現象。津波は地震。
2. 気象災害
ここまでできれば十分
- 台風:熱帯の海(水温 26〜27 ℃以上)で発生した熱帯低気圧で、最大風速 17.2 m/s 以上。中心は目(下降気流で晴れ)。進行方向の右側が風が強い(進行の速さ+風が同じ向き)。日本付近では偏西風で北東へ曲がる。強風・大雨・高潮
- 集中豪雨・線状降水帯:湿った空気が流れこみ、積乱雲が次々と同じ場所にできて数時間降り続く
- 土砂災害:土石流(谷を土砂が一気に流れる)・がけ崩れ・地すべり(広い斜面がゆっくり動く)。大雨・地震が引き金
- 洪水・内水氾濫:河川の氾濫・排水が追いつかない都市型水害
- 竜巻:発達した積乱雲の下でできる激しい渦
- 大雪:冬の季節風(eb-06)。猛暑・干ばつ・冷害(やませ:東北の太平洋側に吹く冷たい北東風)
- 熱中症:都市のヒートアイランド(アスファルト・排熱)で悪化
日本の四季と気団:
| 季節 | 気団・前線 |
|---|---|
| 冬 | シベリア気団(寒・乾)→ 西高東低、日本海側で雪・太平洋側は晴れ |
| 春・秋 | 移動性高気圧と温帯低気圧が交互に通過、天気が周期的に変わる |
| 梅雨 | オホーツク海気団(寒・湿)と小笠原気団(暖・湿)の間に梅雨前線(停滞前線) |
| 夏 | 小笠原気団(太平洋高気圧)→ 南高北低、蒸し暑い |
| 秋 | 秋雨前線、台風 |
3. 地球温暖化
まずここだけ
- しくみ:人間活動(化石燃料の燃焼・森林破壊)で温室効果ガス(CO₂・メタン・一酸化二窒素・フロン)が増え、温室効果が強まる(eb-05)
- CO₂ 濃度:産業革命前 約 280 ppm → 現在 約 420 ppm(1.5 倍)。グラフは年々増加しながら季節変動(北半球の夏に植物の光合成で減り、冬に増える:ギザギザ)
- 気温:産業革命前と比べて約 1.1〜1.2 ℃ 上昇(IPCC)。日本は 100 年で約 1.3 ℃
- 影響:
- 海面上昇(海水の熱膨張+陸の氷(氷河・氷床)の融解。20 世紀に約 20 cm。※海に浮かぶ海氷が溶けても海面はほぼ上がらない)
- 異常気象の増加(豪雨・猛暑・干ばつ・強い台風)
- 生態系の変化(サンゴの白化、生物の分布の北上)、農業への影響
- 北極の海氷減少、永久凍土の融解(メタンが出てさらに加速)
- 海洋酸性化(CO₂ が海に溶けて pH が下がる → 貝・サンゴの殻ができにくい)
- 対策:パリ協定(2015、産業革命前から 2 ℃未満・できれば 1.5 ℃)、再生可能エネルギー、省エネ、カーボンニュートラル(排出 − 吸収 = 0、日本は 2050 年目標)、森林保全
4. その他の地球環境問題
ここまでできれば十分
| 問題 | 原因 | 影響・対策 |
|---|---|---|
| オゾン層の破壊 | フロン(冷蔵庫・スプレー)が成層圏で分解されて出る塩素がオゾンを壊す | 南極上空にオゾンホール(春 9〜10 月)。紫外線増加 → 皮膚がん・生態系。モントリオール議定書(1987)でフロン規制 → 回復傾向 |
| 酸性雨 | 化石燃料の燃焼で出る硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)が雨に溶ける(pH 5.6 以下) | 森林の枯死・湖の酸性化・建物の腐食。国境を越える |
| 砂漠化 | 過放牧・過耕作・森林伐採+干ばつ | サヘル地域 |
| 熱帯林の減少 | 焼畑・農地化 | CO₂ 吸収源の減少・生物多様性の損失 |
| 大気汚染 | PM2.5、光化学スモッグ(NOx+紫外線 → オゾンなど) | 越境汚染 |
| 海洋プラスチック | 廃棄物 | マイクロプラスチック |
5. 過去の気候変動と現在
ここまでできれば十分
地球の気候は自然にも変動してきた:
- 先カンブリア時代の全球凍結、古生代末・中生代の温暖期(恐竜時代は極にも氷なし)
- 第四紀(258 万年前〜):氷期と間氷期が約 10 万年周期でくり返す。最後の氷期は約 2 万年前(海面は今より 120 m 低く、日本列島は大陸とつながった)。現在は間氷期(約 1 万年前〜)
- 原因:ミランコビッチ・サイクル(地球の公転軌道・自転軸の傾き・歳差の周期的変化で日射の分布が変わる)、火山活動、太陽活動、大陸の配置
- 証拠:氷床コア(南極の氷に閉じこめられた気泡から過去の CO₂ と気温)、海底堆積物の有孔虫、年輪、花粉
現在の温暖化の特徴:速さが異常(自然の変動は数千〜数万年、現在は 100 年で 1 ℃以上)。CO₂ 濃度は過去 80 万年で最高。人間活動が原因であることは「疑う余地がない」(IPCC 第 6 次報告書、2021)。
6. 地球の循環
ここまでできれば十分
- 水の循環:海から蒸発 → 雲 → 雨・雪 → 河川・地下水 → 海。太陽エネルギーが動かす。海の水は全体の 97%、淡水は 3%(そのうち 7 割が氷河・氷床)
- 炭素の循環:大気 CO₂ ⇄ 海(溶解)、⇄ 生物(光合成・呼吸)、→ 堆積(石灰岩・化石燃料)→ 火山・燃焼で大気へ。化石燃料の燃焼は、長い時間かけて地下に固定された炭素を急に大気に戻している
- 地球システム:大気・海洋・固体地球・生物圏が相互に影響。温暖化 → 氷が減る → 反射率(アルベド)が下がる → さらに暖まる(正のフィードバック)
7. よくある間違い
- 津波を「海面の波が大きくなったもの」とする(海水全体が動く。浅くなると高くなる)
- 高潮を地震によるものとする(台風の気圧低下と風)
- 温室効果ガスの主なものをフロンだけとする(CO₂ が最大の寄与。水蒸気は自然)
- 海氷が溶けると海面が上がるとする(浮いている氷は上がらない。陸の氷が問題)
- オゾン層破壊の原因を CO₂ とする(フロン)
- 酸性雨の原因を CO₂ とする(SOx・NOx。CO₂ で pH 5.6 になるのは「普通の雨」)
- 「温暖化は自然の変動」とする(速さと CO₂ 濃度が自然の範囲外)
- 氷期に海面が上がるとする(下がる。水が氷として陸に)
8. 自己チェック
- 液状化・津波・火砕流のしくみを言えるか
- 津波と高潮の違いを言えるか
- 台風の右側が強い理由と、日本の四季の気団を言えるか
- CO₂ 280 → 420 ppm、+1.1 ℃、海面上昇の 2 つの原因を言えるか
- オゾン層(フロン)・酸性雨(SOx・NOx)の原因を区別できるか
- 氷期・間氷期の周期と現在の温暖化の違い(速さ)を言えるか
- 炭素の循環で化石燃料がどう位置づくか説明できるか
9. 小テストへ
→ 小テスト(eb-09)
関連する単元
- 前提:eb-02 地震と火山、eb-05 熱収支、eb-06 大気と海洋、s2-09 気象(中学)
- 次に進む:bb-09 生態系とその保全(同じ環境問題を生物から)
- ここで使う考え方が出てくる:cb-10 酸と塩基(pH)、g-07 日本の自然災害(中学地理)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』── 「地学基礎」(3) ウ 地球の環境(地球環境の科学・日本の自然環境)
- 気象庁「気候変動監視レポート」「二酸化炭素濃度の経年変化」(https://www.data.jma.go.jp/ghg/)
- IPCC 第 6 次評価報告書(AR6)第 1 作業部会報告書 政策決定者向け要約(2021)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/science/eb-09/ / 更新 2026-09-12