高1 / 公共 / kk-07
国民所得と経済成長・景気・物価
この単元でできるようになること
- ・GNI・NI の関係(三面等価)と、フローとストック(国富)の違いを説明・計算できる
- 名目と実質の成長率、GDP デフレーター、1 人あたり GDP を計算し、GDP の限界(家事・環境・格差を反映しない)を説明できる
- 景気循環の 4 局面と周期(キチン・ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフ)、日本の景気の歴史(高度成長 → 石油危機 → バブル → 失われた 30 年)を説明できる
- インフレ・デフレの種類と影響(デフレスパイラル・スタグフレーション)、物価指数(CPI・企業物価)を説明できる
- 現代日本の課題(2022〜の物価上昇と実質賃金・人口減少と潜在成長率・格差)を指標で説明できる
入試での位置づけ
「GDP の計算(GDP = 総生産額 − 中間生産物)」「三面等価」「実質成長率の計算」「インフレ・デフレで得をする人・損をする人」「景気循環の周期と要因」が定番。グラフ(経済成長率・物価上昇率の推移)から時期を当てる問題も出ます。
1. 国民所得の指標
まずここだけ
- GDP(国内総生産):一定期間(1 年)に国内で生み出された付加価値の合計。付加価値 = 生産額 − 中間生産物(原材料など)。外国人が国内で生み出した分も含む
農家が小麦を 100 で製粉業者に売り、製粉業者が小麦粉を 150 でパン屋に売り、パン屋がパンを 300 で消費者に売った:GDP = 100 +(150 − 100)+(300 − 150)= 300(最終生産物の価格と一致)。二重計算を避ける
- GNI(国民総所得)(旧 GNP):国民が得た所得 = GDP + 海外からの所得の純受取(海外からの利子・配当・賃金 − 海外への支払い)。日本は海外投資が多いので GNI > GDP
- NI(国民所得) = GNI − 固定資本減耗(減価償却)− 間接税 + 補助金
- 三面等価の原則:国民所得は生産・分配・支出の 3 つの面から見ても等しい
- 生産:産業別(第 1 次 1%・第 2 次 25%・第 3 次 74%)
- 分配:雇用者報酬(約 7 割)・企業所得・財産所得
- 支出:民間消費(GDP の 5〜6 割)+ 民間投資 + 政府支出 +(輸出 − 輸入)= GDE(国内総支出)
- フローとストック:GDP や所得はフロー(一定期間の流れ)、国富(土地・建物・機械・対外純資産などのストック。金融資産は国内どうしで相殺)は一時点の蓄え。日本の国富 約 4,000 兆円、対外純資産は世界最大級
- GDP の限界:家事労働・ボランティアを含まない、環境破壊や余暇を反映しない、格差がわからない → グリーン GDP、HDI(gt-08)、幸福度、ウェルビーイングの指標
2. 経済成長と名目・実質
まずここだけ
- 経済成長率 =(今年の GDP − 前年の GDP)÷ 前年の GDP × 100
- 名目 GDP:その時の価格で計算。実質 GDP:物価変動を除いて基準年の価格で計算 → 本当の成長を見るには実質
- GDP デフレーター = 名目 GDP ÷ 実質 GDP × 100(物価の指標)。実質成長率 ≒ 名目成長率 − 物価上昇率
名目 GDP が 3% 増え、物価が 2% 上がった → 実質成長率 約 1% 名目 550 兆円、デフレーター 110 → 実質 = 550 ÷ 1.10 = 500 兆円
- 日本の GDP:名目 約 600 兆円(2024 年度)、世界 4 位(2023 年にドイツに抜かれる。米・中・独・日・印)。1 人あたり GDP 約 3.4 万ドル(世界 30 位台)。成長率:高度成長 10% → 安定成長 4〜5% → 1990 年代以降 0〜1%
- 経済成長の要因:労働力(人口・就業率)・資本(設備投資)・技術進歩(生産性)。潜在成長率(日本は人口減少で 0.5% 前後)。労働生産性 = GDP ÷ 労働者数(日本は OECD 下位)
3. 景気循環
まずここだけ
- 4 局面:好況(生産・雇用・物価↑)→ 後退(恐慌は急激な後退)→ 不況(生産↓・失業↑・物価↓)→ 回復 → 好況…
- 周期:
名前 周期 要因 キチンの波 約 40 か月(3〜4 年) 在庫投資 ジュグラーの波 約 10 年 設備投資 クズネッツの波 約 20 年 建設投資 コンドラチェフの波 約 50 年 技術革新 - 景気の指標:景気動向指数(内閣府:先行・一致・遅行)、日銀短観(企業の景況感)、失業率、有効求人倍率、鉱工業生産指数
- 日本の景気の歴史(ht-10・11):高度経済成長(1955〜73:神武・岩戸・いざなぎ景気)→ 第 1 次石油危機(1973、1974 年戦後初のマイナス成長)→ 安定成長 → プラザ合意(1985)→ 円高不況 → バブル景気(1986〜91)→ バブル崩壊・平成不況(1991〜、複合不況・デフレ)→ 2002〜08 いざなみ景気(実感なき景気回復)→ リーマン=ショック(2008、−5.7%)→ 東日本大震災(2011)→ アベノミクス(2013〜)→ コロナ禍(2020、−4%)→ 2022〜 物価上昇
- 景気対策:財政政策(kk-06)・金融政策(kk-06)・ポリシー=ミックス
4. 物価 ── インフレとデフレ
まずここだけ
- 物価:多くの商品の価格を平均した水準。消費者物価指数(CPI)(総務省:家計が買う財・サービス。生鮮食品を除くコア CPI)、企業物価指数(日銀:企業間取引)、GDP デフレーター
- インフレーション:物価が継続的に上昇 = 貨幣の価値が下がる
種類 原因 ディマンド・プル・インフレ 需要が供給を上回る(好況・財政出動・通貨の増発) コスト・プッシュ・インフレ 原材料・賃金・輸入価格の上昇(石油危機、2022 年〜の円安・資源高) ハイパーインフレ 通貨の信認崩壊(ドイツ 1923、ジンバブエ) スタグフレーション 不況(stagnation)と物価上昇(inflation)が同時(1970 年代の石油危機) - 影響:預金・年金など固定収入の人は損、借金している人は得(返す価値が下がる)、実質賃金(名目賃金 − 物価上昇)が下がると生活が苦しくなる、資産(土地・株)をもつ人は得 → 格差
- デフレーション:物価が継続的に下落 = 貨幣の価値が上がる。日本は 1990 年代末〜2010 年代
- デフレスパイラル:物価↓ → 企業の売上↓ → 賃金↓・リストラ → 消費↓ → 物価↓… の悪循環。借金の実質負担が増える、投資が先送り
- 対策:金融緩和(2% 目標)・財政出動・賃上げ
- 2022 年以降の日本:ウクライナ侵攻・円安で輸入物価上昇 → CPI 3% 前後(コスト・プッシュ)。実質賃金はマイナスが続いたのち、2024〜25 年の春闘で 5% 超の賃上げ。日銀は 2024 年に利上げへ。「良いインフレ(賃金と物価の好循環)」か「悪いインフレ」かが論点
5. 計算の型
まずここだけ
- GDP = 各段階の付加価値の合計 = 最終生産物の価格の合計
- GNI = GDP + 海外からの純所得。NI = GNI − 固定資本減耗 − 間接税 + 補助金
- 成長率 =(今年 − 前年)÷ 前年 × 100
- 実質 GDP = 名目 GDP ÷(デフレーター ÷ 100)。実質成長率 ≒ 名目成長率 − 物価上昇率
- 実質賃金の変化率 ≒ 名目賃金の上昇率 − 物価上昇率
賃金が 3% 上がり物価が 4% 上がった → 実質賃金 約 −1%
- 1 人あたり GDP = GDP ÷ 人口
- 物価上昇率 =(今年の物価指数 − 前年)÷ 前年 × 100
- 72 の法則:年率 r% で成長すると約 72 ÷ r 年で 2 倍
6. よくある間違い
- GDP を「生産額の合計」とする(付加価値の合計。中間生産物を引く)
- 外国人が日本国内で生んだ所得を GDP に含めない(含む。含めないのは GNI)
- GNI と GDP の関係を逆にする(GNI = GDP + 海外からの純所得)
- 国富にお金(金融資産)を含める(国内の金融資産は債権と債務で相殺。対外純資産は含む)
- 名目成長率だけで景気を判断する(物価を除いた実質で)
- インフレで借金している人が損とする(得。返す価値が下がる)
- デフレで貨幣の価値が下がるとする(上がる)
- スタグフレーションを「好況と物価上昇」とする(不況と物価上昇)
- キチンの波を設備投資とする(在庫投資。設備投資はジュグラー)
- 日本の GDP を世界 2 位・3 位とする(2023 年から 4 位)
7. 自己チェック
- GDP・GNI・NI の定義と関係、三面等価を言えるか
- 付加価値の合計で GDP を計算できるか
- 名目・実質・デフレーター・成長率・実質賃金を計算できるか
- 景気の 4 局面と 4 つの周期(要因つき)を言えるか
- 日本の景気の歴史(1955 → 73 → 85 → 91 → 2008 → 2020)を言えるか
- インフレの種類と影響(誰が得・損)、デフレスパイラル、スタグフレーションを言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(kk-07)
関連する単元
- 前提:kk-05 市場経済、kk-06 財政・金融政策、c-06(中学公民)
- 次に進む:kk-08 労働と社会保障
- ここで使う考え方が出てくる:ht-10 高度経済成長、ht-11 バブル・失われた 30 年、gt-08 HDI、kk-09 国際経済
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 公民編』── 「公共」B (1) 経済的な主体となる私たち
- 内閣府「国民経済計算(GDP 統計)」「景気動向指数」、総務省「消費者物価指数」、厚生労働省「毎月勤労統計(実質賃金)」、日本銀行「短観」
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/social/kk-07/ / 更新 2026-09-13