高1 / 物理基礎 / pb-11
エネルギーの利用(発電・放射線・原子力)
この単元でできるようになること
- エネルギーの種類(力学的・熱・電気・光・化学・核)とエネルギー保存則を説明できる
- 各発電方式(火力・水力・原子力・太陽光・風力・地熱)のエネルギーの変換の流れと長所・短所を言える
- 変換効率 = 得られたエネルギー ÷ 与えたエネルギー を計算できる
- 原子の構造(陽子・中性子・電子、原子番号・質量数、同位体)と放射線の種類(α・β・γ、透過力・電離作用)を区別できる
- の計算と、放射線の単位(Bq・Gy・Sv)の意味がわかる
入試での位置づけ
「エネルギーの利用」は共通テストで知識問題として出やすく、とくに放射線の透過力の順(α < β < γ)、半減期の計算、発電の変換の流れ、変換効率が定番です。計算は簡単ですが、単位(Bq・Sv)や「原子番号 = 陽子数」を覚えていないと落とします。
1. エネルギーの種類と保存
まずここだけ
| エネルギー | 例 |
|---|---|
| 力学的エネルギー | 運動・位置・弾性 |
| 熱エネルギー | 物体の内部エネルギー |
| 電気エネルギー | 電流がする仕事 |
| 光エネルギー | 太陽光・照明 |
| 化学エネルギー | 燃料・食物・電池 |
| 核エネルギー | 原子核の変化(核分裂・核融合) |
エネルギー保存則:エネルギーは形を変えても総量は変わらない。ただし熱は他の形に完全には戻せない(使えるエネルギーは減っていく)ので、省エネルギーが必要。
2. 発電 ── 変換の流れ
ここまでできれば十分
| 発電 | エネルギーの流れ | 特徴 |
|---|---|---|
| 火力 | 化学(燃料)→ 熱(蒸気)→ 運動(タービン)→ 電気 | 安定・出力調整が容易。CO₂ 排出・燃料輸入 |
| 水力 | 位置(ダムの水)→ 運動 → 電気 | CO₂ なし・調整容易。立地が限られる |
| 原子力 | 核(核分裂)→ 熱 → 運動 → 電気 | 少量の燃料で大出力・CO₂ なし。放射性廃棄物・事故のリスク |
| 太陽光 | 光 → 電気(太陽電池・直接変換) | 燃料不要。天候・夜間に左右、変換効率が低め |
| 風力 | 運動(風)→ 電気 | 燃料不要。風まかせ・立地 |
| 地熱 | 熱(地下)→ 運動 → 電気 | 安定。適地が限られる |
火力・原子力・地熱は「熱でタービンを回す」ので流れが同じ。再生可能エネルギー:太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス。
変換効率 = 得られたエネルギー ÷ 与えたエネルギー × 100(%)
燃料の化学エネルギー 1000 J から電気 400 J:効率 40%。残り 600 J は熱として放出
3. 原子と原子核
まずここだけ
- 原子 = 原子核(陽子 + 中性子)+ 電子
- 原子番号 Z = 陽子の数(= 電子の数)、質量数 A = 陽子 + 中性子
- 同位体:陽子の数が同じで中性子の数が違う原子(¹²C と ¹⁴C)。化学的性質はほぼ同じ
- 放射性同位体:不安定で、放射線を出して別の原子核に変わる(壊変)
²³⁵U:陽子 92、中性子 143
4. 放射線
まずここだけ
| 放射線 | 正体 | 電荷 | 透過力 | 電離作用 | 止めるもの |
|---|---|---|---|---|---|
| α 線 | ヘリウム原子核(陽子 2・中性子 2) | + | 小 | 大 | 紙 1 枚 |
| β 線 | 電子 | − | 中 | 中 | 薄いアルミ板 |
| γ 線 | 電磁波(波長の短い光) | なし | 大 | 小 | 厚い鉛・コンクリート |
| 中性子線 | 中性子 | なし | 大 | 水・コンクリート |
透過力:α < β < γ、電離作用:α > β > γ(逆の順)
- 放射能:放射線を出す能力(Bq:1 秒に 1 個の原子核が壊変)
- 吸収線量 Gy(グレイ:物質 1 kg が吸収したエネルギー J)
- 等価線量・実効線量 Sv(シーベルト:人体への影響)。自然放射線による被ばくは日本で年約 2 mSv 程度
利用:医療(X 線・がん治療)、非破壊検査、年代測定(¹⁴C)、品種改良、滅菌
5. 半減期
ここまでできれば十分
放射性原子核の数が半分になるまでの時間。半減期 T が n 回経つと (1/2)ⁿ になる。
半減期 8 日のヨウ素 131 が 32 日後:4 回 → 1/16 残り 1/8 になるまで:3 回 → 24 日 ¹⁴C(半減期約 5730 年):残りが 1/4 なら約 11,460 年前
6. 原子力 ── 核分裂と核融合
- 核分裂:²³⁵U に中性子が当たると 2 つの原子核に分かれ、中性子と大きなエネルギーが出る。出た中性子が次の分裂を起こす(連鎖反応)。原子炉では制御棒で中性子を吸収して反応を調節
- 核融合:軽い原子核(水素)が結びついてヘリウムになる。太陽のエネルギー源
- 質量とエネルギー:E = mc²。核反応で失われた質量がエネルギーになる(少しの質量で膨大なエネルギー)
7. よくある間違い
- 透過力の順と電離作用の順を混同する(透過 α < β < γ、電離はその逆)
- γ 線を粒子だと思う(電磁波)
- 質量数と原子番号を取り違える(原子番号 = 陽子数)
- 半減期 2 回で「1/4」でなく「0」にする
- 効率を「与えた ÷ 得た」にする
- Bq(放射能の強さ)と Sv(人体への影響)を混同する
8. 自己チェック
- 火力・水力・原子力・太陽光のエネルギーの流れを言えるか
- 効率 = 得られた ÷ 与えた と言えるか
- α・β・γ の正体と透過力の順を言えるか
- 半減期 n 回で (1/2)ⁿ と言えるか
- Bq・Gy・Sv の違いを言えるか
- 核分裂の連鎖反応と制御棒の役割を言えるか
9. 小テストへ
→ 小テスト(pb-11)
関連する単元
- 前提:pb-06 エネルギー、pb-07 熱、pb-10 電気
- 次に進む:cb-02 原子の構造、eb-09 自然災害と地球環境
- ここで使う考え方が出てくる:c-08 環境・資源(中学公民)、g-08 資源・エネルギー(中学地理)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』── 「物理基礎」(2) ウ エネルギーとその利用
- 環境省『放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料』── 放射線の種類・単位・自然放射線量(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.pages.dev/daigaku/science/pb-11/ / 更新 2026-09-12